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第79回 電子私家版の電子書籍で行こう

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Windows 8搭載のピュア・タブレットをもっています。これをなにかに使えないかと考えて試作しているのが,電子書籍ソフトです。

電子書籍は,近年,ブームが定着し始めているようです。大きくわけると,携帯電話系,ハードウェア専用端末系,Amazon-Kindle系,ソフトウェア系(EPUB, PDF)⁠青空文庫系,書籍の電子化(PDF, jpg)などになると思います。

電子書籍への不満点

筆者は,年間で300冊以上を読む「活字中毒」です。この多大な読書癖からの個人的な感想では,既存の電子端末は不満があり,ほぼ全滅という感じがしています。

既存の電子端末に感じている不満は,5つあります。

既存の電子端末の不満を解決すために製作した自作電子書籍ソフト(後述)入りのタブレット端末と,紙の書籍

既存の電子端末の不満を解決すために製作した自作電子書籍ソフト(後述)入りのタブレット端末と,紙の書籍

タイトル数が足りない

第一に,タイトル数がぜんぜん足りないことです。ずばり読みたい本がないのです。

電子書籍の表現力が足りない

第二に,表現力が足りないことです。表現力とは,画面のレイアウトといってもいいかもしれません。そもそも紙と同程度の解像度をもつ電子端末は存在しないですが,それに近いRetinaディスプレイのiPad系をもってしても,フォントがまだ足りないのではないかという気がします。文字をきちんと表現しきれていないことも,表現力のひとつの要素です。比較的よく見かけるたとえば「剥」⁠躯」などの漢字をちゃんと表記している電子書籍を見かけることがそもそも稀です。⁠舞姫』の作者,⁠阿房列車』の作者の名前を表記せずにいて,書籍と言ってよいのだろうかという感じがするのです。

筆者は雑誌の編集者でもありましたが,編集の観点でいうと,文字詰めが「詰め」でないことにも不満があります。文字がすかすかに見えるためです。雑誌の場合,ふつう文字送り(文字詰め)はフォントサイズ(級数)よりもひとつ下げて送ることが多いです。文字の方向に詰めることで,目は自然と文字を追うことができ,行の方に目移りせずにすむようになるためです。電子書籍には,文字間が開いていたり,行間との区別がないようなこともあって,縦に読んだらよいのか,横に読んだらいいのか目が迷ってしまうことがあり,文章を読むことを困難にしているような場合さえあります。

解像度と同時に,書籍らしさのない電子書籍にも不満を感じます。筆者は,クリームイエローの紙色である集英社コバルト文庫や赤茶けた角川文庫,ざら紙のような新潮文庫などのほか,ややイエローのかかった書籍用紙をとても気に入っています。電子書籍の特に専用端末は,モノクロであって,このような紙の色を再現したものはありません。ソフトウェアの場合でも,背景を自由に変えられるものは寡聞にして知りません。いやこれ,ほんとうに知らないのです。すみません。AdobeのAcrobatは背景の色は変更できるようですが,背景に自分の好きな画像(たとえば紙)を配置できるような機能はないように思います。これもあったらすみません。

背表紙がない

第三に,背表紙がないことです。書籍とコンピュータとのかかわりのなかで,書籍を代表する画像情報は表紙のサムネイルばかりです。Amazonのイメージにせよ,その他の電子書籍にせよです。書籍の表紙はもちろんデザインされていて,多くのイメージをもっていますが,場所を取るところに難点があります。既存の実際の紙の書籍でも,数が増えれば面差しではなく棚差しするのが普通でしょうから,書籍といっていちばん最初にイメージするのは表紙よりも背表紙ではないかと思うのです。背表紙をいちばん長く見ているのではないかと。そうであればなおのこと,電子書籍に背表紙がないことは不自然に思えるのです。

筆者はこれまでにも,自分で電子化した書籍を扱うのに,背表紙を中心としてきました。背表紙は,表紙と較べて情報の圧縮効率が高く,閲覧もたやすいと感じています。表紙のイメージはよいのですが,サムネイルになると小さくて,なにを表示しているのか細かいところを見ることができません。背表紙ならそれを解消できると考えています。

手書きメモ機能がほしい

第四に,メモ機能です。手書きメモといってもいいです。書籍に赤字で注釈をつけながら読むということをふだん紙の本でもしているので,手書きで簡単に文字を書ける電子書籍がほしいのです。

自由度が低い

第五に,自由度です。せっかくの電子書籍であるにもかかわらず,文字のサイズやフォント,レイアウト,書記方向(縦書き/横書き)などを自由に変更できる電子書籍はとても少ないようです。ソフトウェアで実現する場合には,端末の実サイズや解像度などによって,読みやすいフォント,読みやすい文字サイズは,ユーザーのニーズに応じて,自由に変更できてよいはずです。目のよい人とそうでない人とでは,読みやすいと感じるサイズは違うでしょうし,一度に表示できる文字数がどのくらいあるかも,読みやすさと密接な関係にあると思います。筆者の場合,一度に40文字×40行程度約1,600文字,すなわち一般的な書籍の見開き2ページ分を一度に目にしていたいと感じます。筆者は,本を読むときに,いわゆるフォトリーディング的な読み方をしているようで,要点だけをすばやく抜き出して読んだり,読んでいる文字の次の文字や次の行に視線を動かしたりしているようです。一度に表示できる文字数が少ないと,このような読み方をすることができません。そもそもそういうものを筆者は書籍とは感じないようなのです。

著者プロフィール

美崎薫(みさきかおる)

夢想家,未来生活デザイナー,『記憶する住宅』プロデューサー,記憶アーティスト。住宅,書斎,机をはじめ,ハードウェア,ソフトウェアの開発をプロデュース。著書『デジタルカメラ2.0』(技術評論社)など多数。

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