無関心な現場で始める業務改善【シーズン2】

第5回 大好きな会社にしたい(組織のソフト部分へ目を向ける)

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中田社長に直訴した佐藤さんは,次の経営会議の場において,経営施策の中に「現場の改善活動」を盛り込むことを約束してくれましたが,同時に佐藤さんに対して,現場の実態を把握してくれないかと依頼されます。しかし,佐藤さんの仕事は開発部で設計業務が本業です。"事なかれ主義者"の杉本課長に,⁠会社を変えるために,コンサルティング会社を訪問します」と言ったところで却下されることは目に見えています。佐藤さんはしかたなく,有休を取得し,コラムを書いているコンサルティング会社C社カレンコンサルティングに連絡を入れて訪問しました。

《注》本記事は,第1回「プロローグ」で示したように,筆者自身の原体験と当社の事例をベースにして,"脚色をした物語"と"方法論・手法"を織り交ぜながらお伝えします。したがって,GHテクノロジーズの会話を含む実場面と,筆者が解説する内容が交互に登場します。

いざコンサルティング会社へ

訪問の前日,佐藤さんは「あれも聞きたい,これも聞きたい」と自分なりに今の社内の現状と問題意識を整理していました。こぢんまりとしたC社のオフィスにおいて,出迎えてくれたのは,40代のS氏と若いW女史の2人でした。一通り,佐藤さんの話を伺ってから,まず,S氏が口を開きました。

  • S氏:「この絵図1参照)を見てもらえますか? 当社がセミナーや講演の際に,参加された方に聞くのですが,佐藤さんはどのように感じますか?」

  • 図1 組織に見られる現象

    図1 組織に見られる現象

  • 佐藤さん:「たくさんチェックが付きそうで,どれも当社GHテクノロジーズを言われているようです。業務がブラックボックスかどうかはまだわかりませんが,現場がリストラに伴い,経営層への信頼感を失っていることが加わるかと……」

  • S氏:「社長とお話をされたとおっしゃっていましたよね?」

  • 佐藤さん:「はい,経営層だけでなく,我々社員にも問題があったと伝えました」

  • S氏:「なるほど……。それで,佐藤さんは自社をどうしていきたいと考えていますか?」

  • 佐藤さん:「もちろん良くしていきたいです。会社を変えていきたいです。なかなか現場の協力が得られず,部課長クラスも腰が重い人もいますが,やらなければならないと思っています」

ここで初めてW女史が口を開きました。

  • W女史:「今日は会社を休んで来ていませんか?」

  • 佐藤さん:「え? どうして,わかるんですか?」⁠S氏とW女史は目を見合わせながら)⁠

  • S氏・W女史:「佐藤さんの目を見て,話しっぷりをみればわかりますよ!!」

変革推進者の2タイプ:似非型に騙されるな

ここで,変革推進者には2タイプいることをお話しします。

Type 1:本気モード型

コンサルティング会社C社を訪れる人の何割かは,会社を休んで来る人です。相談者の役職,年齢的には30代中頃から40代の主任相当から課長クラスが目立ちます。経験上,このようなタイプはかなりホンモノで,"明確な意思"と"改革へかける強い思い"を持っています。「変革のエネルギーが強い人」とも言うことができます。

ただ,残念なのは,周囲に抵抗勢力が多いことと,役職がそれほど高くないので,身動きしにくいことです。ちなみに,本主人公である佐藤さんのようなタイプは一見すると,社内では特異な行動をとると思われるので,社内的・人事的な評価が必ずしも高いわけではありません。全体的には少しせっかちで短気なところ,人と衝突しやすい側面を持ち合わせている人が多いようです。

このタイプの人を"本気モード型"と呼んでいます。

Type 2:似非型

一方で,"変革推進部"や"業務刷新部"などと,いかにも変革の率先・専任部門のような部門に属する相談者は,もう少し上の役職で最低でも課長クラスで,部長以上が多くなる傾向があります。経験上,このような部門名称がついていて,⁠仕事として」相談に来られる方の7割以上は,⁠義務感」として相談しに来られます。わかりやすく言えば,⁠本当はあまり乗り気じゃないけど,こういう部門の責任者になっちゃったから……」というものです。

別の言い方をすれば,⁠責任者に任命されなかったら,変革や改善には興味がなかった」人たちです。仕事だから当然,有休などとりません。また,彼らからは問題意識が出てくる,自分たちでこうしたいというものが出てくることは少なく,⁠答えや手法を教えてくれ!」と型から入る傾向が強く現れます。

このタイプの人を"似非型"と呼んでいます。

もちろん,部門で変革推進者のタイプを一概に二分することはできません。専任部門の中で,"本気モード型"の人もいます。"似非型タイプ"が最初は化けの皮を被っていて"本気モード型"のように振る舞う場合もあるので,注意が必要です。

最初は"似非型"の人であっても,徐々に周囲の影響を受けて,"本気モード型"に変化をする人もたまにいます。こういう変化は大歓迎です。

我流の変革の限界

変革推進者のタイプを2つ挙げましたが,専任部門があり,かつ,"似非型"の人が推進者の場合は,⁠変革は会社としては認められた仕事であり,かつ認められた部門,自分は選ばれた推進者」でもあるので,変革のスタートは切りやすくなります。

しかし,うまく進むかどうかは別問題です。⁠義務感」でやっているタイプの人の7割は明らかに変革には不向きで人選ミスです。したがって,サッサと他の人に代わってもらったほうがよいです。

一方で,専任部門の残りの3割の"本気モード"の人は,義務感ではなく真剣に変革を考えている人なのですが,「まずは自分たちでできるところまでやろう!」と,先述したように,答えや手法を知りたがり,いろいろなセミナーや勉強会にも出かけることに熱心です。そうこう自分が勉強している間に時間はどんどん過ぎてしまう。頭でっかちになってしまい,自社で変革を実行しようとすると,現場の猛反発を食らい,⁠こんなはずではなかった」と頓挫する。

結局,自分たちだけでできるところまで,さほど前進することなく止まってしまうことになります。もちろん,うまくいくこともありますが,結果的に「我流」で行うと,変革の時間を長く要したり,余計な出費もかさむことになります。

変革推進者と現場,経営との利害関係も足かせとなるので,⁠我流の限界」が実際には多く存在することを,頭の隅に入れておきましょう。理想は「自分たちの会社は自分たちで良くしていくことですから」⁠

著者プロフィール

世古雅人(せこまさひと)

メーカにて開発エンジニアと半導体基礎研究(国の研究機関出向)の計13年を設計と研究開発の現場で過ごす。企業風土改革,組織・業務コンサルティング会社や上場企業の経営企画責任者などを経て,技術の現場あがりの経験や知識を活かした業務改善やコンサルティングなどに従事。

2009年に株式会社カレンコンサルティングを設立,同社代表取締役。現場と経営を巻き込んだ「プロセス共有型」のコンサルティングスタイルを推し進めている。

株式会社カレンコンサルティング

URL:http://www.carren.co.jp/

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