無関心な現場で始める業務改善

第20回 改善を通じた人材育成

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知識と知恵

問題解決において,⁠知恵」を出すことについて考えてみます。

セミナー,研修などで他社の成功事例を聞くだけでなく,書籍やインターネットから業務改善に必要な「情報」⁠知識」は容易に入手できます。

図2をご覧ください。

図2 知恵を出すこと

図2 知恵を出すこと

過去の延長線上で問題解決をはかるのであれば,⁠知識」⁠情報」「スキル」「経験」が加われば何とかなるでしょう。しかし,初めて遭遇する問題の解決には適用できないこともあります。また,同じ問題が何回も発生するようであれば,組織としての学習がなされていません。

これらを解決するためには,⁠知恵」が求められます。「知恵」がないと本質的な問題解決には至りません。知恵は「困ったときに出る」ので,困る場面を仕掛けて,現場で熟考することが必要です。

「知識」「情報」はタダで入手できます。

「スキル」⁠経験」は個人が積み重ねた資産ですが,肝心の「知恵」は企業資産となるべきものです。そのためには「組織学習」も必要ですが,そもそも「知恵」が出ないことには何も始まらないということです。

知恵を出すためには「考える⁠⁠。考えるためには"過度な期待"や"性急な結果"を求めすぎないことが重要です。

業務改善がOJTと人材育成

ここでいったん整理をします。

図3をご覧ください。⁠変革のプロセスマネジメント」と呼んでいます。

図3 変革のプロセスマネジメント

図3 変革のプロセスマネジメント

この中で,(1)競争原理,(3)評価の仕組みの2つに関しては,本連載ではほとんど触れてはいませんが,その他の(2)やらざるを得ない環境構築,(4)問題の顕在化の2つに関しては,これまでに何度も述べた部分です。(5)として「育成(変革がOJT⁠⁠」とあります。

業務改善のような企業変革活動そのものが,人材育成や新しいOJTの場にもなります。その中から,次のリーダーが出てくることもあるでしょうし,組織として成長を遂げていればリーダー不在でも構わないでしょう。あくまでも業務改善という枠組みの中での話で,組織としてのリーダー不在のことではありません。

最初の変化は日常会話に現れる

無関心だった現場メンバーの良い方向への最初の変化は,日常会話に現れますので,注意深く,部門の中の声に耳を傾けてみることをお勧めします。最初はほんのちょっとの変化です。⁠後工程の奴ら」と言っていた人がいるならば,⁠製造部の○さん」など固有名詞で呼ぶようになります。会話の中からは,⁠品質から考えると…」とQCDに関わる言葉の登場回数が増え,一生懸命語る現場の人が現れ始めるなど,挙げればキリがありません。

業務改善が人材育成の良き場として機能するイメージが少し付いたでしょうか?

  • 「困るから考える,考えるから知恵が出る,知恵が出るから問題解決に至る⁠⁠。

このようなロジックです。最初の困るところが「場」であるので,「困るための仕掛けを作る」ところから始めることがポイントとなります。

次回は,コミュニケーションと組織風土についてお話します。

著者プロフィール

世古雅人(せこまさひと)

メーカにて開発エンジニアと半導体基礎研究(国の研究機関出向)の計13年を設計と研究開発の現場で過ごす。企業風土改革,組織・業務コンサルティング会社や上場企業の経営企画責任者などを経て,技術の現場あがりの経験や知識を活かした業務改善やコンサルティングなどに従事。

2009年に株式会社カレンコンサルティングを設立,同社代表取締役。現場と経営を巻き込んだ「プロセス共有型」のコンサルティングスタイルを推し進めている。

株式会社カレンコンサルティング

URL:http://www.carren.co.jp/