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第66回 デジタル書籍のマーキング

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デジタルでの読書環境

この連載では,読書がデジタル化していくときの環境や紙にできないデジタルならではの読書環境について,さまざまな考察を進め,これまでに大きくわけて2つの提案をしました。

ひとつは第44回で紹介した『背表紙システム』です。書物のもっとも特徴的でなじみのある背表紙を,システムとして運用しようというものです。デジタル化-背表紙の自動生成-購入日とおなじ日付に自動的に画面に表示(ウィンドウはなく書架をモチーフにしている)という仕組みをほぼ自動化しています。運用も1年半ほど経過して安定してきました。

第59回では,背表紙に加えて,紙のページに入れた赤字ページを表示するシステムを紹介しました。デジタルの書籍に対するマーキングをどのようにすればよいかは,まだよくわかっていません。この『赤字ページシステム』では,紙にマーキングした赤字を画像認識して赤字ページのみを抜き出して表示することを可能にしています。⁠赤字ページシステム』も運用期間は1年を超え,安定運用の時期に入っています。

背表紙システム

背表紙システム。メニューでおなじ日の他の本をリストしたりもできます。

メニューでおなじ日の他の本をリストしたりもできます。

これらのシステムは,ページをめくる一定の手順でしかアクセスできなくなってしまうデジタル化書籍を,もっと自由に扱えるようにしたいという提案でもあります。デジタルの書物は,綴じた書物のもつ物理的な形に囚われることなく,ページ単位,見開き単位,赤字を入れたページ順など,自由な発想で自由にアクセスできることが魅力になるはずです。

立ちはだかる雑誌とマンガ

背表紙と赤字システムは,書籍に対して効果的でしょう。⁠書籍に対しては」と限定する理由は,運用してみると効果的でない例が複数出てきたためです。雑誌とマンガです。

第一にカラーページの雑誌は,赤字を入れたとしても赤字を抜き出すことがむずかしいのです。第二に,マンガで気に入ったページや気に入ったコマがあるとして,それをマーキングするのに赤字を入れることが可能だろうかと考え,わたしには無理だと考えざるを得なかったためです。

漫画は平面的なデザインを伴う作品であり,赤字を入れる作業を通して,その行為が漫画自体に関わってしまう比重が高いと考えます。次の画像は赤字を入れるためのテストで引用するもので,⁠ムーンライト・シャドウ(ネムキ1997年1月号 ネムキVOL.35)⁠の1ページです。

NetStickyColor

NetStickyColor。付箋にページを貼り付け,その貼りつけたページに赤字(というか任意の色)でメモを残すことができます。NetStickyColorはVectorでフリーウェアとして公開しています

付箋にページを貼り付け,その貼りつけたページに赤字(というか任意の色)でメモを残すことができます。NetStickyColorはVectorでフリーウェアとして公開しています。

このように,アナログの紙の漫画の場合,作品を損ねない形でマーキングを入れることは大変にむずかしいです。コマがかたちを保っていればまだ「欄外」にマーキングすることも可能かと思いますが,昨今は,コマのかたちに囚われない漫画表現が増えているので,なおさらむずかしくなっています。

アナログの紙では限界があります。むしろ,その部分でこそデジタルの出番といえるかもしれません。

付箋ならいいかというと,付箋も絵にかかってしまうとか,付箋の糊は変質しやすいとか,という問題もあります。

紙の本で付箋を貼るような形で,デジタルでも付箋を貼るような表現をすればよいのかもしれません。試作しているソフト『PictureView』では,付箋のような表現にも対応しています。

PictureView(1)

PictureView(1)。『PictureView』は,ページに付箋を貼るようにしてコメントを表示したり書き加えることができます。

『PictureView』は,ページに付箋を貼るようにしてコメントを表示したり書き加えることができます。

著者プロフィール

美崎薫(みさきかおる)

夢想家,未来生活デザイナー,『記憶する住宅』プロデューサー,記憶アーティスト。住宅,書斎,机をはじめ,ハードウェア,ソフトウェアの開発をプロデュース。著書『デジタルカメラ2.0』(技術評論社)など多数。

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