元オリコン編集長☆イノマーの『叫訓』

第5回“メリハリ”なければ続かない

プランニングの大切さについて

前回『叫訓4』の最後、次回は面接について書く、と宣言してしまったんですが、それはまた別の機会にしたいと思います。すいませんね。その辺の話はまたちゃんと書きますんで。

いつってか? じゃあ、来週に(笑⁠⁠。まー、今回はまた別の話を……。

叫訓5のテーマはずばり⁠計画性⁠⁠。

編集部で働くようになっていちばん驚いたことは、スケジュールを自分で立てて進めないといけないことだった。

マーケティング部(さまざまなランキングを作る部署)にいた頃は、月曜日から金曜日まで毎日やることが決まっていた。それをこなせばOKという世界。

ま、もちろん、それはそれでハンパなく激務ではあったのだが、あらかじめ敷かれているレールに乗ってしまえばどうにかなった。逆に言えば自分の意見など通らないくらいにカッチリとしたセクション。職種がら秘密主義というか、禁止事項が多かった。

それは数字を扱っていることから仕方のないこと。情報漏れやら何やらを回避しないといけない。他部署の人間が出入りするのもNGに近い特殊な仕事であった。

ところが編集部は自分で何をするかを決めないと仕事にならない。何もしなければスケジュール帳は真っ白けだ。

こんなに自由な仕事が許されるのか?と最初は驚いた。ガチガチに型にハメられたマーケティング部での日々が嘘のよう。

ただ、その自由は逆にプレッシャーであることに数日後、気づいた。こりゃまずいぞ、と。やるべきことがわからなかった。

決まったことをやればよかった部署とは違い、自分ですべてを作り出さないといけない。出社してもやることがないのがこんなにきついとは思わなかった。

PAINT IT BLACK!

なので編集部に入ってまずオイラがやったことは真っ白なスケジュール帳を黒く塗りつぶすことだった。

右も左もわからない状態で入った編集部。ライター、カメラマン、デザイナー、スタイリスト、ヘア&メイク……まったくコネクションが無い中でのスタート。

もちろん、先輩編集者がアドバイスをくれたが、結局、自分で切り開かないといけない道だ。それを楽しめるかどうかが大切。

オイラはそれを楽しいと思った。ま、雇用形態にもよるのだけれど、雑誌編集も会社員にかわりはない。フリーランスとは違い、働いても働かなくても給料は一緒。

そこに甘えるか甘えないかの話。オイラはこんなおもろい遊びはない!と考えた。これは人それぞれ。編集者なんてそんなもんだ。

腰掛けOLのごとく最低限の仕事をして会社に居座ろうと思うタイプと、自分の睡眠時間やプライベートタイムを削ってでも、自分が納得する仕事をしようとするタイプ。

後者は最終的には自分で会社を起業していく人間が多い。実際、そういう人たちをオイラはたくさん見てきた。

ま、その後、どうなったのかはわからないけど(笑⁠⁠。人生の選択は間違えるととんでもないことになる。

編集者はM(マゾ)であるべし

そう、それで真っ白だった手帳を黒くするため無我夢中で動いた結果、半年くらいで目標は達成することになった。

手帳がスケジュールで埋め尽くされていくのを見るたびにオイラは喜びを感じた。きっとM(マゾ)なのだろう。

ま、編集者はS(サド)ではなくM(マゾ)のほうが向いている。自分を追いつめて、追いつめて。そこに快感を求められる人間ではないと多くの仕事と大きな仕事を得ることはできない。

とにかく、取材対象は無理難題を言ってくる。ザッツ芸能界!的なアーティストなどワガママを通り越して、不可能な条件を平気で提示してくる。それをどうかわしていくか、それが編集者に求められるM(マゾ)気質である。

