無関心な現場で始める業務改善【シーズン2】

第1回 誰も出る杭になりたがらない

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我慢の限界「誰も本気じゃない!」

  • 佐藤さん:「何も解決になっていない!責任あるポジションの方々がこれだけ集まって,中身のない議論に時間を費やしている。責任転嫁ばかりで,誰も本気じゃない!高い給料だけもらって,あなた方,恥ずかしくないのですか?」

  • 営業部部長:「なんだい,やぶからぼうに。聞き捨てならないぞ!」

  • 製造部部長:「まったく,いつも見ない顔だと思ったら,誰だっけ?」

  • 杉本開発課長:「すみません,うちの課の佐藤です」⁠佐藤君はオブザーブの立場なんだからわきまえてくれないと僕が困るよ」

  • 佐藤さん:「馬鹿げている!職場に戻ります」

と,佐藤さんは広げた資料をかき集めて,会議の途中で離席します。

営業部長は,⁠なんだあいつは……」と文句を言いながら,先ほどまでは意見がまとまることすらなかった他の部長同士が,今度は声をそろえて「そうだそうだ」と言い出す始末です。

じっと黙っていた村瀬開発部長は,10年前に新卒でまだ新任課長であった自分の課に配属をされた佐藤さんのことを思い出していました。この10年で部下の佐藤さんが立派なエンジニアに育ったと感じながら,普段はおとなしい佐藤さんが,ここまで怒る理由もわかっていました。⁠あいつ(=佐藤さん)は誰よりも自社の製品に誇りを持っていた,今はたして何人の社員が堂々と自社の製品をお客様にお勧めすることができるだろうか?自分の会社を堂々と語れるだろうか……⁠⁠。

損か得か?

村瀬には自分自身が先ほどの品質対策会議で,好き勝手を言う部長たちをまとめることができなかった自戒もあります。だけど,あいつ(佐藤さん)は,立場を超えて,損得すら考えずに正しいことを言った。我々が手本でなければならないのに……。

まだ,ざわざわしている部長たちに,おもむろに村瀬開発部長が口を開きました。

  • 村瀬開発部長:「佐藤の言い方や態度は問題あるものの,正論を言っている。今,この会議の場で何をしなければいけないのか?皆さんもわかっているはずだ。我々はそれができていたのか?」「問題を抱えていながら,問題と向き合おうとしない我々自身が問題だ。正論を言ってつぶされるようならば,それはもはや組織ではない」

会社という組織に長年浸かっていると,⁠これを言ったら自分が損をする」⁠言ったらやらされるから,言わないほうがいいな」など,無意識のうちに学習しています。判断基準は「自分にとって損か得か」です。損であるとわかれば,手を貸さないで"傍観者"を貫き通したほうが楽だからです。そして,口ばかり出して自らの手足はこれっぽっちも動かさない"評論家"も出てきます。

硬直した組織では,出る杭は打たれます。打たれたくない社員は目立った行動をとることなく,そつなく周囲と気持ちの悪い調和を取りながらも,積極的な問題解決には関わらない姿勢を取ります。時間ばかりかかり,何も進まない状態に陥り,現場の無関心度は加速度的に進みます。

出る杭になる

さて,大規模な人員削減が行われてから1ヵ月です。社内は覇気がなく,空いた机が目立ちます。つい数か月前まで,新人のころから可愛がってくれた父親のようだった存在の製造部のAさん,一緒に会社に泊まり込んで試験成績書用のデータ測定を行った開発部のB先輩も会社を去りました。

ちょうど半年前に,300名もの社員の早期退職を盛り込んだ経営施策として打ち出された「テクノロジーズリバイバルプラン」をじっと見つめながら,⁠何がリバイバルだ,ふざけるな!」と,佐藤さんは会社に裏切られた気持ちでいっぱいです。

しかしそれでも,好きで入ったこの会社に残ることを決め,自ら出る杭になり,会社を変えていくことを心に誓います。

半年前の「リバイバルプラン」をきっかけに始まった大リストラの嵐の中で,腐る職場・荒れる現場の中で,佐藤さんはたった一人で立ち上がります。しかし,相手は"傍観者"や"評論家"ばかりです。そして,優秀な社員が去った現場は,ますます無関心が蔓延しています。はたして,佐藤さんはどのように活路を見出していくでしょうか?次回をお楽しみに!

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著者プロフィール

世古雅人(せこまさひと)

メーカにて開発エンジニアと半導体基礎研究(国の研究機関出向)の計13年を設計と研究開発の現場で過ごす。企業風土改革,組織・業務コンサルティング会社や上場企業の経営企画責任者などを経て,技術の現場あがりの経験や知識を活かした業務改善やコンサルティングなどに従事。

2009年に株式会社カレンコンサルティングを設立,同社代表取締役。現場と経営を巻き込んだ「プロセス共有型」のコンサルティングスタイルを推し進めている。

株式会社カレンコンサルティング

URL:http://www.carren.co.jp/