無関心な現場で始める業務改善【シーズン2】

第11回 組織と仕事の責任範囲

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「確かにそれなら,製造部門に限らず,現場の参画を促す理由になりますね」……と,前回第10回)⁠佐藤さんはS氏の話に解決の糸口を見出したように感じたのですが,これまでの出来事を振り返ると,先行きは暗く思えてなりません。開発部の佐藤さんは悩んでいます。

風土改革を必要とする業務改善…これまでのあらすじをまじえて

第6回までのあらすじを第7回の冒頭に示していますので,ご覧ください。

佐藤さんの開発部と同期の加藤さんが属する知的財産部で,業務改善のキックオフは行ったものの,自部門の開発のメンバーからでさえ,⁠開発が遅れてもいいのか?」⁠ ⁠自分たちは関係ない」という意見が噴出しながらも,業務改善のビジョンを作り上げてきました第8回)⁠コンサルティング会社からのアドバイスももらいながら,業務改善がきちんとできる組織にするためには,⁠自立的・主体的に動ける社員を増やすこと」⁠ ⁠自分の頭で考えて問題解決が行える組織にしないといけない」などなど…組織風土改革も同時に進めていかないとこの会社は良くならないと佐藤さんは気づき始めています第9回)⁠単純な全社を挙げての⁠業務改善活動⁠ではなく,当社(GHテクノロジーズ)の場合は,経営への信頼感を喪失し,言われたことだけを行い自分さえよければいいと思う社員,無関心で他人事ばかりの社員が多くなっている現実にきちんと目を向け,現場に出向き関連部門への声掛けを始めたところです第10回)⁠

さて,先行き不安を隠せない佐藤さんですが,同じ開発部の部下である赤西さん・村瀬部長の3人と,知的財産部の加藤さん(佐藤さんの同期)⁠紅一点の広瀬さん(赤西さんの同期)の2人のコアメンバー計5人がコンサルティング会社のS氏,W女史を交え,何やら打合せをしています。もちろん,この場に改善に否定的で長いものに巻かれるタイプの杉本開発課長の姿はありません。知的財産部の永井部長は改善活動に理解を示していますが,今日は都合が悪いようで不在です。人物相関図については,第1回の図1を参照ください。

コアメンバーミーティング

  • 佐藤さん:「先日,業務プロセスを一通り,洗い出すということを業務改善の最初のステップとして…と言われましたが,僕にはどうしても現場が協力してくれるようには思えないんです」

  • 赤西さん:「製造部長が曲者ですしね…」

  • 広瀬さん:「また,そんなこと言う~。そんなこと言っていたら,何も始まらないじゃないの。男でしょ!もっとシャキッとしなきゃ結婚できないわよ!」

  • 赤西さん:「美香に言われたくないけどね(-_-メ)」

  • 広瀬さん:「何ですって?(`´)」

  • 村瀬部長:「また,お前らは仲がいいんだか悪いんだか。話を脱線させるな(笑)!」

  • 加藤さん:「でさぁ,佐藤としてはどうしたいの?」

  • 佐藤さん:「それは,昔のように活き活きとした職場で,部門の壁もなく,当社と当社の製品に誇りを持てるようにしたいし,今の現場の連中のだらけた様子には我慢ならない」

  • 加藤さん:「その気持ちはみんな一緒だろ,だから,こうして集まっているんだから」

  • W女史:「みんながそういう気持ちをまずは持っているということが大事ですよ♪」

  • S氏:「前回,僕らからの提案として,自分たちの開発部門から製品出荷までの業務プロセスを一通り,洗い出してみると話しましたが,まずは,これから始めませんか?」

  • W女史:「洗い出した業務プロセスを業務フローにして,それを他の部門に見てもらえれば,部門間の関係性,業務も相互影響度,無駄やトラブルの発生箇所などを見れば,否応なく自分たちも関係しているんだってわかってもらえますよ」

  • 佐藤さん:「うーん…理屈上はわかるのですが」

  • 加藤さん:「社長に直訴するくらいのお前が,何,弱気なこと言ってるんだよ。まずはやってみよう!」

  • S氏:「では,最初に組織図,業務分掌,組織規程,内部統制やISO9001の業務フロー,人事評価制度の基準書や目標設定それと,これまでに業務の棚卸をしたことがあれば,棚卸表などを見せてください」

  • 加藤さん:「え…!? そんなものが関係あるんですか?」

  • S氏・W女史:「もちろん!」

組織と業務範囲

業務プロセスは仕事の流れであり,仕事は各部門に割り当てられています。企業組織であれば,ごく普通の姿です。そして,社員一人ひとりは企業に属しながら,所属する部門の中で,部門が行うべき業務の「ある部分」を受け持っているに過ぎません。

通常は組織の持つ機能と,業務プロセスは同じです。ピンとこないかもしれないので,別の言い方をすれば,⁠営業部門に開発プロセスはない」ということです。開発プロセスであれば,開発プロセスは開発部門にあるわけです。

そんなの当たり前の話でしょう!と思う人もいるでしょうが,読者の皆さんの周りで,⁠製品企画はマーケティング部があるにもかかわらず,開発部が製品企画も行っている。それもAさんだけ」とか,⁠開発部が試作機を作っている,製作部じゃないの?」とか,組織名称と実際に行っている仕事に疑問符がついた経験はありませんか?

先の資料をもとに,GHテクノロジーズの業務プロセスと,各部門の業務範囲を描いてみると図1のようになっていることがわかりました。

図1 GHテクノロジーズの⁠量産までのプロセス⁠⁠組織(各部門)の業務範囲”

図1 GHテクノロジーズの“量産までのプロセス”と“組織(各部門)の業務範囲”

著者プロフィール

世古雅人(せこまさひと)

メーカにて開発エンジニアと半導体基礎研究(国の研究機関出向)の計13年を設計と研究開発の現場で過ごす。企業風土改革,組織・業務コンサルティング会社や上場企業の経営企画責任者などを経て,技術の現場あがりの経験や知識を活かした業務改善やコンサルティングなどに従事。

2009年に株式会社カレンコンサルティングを設立,同社代表取締役。現場と経営を巻き込んだ「プロセス共有型」のコンサルティングスタイルを推し進めている。

株式会社カレンコンサルティング

URL:http://www.carren.co.jp/

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