無関心な現場で始める業務改善

第22回 おかしいことはおかしい…インフォーマルな場づくり

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停滞して・シラケていた業務改善の活動。人事異動などでマネジメント層の人が変わった途端に,一気に進むことは業務改善に限らず珍しいことではありません。これを傍目で見ている現場からは,⁠結局は人だよな~」という声も聞こえてきます。

前回⁠業務改善と組織風土」の話の中で,業務改善には特にコミュニケーションが大事で,組織風土の与える影響も大きいと伝えました。今回は,コミュニケーションをつくる場についてお話をします。

“動かない”“動けない”の違い

“理由もなく反発する現場⁠⁠他人事で無関心な部門責任者⁠は存在するものです。動かないこの人たちの業務改善への巻き込み方はこれまでに何回かお話をしてきた通りです。しかし,長年にわたって利害関係の衝突が起きていた部門同士では,すんなりとはいきません。無理強いをしても反発を招くだけ,こちらが下手に出て「業務改善をお願いします」と言うものでもないでしょう。あり得ないことです。

さて,ここで⁠動かない⁠という言葉を使っていますが,皆さんも日常会話の中で,⁠あいつ,なかなか動かないし……」と何気なく言っていませんか?これは,業務改善が進んでくると,何かと改善現場でも耳に入ってくる言葉です。

ここで「ちょっと待った!」をするものが,今回お話する⁠場⁠です。

実は,「動きたくても動けない」メンバーがいます。これを「動かない奴」とひとくくりにしないでください。動けない理由があるので,動けるように重石をどかし,ちゃんと理由を聞く⁠場”,人として向き合う⁠場⁠がないと,せっかくの良い芽を持った人材を潰しかねません。

あの場では言えない……

業務改善の現状調査において,業務プロセスに支障をきたす⁠意味のない形骸化したルール⁠⁠実態とかけ離れている規程⁠などが見つかることは少なくありません。

また,業務改善の改善案を検討するミーティングや,社内の様々な会議の場面において,誰も口には出さないものの,⁠おかしい」⁠それじゃ,うまくいくはずがない」と心の中で思いながら,はっきりとその場では発言しない。なんとなく,お互いを牽制し合い,発言の様子を伺っている。はっきりと相手の揚げ足を取るのではなく傍観している。そんなことがあるはずです。

この状態で,業務改善が進み,その結果としてうまく進んで初めて,⁠自分もうまくいくと思っていたよ」と言い出す人。逆に,うまくいかないと,⁠改善案を聞いたとき,それじゃうまくいかないと思っていた。やっぱ,ダメだったか……」などと,後になってから言い出す人。皆さんも心当たりはありませんか?

改善に非協力的だった人が「うまくいくと思っていた」と言うのを聞くと,改善に携わって結果を出してきたメンバーは,⁠何を今さら調子のいいことを」と面白くないでしょう。⁠やっぱ,ダメだったか……」と言うなら,なぜ最初に言ってくれないのでしょう?

「後になってから言うな!」と腹立たしい気持ちになるのはわかりますが,実態は,⁠言えない」のです。"見える化"は"言える化"がないと困難であると何度かお話をしていますが,言えない会議の雰囲気に飲み込まれてしまうわけです。したがって,"言える場"が必要となります。

おかしいことを,「おかしい」と言えないことが,おかしい!

図1をご覧ください。

図1 おかしいことはおかしい

図1 おかしいことはおかしい

もっと仕事をやりやすくする,ムダをなくして効率を上げるなどの目的で行われる業務改善ですが,業務改善に着手する前にすでに,⁠これっておかしいよね?」とわかっていることもあります。いわば,「おかしいと分かっていてもそうするしかない」という状態です。組織としては異常で,極めて不健全です。

おかしいとわかっていても,そうするしかないとしたら,「おかしいことをおかしいと言えない」ことに原因があります。⁠おかしいことはおかしい」⁠このように組織の中で発言することには勇気が必要です。⁠言うと自分が損をする」からと言えないこともあります。

冒頭の「動けない」ことと,⁠言えない」ことのいずれも,⁠場⁠はあっても関係性(発言しても安全だ,相手が信頼できる等)ができていないから,こうなるのです。

『おかしいことを「おかしい」と言えないことはおかしい』ですよね。これが組織風土の影響です。

まずやってみる

さて,問題は現場に近いほど,よく(はっきりと)見えます。先の「それじゃ,うまくいくはずないのに」と,もっともわかっている人も現場です。しかし,問題がもっとも見えている人でないと,ベストな解決策が得られないかというと,必ずしもそうではありません。ベテランの蓄積された知恵を借りる,まったく違う視点の人からアイデアをもらうなど,解決に向けた知恵は多方面から集めて,実行者の責任で決めることが重要です。

図2をご覧ください。

図2 場の形成

図2 場の形成

「思い・気づき」があり,すぐに「行動」が生まれるものではありません。⁠走りながら考える」でもありません。⁠自分で考えて行動」をすることです。それが「良い結果」につながることもあれば,思うようにいかないこともあるでしょう。この繰り返しが組織学習として蓄積されます。

おかしいことを「おかしい」と言える関係性を築くために,⁠共有した目標をメンバーで達成していく過程を経て,きちんと対話ができる関係性を醸成する」ことから開始します。

著者プロフィール

世古雅人(せこまさひと)

メーカにて開発エンジニアと半導体基礎研究(国の研究機関出向)の計13年を設計と研究開発の現場で過ごす。企業風土改革,組織・業務コンサルティング会社や上場企業の経営企画責任者などを経て,技術の現場あがりの経験や知識を活かした業務改善やコンサルティングなどに従事。

2009年に株式会社カレンコンサルティングを設立,同社代表取締役。現場と経営を巻き込んだ「プロセス共有型」のコンサルティングスタイルを推し進めている。

株式会社カレンコンサルティング

URL:http://www.carren.co.jp/

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