元オリコン編集長☆イノマーの『叫訓』

第71回「差別の中でもがき続ける一生」――そこに悪意はない

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日本語って難しい(?)

“ひいきにする⁠なんていう言葉がある。って,いきなりですいません。いや,つい最近,いつも行っている顔馴染みの飲み屋で言われたもんで。そう思われてたんだ? と。

「ごひいきにしていただいて」

ひいき? う~~ん,そんなつもりはなかったんだけど……好きだから通っているだけだ。それだけの話。

でも,確かにオイラの住んでいる街,下北沢には多くの飲み屋さんがある。その中で決まって行くのは5軒くらいだ。

意味はない。気づくと足が向かっている。リラックスできるからというのが大きいとは思う。安心感ってやつね。行きつけの床屋みたいなもん。黙って座ればそれで済む。面倒な説明は必要ナッシング。

叫訓のゲンコーで新しい店に入るべし,なんて言っているのに申し訳ないッス。でも,人間なんてそんなもんだ。人間だもの(笑)⁠

昔はそうでもなかったのだけれど,最近はコンビニですら行き馴れていないところだと恥ずかしくて商品を買うことができない。

この行動って確実に老化へとつながる。いかん,いかん。トホホ。

先日,甲州街道沿いにあるアダルトショップでDVDを買ったとき,⁠毎度,ありがとうございます」と言われた。さすがにコレはまずいと思ってしまった(笑)⁠

まー,でも,⁠毎度,ありがとうございます」と言われて嫌な気分はしない。店主はオイラの好きな傾向の作品をわかってくれているので,発売日には必ず取っておいてくれる。

ちなみに,その商品は委託ではなく買い取り(返品不可商品)⁠お店にとってはリスクが大きい。ありがたいいけど,こちらも責任感が生まれる。

よっ,商売上手!

差別の中でもがき続ける一生

ということで,今回の叫訓テーマは⁠ひいき⁠について。やや強引ですが……。

ひいきされてるとか,ひいきしているとか,日常生活の中でよく聞かれるけれど,ま,そんなもんだ。そんなこと気にしていたら生きていけない。

人間なんて,誰もが差別の中で生きている。気づいていないかもしれないが,自然と差別され,差別しているものだ。

先の話,行きつけの飲み屋の件もそう。差別だ。オイラが差別している。そこに悪意はない。数ある中から無意識に店を選んでいる。

オイラはバンドをやっているが,オイラのバンドや作品も差別の中に存在する。それが宿命だ。お客さんは数あるバンドの中からCDやライブを選ぶ。それもある意味,差別である。他と比べているのだから。

自分たちのCDが売れないとか,ライブに人が集まらないとか,それを差別されているからと言ってしまったらおしまいだ。言い訳でしかない。THE END。

多くの選択肢の中から,自分のバンドは差別の中,選ばれることになる。選んでくれる奇特な人もいれば,そうでない人もいる(ほとんど)⁠それが現実だ。

新しいCDが発売になる度にオイラはいつも自分たちの子供(作品)を戦場へ送り出す気分でいる。厳しい世界だけど頑張れ,と。

嫌な思いもするだろう。何で誰も手にとってくれないんだろう? って。でも,それが弱肉強食のルールだ。とか言って,長いことCD作ってないけど。しっかりしろ,オイラ!

校長先生だって人間である

考えてみれば,子供の頃からオイラたちはそんな差別の中で生きてきた。試験だったり,運動会だったり。モテるモテないとかね。

いまだに忘れられない悔しい思いをしたことがある。中学生の頃の話。オイラにはKという親友がいた。家も近所だったこともあり,毎日登下校は一緒。お互いに転校生だったので本当に仲が良かった。

Kは勉強もスポーツも学年でトップ。しかも,身長が高く女生徒の憧れの的だった。

そんなKといつも一緒にいたオイラ。勉強もスポーツもできない。身長も低い。正直,劣等感はバリバリだった。

でも,ふたりは親友であり続けた。

オイラはテニス部でKはサッカー部だった。部活が終わった後,ふたりで帰る途中,校長先生に会った。校長先生はKに向かって笑顔で手を振った。そして,親しげに話をした。⁠期待してるからね。Kくんは学校の誇りだから」と校長はKに言った。

オイラはKのすぐ横にいたが,校長先生の目にはオイラは入らなかったみたいだ。いや,目に入ったとしても排除された。完全なる無視。自分はこの世にいないのではないかという気にすらなった。

それはさすがにショックだった。そっか,オイラなんて存在意義はないんだ,って。でも,すぐに,それもしょうがないかと。自分のせいだと思ったからだ。

オイラのことなど校長先生は知るはずがない。かける言葉もなかっただろう。オイラのことを気にかけて,Kも気まずそうだった。

それまでは気づかなかった。でも,そのときにわかった。自分はこういった世界で生きているんだ,と。そして,こういったシビアな世界でこれからも生きていかなくてはいけないんだと。

中学2年生でオイラはそれを受け入れた。

イッツ・ア・スモールワールド

よく,⁠上司がえこひいきするからムカつくー⁠ー」なんていう話を聞く。ま,そんなことはぶっちゃけ日常茶飯事。当たり前の話だ。

えこひいきされるのも才能(もしくは偶然)⁠もちろん,個人の努力の結果かもしれない。だから,いちいち恨んでいたらキリがない。

オリコンの社員時代,オイラはえこひいきをされていたかもしれない。そうじゃなければ,オイラみたいな人間が編集長に抜擢されるはずがない。うん,あり得ないことだ。

仕事ができたわけではない。忘年会でムチャクチャやって(いや,本当にひどいお下劣なことをやった……普通はクビだ)⁠社長に顔と名前を覚えられたから。それだけ。

そう,だから,自分が編集長になってから,オイラも編集部員の誰かをえこひいきしていたかもしれない。

悪気は無い。

結局,そんなもんだ。えこひいきされる人間に共通しているのは,結局,良い悪いを置いといて,何かに特化しているということ。

もちろん逆のパターンもある。出る釘は打たれるというケース。オイラはえこひいきもされたかもしれないけれど,散々,叩かれたりもした。理不尽なことで責められた。

オイラのことを認めてくれる人もいたが,その倍以上,オイラのことを邪魔に思った人もいた。ま,こればっかりはしょうがないなと。

多かれ少なかれ,誰もがそんな思いをして生きているのだ。えこひいきなんて小さな話。仕事上,あって普通。気にすることはない。

ということで今回の叫訓↓

叫訓71
えこひいきのない世界なんて……
この世には存在しない!

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著者プロフィール

イノマー

昭和41年東京生まれ。駒澤大学卒業後,(株)オリコンに入社。10年間勤務し編集長2回,副編集長を3回務める。退職後,フリーの編集・ライターとなる。同時にバンド活動もスタート。メジャーデビューも経験し,現在はインディーズでの活動へ。過去に10枚のアルバムと2枚のシングルをリリースしている。

http://www.onamashi.com/

Twitter:@inomar_onamashi

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