元オリコン編集長☆イノマーの『叫訓』

第11回たったこれだけ!ライターになるための心得

文章を書くということ

今回はライター(?)の話です。

オイラは文章を書くのが好きだ。これは仕事として、というのではなく単純に好きなのである。

趣味? う~~~~ん。

ま、そんなもんか。

雑誌の編集が好きとか、現場取材が好きとかそんなんじゃない。正直、そういった作業は煩わしい。面倒だ。でも、不思議なもんだ。そういうことが大好きな人もいる。編集や現場が好きで雑誌社で働いたり、フリーで仕事をしている人たち。

オイラの2番目の奥さんがそうだった。彼女はフリーのライター兼編集で忙しく日々を過ごしていた。

夜、ふたりでお酒を飲みながらよく話をした。⁠私は取材の現場が好き。インタビューだったり、撮影だったり。あの緊張感が好きなんだよね。段取りを考えたりとか」

「そうなんだ?」とオイラは言った。⁠オイラは苦手だな。部屋でひとり原稿を書いてるほうが好き。できるなら取材とかしたくないもん。基本的に誰にも会いたくないや」

彼女は苦笑した。

でも、正直な気持ちだった。

雑誌にかかわる人間は大きく2つに分かれる。現場主義者と自分の部屋派。

オイラは後者でパソコンに向かって何時間でも原稿を書き続けることができる。まったく苦痛ではない。暗い部屋にこもり鶴の恩返しのごとくひたすら原稿を書く。机にはコーヒーと煙草。考えただけでもワクワクする。

なりきることも大事

何年前だろう? 渋谷にある『文章・編集の学校』という専門学校でセンセーをやっていた時期がある。

こんなオイラがセンセーってね(笑⁠⁠。でも、先生じゃなくセンセー。先生なんて偉いもんじゃない。

生徒さんの中にはライター希望、編集希望、両方希望、そして、その違いさえわからない生徒さん(これがいちばん多い)もいた。

経験ゼロの生徒さんたちに教えることは新鮮だって。麻痺してしまっていた感覚を取り戻すようで自分にとっても有意義な時間を過ごすことができた。

編集作業に関してはある意味、マニュアル的なものがあるので問題はなかったが、文章を書くライター希望の生徒さんに教えるのは難しかった。文章とは感性だから。

でも、突破口はある。とにかく書くことだ。

オイラは誰にも頼まれていないのに、好きなバンドのライナーノーツを書いていた。不毛な作業かと思われるかもしれないが、これ、大事なことである。

20代前半の学生時代、オイラはザ・ローリング・ストーンズの全アルバムのライナーノーツを書き上げた。

ザ・ビートルズもすべて書いた。セックス・ピストルズ、ラモーンズ、ダムド、クラッシュ、ジャム、フー、ストラングラーズ……とにかく勝手にライナーノーツを書きまくった。もちろん、ブルーハーツをはじめとする日本のバンドのライナーノーツも。バイトとライナーノーツを書く作業で忙しかった。

でも、掲載されるわけではない。

阿呆だ。うん、バカだったんだと思う。でも、そんな無駄な作業が数年後に活かされることになった(その当時は予想だにしてなかったけれど⁠⁠。

四畳半のアパートの中では、オイラは著名な音楽ライターだった。

妄想も必要だ。生まれて初めて彼女ができる24歳まで、オイラはそんなことばかりしていた。童貞期もまんざらでもない。

憧れの人(ライバル)を作るべし

職業ライターになるまで、そして職業ライターになった後にも大好きなライターさんがいた。その人に一歩でも近づきたくてオイラは必死になって文章を書いた。

文章でお金をもらうようになって何年か経った頃、オイラはそのライターさんと一緒に仕事をすることができるようになった。

嬉しかった。ようやく同じ地点に立てたと(勘違いなんだけどね⁠⁠。何年かかったんだろう? 10年以上はかかった。初めてお会いしたとき、この人がいたから今の自分がいるんだと思ったら震えた。

そういった目標ともいえる存在を作ることは大切だ。それは身近な人でもオッケー。会社員であれば仕事のできる上司とか。もちろん同期でもいいしね。とにかく、自分勝手にライバルを作ることだ。

スゲー子供チックな発想かもしれないけれど、この人みたいになりたい!と思えば、自然とその道を歩いているもんだ。

好きなことを仕事にするのは不可能だ、わがままだ、と思われるかもしれないけど、そんなことはない。好きなことを仕事にするべきだ。そうじゃなきゃ続かない。

人生は長いようで短くて、そしてやっぱり長い。だったら好きなことを仕事にすべきだ。

ま、これがなかなか難しいんだけどね。

あきらめることも必要である

オイラの尊敬する人のひとりに北野武という人がいる(みんな知ってるか……⁠⁠。そりゃどう考えたって近づけやしない。いや、近づけることはできるかもしれないけど(何光年?⁠⁠、北野武になることは100パーセントできない。

そう、自分の天井を知ることも必要だ。自分にできることではなく、できないことを素直に認めること。人生なんて消去法だ。

若いときは何でもできると思っちゃうけどね。でも、ハッキリ言って自分のできることなんてたかが知れている。そのたかが知れている中で自分にフィットするモノをチョイスして突化させる。これしかない。

オイラはたまたま文章を書くのが好きだった。本当は北野武になりたかったし、ブルーハーツになりたかった。でも……ムリだってわかったもんな。認めた。

認めてから人生はスタートする。

あきらめる、と考えるのではなく自分を認める。そういうこと。

しょうがねーや、こんなもんだと。

ライターになるには?

さて、具体的な話をしよう。

ライターになるには……

名刺屋さんにGO!

名刺を作れば、その瞬間にライターにはなれる。街の名刺屋さんに行けばその数時間後にはライターだ。3000円ちょっと。仕事があるとかないとか関係ない。もう、名刺さえ作ってしまえばライターなのだ。

で、会った人に「ライターの○○○○です」と名刺を渡せばいい。相手はなるほど、フリーのライターさんなんだと思う。

オイラのまわりにも自称ライターは山ほどいる。週6日、カレー屋さんでバイトをしているAくん(35歳)もライターという名刺を持っている。職業は?と聞かれればライターと答える。そう、彼はカレー屋ではなくライターなのだ。

カレー屋さんはあくまでもバイトで本業はライター。もちろん、定期的なライターの収入はない。でも、間違いなく彼はライターなのだ。

なぜか? 彼がそう言うから。ちなみにAくんは店のチーフでメニューやポップ書きなどもしている。立派なライターだ。

ライターだけではない。マスコミ関係なんてフリーの集まりだから自称カメラマン、自称エディター、自称コーディネーターなんていう人間だらけだ。文房具評論家とかよくわかんないもんなあ。でも、言い切る勇気。これだけだ。

思い込みが強ければ強いほど成功する可能性のある仕事。つーか、ライターはそれくらい我が強くないと続かない。

そして、普通の話だけど文章を書くのが好きなこと。

でも、文章を書くというのもそんなに特別ではない時代になったもんだ。ブログ、ツイッター、フェイスブック……誰もがライターだもの。文章の上手い下手は別にしてね。ま、上手いも下手もないか?

ちなみに、オイラは文章に慣れるため、目の前にあるどんな物でも1万字書けるトレーニング(遊び)をしていた時期がある。

好きこそもののなんとやら。

暇だったんだなあ……。

叫訓11

ライターに免許など無い!
言ったもん勝ち、やったもん勝ち

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