無関心な現場で始める業務改善【シーズン2】

第9回 プロセス共有で業務改善と風土改革を併走させる

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ハード(業務改善)とソフト(組織風土改革)を同時に進める

  • 佐藤さん:「それで,次はどうすればいいんでしょう?何から手を着ければいいんだか…」

  • S氏:「まず,業務改善全体の大きな流れを共有しましょう。この図を見てください図2参照⁠⁠」

図2 ⁠ハード」「ソフト」を同時に進める業務改善の流れ

図2 「ハード」と「ソフト」を同時に進める業務改善の流れ

  • 佐藤さん:「ずいぶんとシンプルですね。ガントチャートみたいなものが出てくるのかと思いました」

  • W女史:「それはもう少し先になりますよ。そのときは,皆さんにはたくさん脳に汗をかいてもらいますからね♪♪」

  • 加藤さん:「そんな可愛い顔をして,脅かさないでくださいよ~」

  • S氏:「まぁ,それは先のお楽しみということにしましょう。この図ですが,大きく3つのフェーズに分かれます。最初が"現状を知る",2番目が"考える",最後の3番目が"変える"です」

  • 広瀬さん:「"考える"ところの"業務分析"がずいぶんと長いみたい」

  • 赤西さん:「うん,俺もそう思った!」

  • S氏:「業務改善ではスピードが欠かせませんが,この2番目で手を抜くと後でひどい目に遭います。ここは時間をかけるべきところです」

  • 佐藤さん:「具体的にはどういうことですか?」

  • W女史:「さっき,脳に汗をかいてもらう…と言いましたよね。問題を掘り下げる,深い原因を見出すってことが大事なのですが,慣れも必要とします。根っこの問題を解決しないと,本質的な改善にはなりません」

  • S氏:「たとえば,今回の一番の問題は品質ですよね。不良発生率が極めて高い。では,改善として"品質を上げる"じゃ,言葉の裏返しです。具体的に何をすればいいのかさっぱりわかりません」

  • W女史:「どの工程で不良が発生しているのか,どのくらいの頻度で起こるのか,なぜ発生するのか,設計時に選定した部品のMTBF(Mean Time Between Failure:平均故障間隔)が低いのか等,不良発生の原因を特定するには,様々な見地から分析が必要です」

  • S氏:「なので,最初の"現状を知る"のところには,"現状分析"ではなく"現状調査"と書いています。調べていないものは分析できないはずですからね」

プロセスを共有し,一人称で語る

  • 村瀬開発部長:「"スタンス"のところに,すべて,"自分たち"という言葉が入っていますね」

  • S氏:「そうです。これも我々のやり方の特徴です。当社では"プロセス共有型"と呼んでいます。たとえば,僕らのようなコンサルティング会社が現状調査を行い,GHテクノロジーズの問題はこうですと示します。原因もわかり,改善策を反映した業務改善計画はこのようにできています。さぁ,皆さん,やってください!と言うことは簡単です。しかし,これでは第6回の図1「ハード改革(やらせる改革⁠⁠」の構図と同じです。コンサルティング会社も無責任ですし,やらされるほうは失敗した場合,コンサルティング会社に責任転嫁すればよいからです。自分たちは『言われたことをやっただけ』という受け身・指示待ちで,良い結果が得られるはずはありません。したがって,ポイントは"自ら"という一人称で語ることです」

  • 村瀬開発部長:「自分たちで作る,考える,行動する」ということで,無関心から興味を持たせ始め,最後は自分で決めて,実行をする。こういうことですよね?」

  • W女史:「そのとおりです。業務改善において,コンサルティング会社がでしゃばりすぎると,現場の主体性はどんどんなくなっていきますからね。自分たちで考えて行動をするという経験を積まないと,"自分たちで(会社,仕事等)を良くしよう"という動きはできなくなります

一人称で語れと言っておきながら,職場内でコミュニケーションがない,話ができない,意見が言えないという部門があります。そこで必要なことが図の下で書かれている「組織風土改革」なのです。「言える化」という職場環境構築と,互いに信頼できる人間関係が醸成できていないと,一人称でモノを言うことができなくなります。

業務改善と組織風土改革を併走させることで,⁠プロセスを共有する場」「一人称で語れる場」を同時に仕掛けていくことです。

業務改善のステップ

さて,ハードのほうの業務改善のステップを先に見ておきましょう。図3をご覧ください。

図3 業務改善の各ステップ(⁠⁠ハード」編)

図3 業務改善の各ステップ(「ハード」編)

この図は後ほど再登場しますので,ここでは細かく説明しません。意外と道のりは長いなぁと思われるかもしれませんね。

さぁ,佐藤さんを中心に少しずつコアメンバーの結束力も高まり,何となく業務改善の流れと進め方がイメージできるようになりました。

いっぽうで,佐藤さんの直属の上司である杉本課長は,本改善にはいっさい関わっていません。元々,"事なかれ主義者"であり,"長いものには巻かれる"タイプです。佐藤さんには本業の設計業務で時間を割いてほしいのに,佐藤さんの仕事は業務改善のように思えてなりません。コアメンバーのミーティングでも蚊帳の外なので,あまり業務改善のことをよく思ってはいないようです。

さて,次回はコアメンバーが他部門を巻き込むために現場に出向きます。そこで思いもよらず現場の反発を食らいます。その原因が杉本課長であり,わざと佐藤さんたちを困らせようと思って仕組んだことには,まだ誰も気づいていません。さぁ,どうなっていくでしょうか? 次回をお楽しみに。

著者プロフィール

世古雅人(せこまさひと)

メーカにて開発エンジニアと半導体基礎研究(国の研究機関出向)の計13年を設計と研究開発の現場で過ごす。企業風土改革,組織・業務コンサルティング会社や上場企業の経営企画責任者などを経て,技術の現場あがりの経験や知識を活かした業務改善やコンサルティングなどに従事。

2009年に株式会社カレンコンサルティングを設立,同社代表取締役。現場と経営を巻き込んだ「プロセス共有型」のコンサルティングスタイルを推し進めている。

株式会社カレンコンサルティング

URL:http://www.carren.co.jp/