自分で仕事(取材)を取ってきてページを作る作業。オイラは自分の仕事で雑誌全体の半分を構成してやろうと思い動いた。

でも、それを現実化するにはそれなりのスケジューリングをしっかりと立てないといけない。ぶっちゃけ、編集の仕事の大半は自らのスケジュールを上手く立てることである。

それを上手くこなせればどうにかなる。でも、それが難しい。

オイラは受験勉強を思い出した。1週間、何曜日に何をつめこむか。何時から何時まで英語をやって、何時から何時まで現国をやって、その後、日本史をやって……みたいな。

そう、受験というのは脳味噌に知識をブチ込む作業ではなく、自分で段取りをつけるための修行だったんだな、と。

いかに効率的で最適なスケジューリングをするか? それが人生最大の命題。

そういった意味で受験というのは人生を生き抜いていくためには必要な時期だったわけだ。当時は無意味だと思ったが、そんなこともなかった。

多重人格の役者になること

だから、今回の叫訓で話したかったことは⁠セルフ・プロデュース⁠が大切だということ。誰もが自分のプロデューサーなわけである。敏腕自分プロデューサーになることが求められることとなる。

自分を客観的に見る目。ジキルとハイドじゃないけれども二重人格者にならないといけない。自分を使い分けることだ。

クソ真面目な自分とふざけた自分。細かい自分と大雑把な自分。その場面、場面で自分を出していくしかない。その演出をするのは自分だ。

人生(仕事)という舞台上でどう振舞うか。人間なんて自分を演じているだけだ。そう、誰もが役者なのである。

だから、もっと言ってしまえばどれだけ嘘つきになれるかだ。本当の自分で勝負しようなんて考えてはダメだ。

そもそも、本当の自分って何? 自分に本当も嘘もない。

うん、オイラはそうやって生きてきたなあ。今もそう。だって、たまにはイノマーにうんざりすることもあるもの。

オイラの本名はイノマーではない。

イノマーに疲れたり限界を感じたり。でも、イノマーもプライベートの自分も、もはや同義となっている。そんなもんだ。

どれだけ二重どころか、多重人格者になって、平気な顔をしていられるか。結局は仕事の顔も自宅でくつろぐ顔も変わらないもんだ。

編集者は遊んでナンボ

でも、これをやり続けると心が病んでくる。それに負けないタフなハートを持ち続けるのも大切なこと。

そのためには自分をたまには甘やかさないといけない。休む。そう、サボることも大切なのである。これ、ホント。心と身体に休憩を入れてあげないと最終的にはブッ壊れてTHE ENDとなってしまう。人生劇終。

社長が朝礼で言ってた言葉が忘れられない。うちの社員は真面目すぎると。だからダメなんだ、というようなことを。

社長はニコニコしながら言った。

「さぼりなさい」

もちろん、ずっとさぼってばかりではいけないとも言っていた。でも、休むことも大事だと。そして、特に編集の人間は遊ぶようにと言われた。

徹夜ばかりして遊ばないのはいけない、と。そんなことではおもしろい雑誌など作れるはずがない、と。寝る時間も惜しんで遊べ。

そのためにはズルしたりさぼったりすることも必要だ、と。⁠寝てない自慢⁠はカッコ悪いようなことも言っていた。

う~~~~~ん、深い。矛盾するけど。

でも、さすがに一班体制で週刊誌を作っていると、そんな時間ないんだけどね。だけど、ないと言い切ってしまえばおしまいだ。

自分で自分のタイムテーブルを作るのが編集の仕事。そこにはやはり⁠睡眠⁠⁠食事⁠⁠遊び⁠なんて項目も必要なのだろう。

そして、何よりいろんな人と会うこと。ランチだったり、飲みだったり。

ちなみに、会社のオイラのタイムカードは真っ白だった。タイムカードを押した記憶がない。目をつぶってくれた総務の方には感謝しております(笑⁠⁠。あんなのまともな会社員だったら完璧にアウトだもの……。

叫訓5

上手にサボる(休む)

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