元オリコン編集長☆イノマーの『叫訓』

第13回 映像だけじゃわからない─ “言葉”でしか伝えられないこと

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紙は神?

人が口から発する言葉。オイラはこの言葉というものに救われてきた。今でもそうだ。過去にこのコラムでも言葉について書いてきたが今回も少々……。

言葉を拾い,文章を作る仕事。オイラはそんな世界で長いこと働いてきた。

約20年ほど雑誌関係の仕事して,今は映像関係の仕事をしている。

雑誌に飽きたわけではないけれど,映像のほうがダイレクトのような気がしているのは正直なところ。ま,その善し悪しに関しては後ほどの講釈で。

ところで,実際に世の中的にはCDよりもDVDのほうが需要が高く,セールス的にも売れている。CDの初回特典にはDVDがついていたりして,どっちがメインなのかわかったもんじゃない。

やはり,映像のほうがわかりやすいということなのだろう。CD産業は完全に映像産業に負けてしまった。

じゃあ,雑誌と映像の違いは何だろう?

確かに雑誌(紙)は何年後も残る。映像ソフトは数年後にそれを再生するハードがなくなれば観ることはできない。

ちなみにオイラの部屋にはベータのビデオデッキがある。ほとんど使うことのない骨董品だ。笑えるから捨てないでいるだけ。でも,ルックスは超キュート。

いや,もちろんVHSデッキもあるし,ハードディスクレコーダーもある。だけど,いつかこれらも不便の塊となるんだろうな,と。

でも,紙はある意味,永遠だ。それは魅力的でもある。芸術? 社会の教科書にも歴史的に貴重な紙は残っている。何て書いてあるかわからないけど……。

雑誌もDVDも川の流れのように……

今,映像関係の編集をやっていて思うことはダイレクトなのになぜか温かみが無いな,ということ。やっぱり,オイラは紙世代なのかもしれないけど,映像は直接的過ぎるのだろう。それは間違いない。

わかりやすく(?)言えば,そこに匂いがない。言葉も流れていく。雑誌だと言葉はそこにとどまる。でも,映像となるとすぐに過去になってしまう。

ま,巻き戻しをすればいいのだけれど。う~~~ん。そういうことじゃないんだよなあ。

流れていく水は澄んでいるけれど,流れることのない水は泥水となる。

でも,泥水には泥水の存在意義がある。ナミハナアブだって泥水がなければ生きていけない。キュウリやイチゴの受粉にナミハナアブは必要なのだ。

って,何の話だ? いや,紙の言葉と映像の言葉の違いを伝えたかっただけだ。すいません,説明下手で。

泥の中にこそ真実があるのだ!と言いたかっただけだ……って,嘘。言葉は紙に残り,映像には残るけど残らない。ま,そんな曖昧なことを言いたかったんです。ごめんちゃい。

そう,そんな矛盾を抱えながらオイラは今,映像関係の仕事をしていると。

ふと思ったけど雑誌っていう呼び名もひどいよなあ。雑な誌だもの。って,これまた話が逸れそうだからヤメよう。

数々の言霊

人間は言葉を話すことのできる動物。ま,確かに犬や猫や猿や鳩までが言葉を話したらややこしくってしょうがない。

オイラは愛猫家だけれども,猫が言葉を話しだしたら嫌いになってしまうかもしれない。とにかく,猫という動物はわがままだ。

わがままというか自分本位というか,マイペース。うらやましいくらい。だから,一緒に生活していてもほったらかしでいいのでラクではあるのだけれど。

言葉……言葉か? 大学入試のとき論文のテーマが言葉であった。まったく上手く書けなかったことを覚えている。

当然,落ちた。今でも言葉について書くのは難しい。それなのに,言葉にたずさわる仕事をしている。不思議なもんだ。

それはやはり,人生を導いてくれたような言葉にたくさん出会えたからだと思う。

「行動に迷ったときは,自分にとって苦しいと予測する方をえらべ」

高橋がなり(SOD)

「本当に好きな道なら,もっと前に進みたくなるのが人間」

武田鉄矢

「芸能界で私に何かを教えてくれる人とか,注意してくれる人っていないんですよ」

和田アキ子

名言だなあ……。

言葉から学んだこと

もちろん,名言をプレゼントしてくれるのは有名人だけではない。オイラは何度も自分の身のまわりにいる人の言葉に支えられてきた。それは部下だったり,友達だったり,別れた奥さんだったりする。

ま,そんなもんだ。

「読者の笑顔をイメージして雑誌を作らないとダメっ」

会社員時代,社長が編集部員を集めて言った。このときはマーケティング部から編集部に異動して半年くらいの時期でまるでピンとこなかった。何だそれ?みたいな。

でも,退社して自分で事務所を立ち上げて雑誌を創刊したとき,オープニング・スタッフに同じことを言っている自分に気づきビックリした。

「読者が笑ってるところを想像できる? ポテチ食いながら,コーラ飲んで,ゲラゲラ笑ってるところを!? そういう雑誌じゃなきゃダメなんだよ」

ふうむ。

これは雑誌だけの話ではない。定食屋さんだったり,電球工場だったり,お花屋さんだったり……とにかく,サービス業に携わっている人間に共通していえることだと思う。

お客さまの笑顔をイメージできない仕事をしなくてはいけないのだ。でも,これって当たり前のことだよなあ。

普通の話。それをできない人間だったり会社が多いんだろう。

何年前だろう? テレビで『餃子の王将』の特集をしていた。国内でいちばんの売上を誇る店舗の店長は言った。⁠普通のことをやってるだけです。その普通のレベルを上げること」

正確な言葉ではないかもしれないけれど,こんな話をしていた。なるほど。その通り。返す言葉もない。うなずくだけだ。

普通でオッケー。でも,普通の普通じゃダメなんだな。まったく違う業種の人からオイラは自分のすべきことを学んだ。

言葉ってやっぱりスゲーや。

叫訓13
偉人も凡人も誰もが名言を残す
それをどう受け止め消化するか……

著者プロフィール

イノマー

昭和41年東京生まれ。駒澤大学卒業後,(株)オリコンに入社。10年間勤務し編集長2回,副編集長を3回務める。退職後,フリーの編集・ライターとなる。同時にバンド活動もスタート。メジャーデビューも経験し,現在はインディーズでの活動へ。過去に10枚のアルバムと2枚のシングルをリリースしている。

http://www.onamashi.com/

Twitter:@inomar_onamashi

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