決済会議

第26回マーケティング施策の根拠はPOSデータ

こんにちは、スマレジの山本です。

クラスメソッド株式会社から、POSデータなどを分析する基盤構築サービス「カスタマーストーリー」が発表されていましたので、代表取締役社長の横田聡さんにお話を伺いました。

クラスメソッド株式会社代表取締役社長の横田聡さん
クラスメソッド株式会社代表取締役社長の横田聡さん

山本:最初にクラスメソッドさんについて教えてもらえますか?

横田:創業時から企業向けの技術支援を行っています。今年11期目に入りました。クライアントは、比較的大きな企業が多く、パッケージソフトウェアでは課題を解決できないお客様から依頼されて、業務システムの開発をしてきました。最近は、開発よりもAWSを使ったITインフラの構築や運用の仕事が増えています。ある程度型にはめて「安く早く提供しよう」という流れにシフトしています。

山本:クラスメソッドさんのWebサイトにてデータの分析基盤サービスというものを見つけました。それについて教えてもらえますか?

横田:ある顧客に導入いただいたのがきっかけでした。全国に数千店舗あり、年間のべ数億人が来店されるような規模で、数年分のPOSデータが数十億件ありました。そして日々数百万件単位でデータが増えていて、それらをマーケティング施策に活かしたいとご相談いただきました。

当社はその依頼を受けて、全国の店舗から集まってきたPOSデータをクラウドにアップし、データウェアハウスのRedshift(レッドシフト)に格納、そしてTableau(タブロー)という、BIツールでデータを分析するためのソフトウェアで見られるようにしました。この案件がきっかけとなって「カスタマーストーリー」というサービスが生まれました。当社がゼロから独自に作ったソフトウェアというよりは、いろいろサービスやソフトウェアを組み合わせて、安く早くご提供しましょうというものになっています。

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具体的には、バラバラに管理されていたさまざまなデータを集めて、見やすく表示します。今まで、売上の分析やマーケティング施策の結果確認って、エクセルでデータを加工して、月次レポートを作っていたと思うのですが、データ収集・保管・加工・分析・見える化といったワークフローをすべて自動化します。

これによって、たとえばECサイトの販売データを分析するとして、⁠関東の顧客に対してトラックでテーブルを配送した場合、利益率が悪い」とか「顧客毎に配送料金と利益の分布を散布図で示して異常値を見つける」などができるようになります。⁠利益率が低い商品をどの程度販売したのか」⁠リピーターや休眠顧客は誰か」というような分析ができる仕掛けになっています。

たとえば、関西地域にテレビCMを放送したとき、該当エリアに住んでいるユーザが、CMで取り上げた商品を検索したとします。そうするとそのタイミングで5%オフのクーポンを発行すると「今まで3ヵ月以上購入されなかったけど、テレビCMをキッカケで、今月1万円分の生活雑貨を購入」というような実績が残ります。

そういった実績をどんどん溜めていくと、テレビCMとチラシとクーポンを比較して、どんな施策を、どんな地域で、どのようなタイミングで、どのように実施すると効果が最大化するのか、仮説と検証を繰り返しながら施策を考えることができます。

いまご紹介したようなことを実現するためのIT基盤は今までは非常に高くて、だいたい1箱1億円ぐらいが相場でした(汗⁠⁠。それがRedshiftやTableauを導入することで、素早く安く実現し、施策の効果を検証できるようになっています。

山本:では、お客さんが用意するのはデータだけ?

横田:はい、ざっくり言うとデータだけで大丈夫です。私たちは社内のシステムには一切手をつけません。そうすることで、要件詰めや社内調整とかを全部すっ飛ばして施策を実施することができて、大体1、2ヵ月でリリース可能です。

山本:導入によって得られる効果は何でしょう?

横田:具体的な効果は、マーケティング施策次第なので何ともいえませんが、効果があるかどうか分からない施策の「数」を増やすことができます。すべてのデータを収集するので、後からさまざまな軸で振り返って検証することができます。

山本:ところで、統計データの信ぴょう性が出てくるのはどの辺からですか?

横田:私たちはサンプリングしたデータではなく、すべてのデータを活用します。仮説検証するためにさまざまな切り口で細かくセグメントを切って注意深く観察できるようにします。部署や担当者によって見たいデータの軸や粒度は異なりますから。

山本:それはおもしろいですね。お客さんごとにカスタマイズするイメージでしょうか。お客さんの属性にあわせて個別にサービスの提供の仕方を変えることもできますね。

横田:インフラはできるだけカスタマイズしないようにしています。Tableauを使うと事前の調整なく簡単にさまざまな軸でデータを見ることができますので、顧客に使い方を覚えてもらっています。

1つの軸だけ見て「土曜日は成績が良い。だから同じ日にもっと集客しよう」とは言い切れません。もしかしたら何かしら施策を打つと、売上が落ちるかもしれません。混んでしまって優良顧客が今後離脱してしまうかもしれません。とにかく仮説を立てて実験の繰り返しをします。⁠ここに課題があって改善すればもっと売れるかもしれないから、施策を変えてみよう」っていう、細かいチューニングをするのがすごく重要だと思います。

山本:それはすごく奥深いというか……

横田:従来の業務改善やマーケ施策が「勘と経験」だとすれば、⁠勘と経験」「データ」を加えています。

当社の顧客が行っているのは「勘と経験」という現場経験による身をもって経験したノウハウを踏まえつつ、事実の積み上げである「データ」をプラスすることで裏付けをし、いままで見えなかった、見落としていた情報を見つけ出して、新たな施策に繋げています。

山本:では最後に決済会議の読者さんにメッセージお願いします!

横田:当社の顧客は大企業さんが多いですが、企業規模に関係なくさまざまな「データ」を活用できる環境が整ってきていると思っています。⁠新規に来店してほしい」⁠たくさん買ってほしい」⁠繰り返し買ってほしい」といった思いは、個人商店であっても同じはずです。

たくさん実験をして、うまくいく実験結果をたくさん作っていく。それを社内や店舗で展開して、うまくいった施策を蓄積して共有していくことが、大企業も中小企業も変わらない施策なんじゃないかなと思います。その際の道具として私たちがご提供している「カスタマーストーリー」がお役に立てればうれしいです。

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いかがでしたでしょうか? いろいろとヒントになったことがあったのでは?

ではまた次回。

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