実践!GTD~一歩先の仕事管理

第2回ドキッ!仕事だらけの仕事大会!ポロリもあるよ☆~だから私は仕事管理ができない

いきなり刺激的なタイトルで驚かれたかもしれません。今回の記事を読んでもらえると、とても納得して(身につまされて?)もらえると思います。

GTDがやっぱりよくわかりません

はっきり言いましょう。GTDの概念は分かりにくいのです。

GTDのざっとの概要については、gihyo.jpの「GTDでお仕事カイゼン」ITmedia Biz.IDの特集で説明されています。読んですぐ理解できましたか? 読めば読むほどかえって混乱してしまった人もいるのではないでしょうか。結構やることが沢山あります。理論も簡単そうで複雑です。"GTDって何となく良い感じのツールかな?"というのは感じとれます。でもなんだかスッと腑に落ちない。心に引っかかりができる、考えるより実践した方が理解が早いこともあるので、論ずるより生むが易し、とばかりにとりあえず始めてみる。ところがすぐに、こういう作業でいいのかしら? こんな時はどうしたらいいのかな? そんな不安がみなぎってきます。

実際やろうとしてつっかえてしまうのは、GTDが既存の仕事管理方法に類似する点も多く、とっつきやすいように見える反面、全く新しい思考の上に立脚しているからに他ありません。その独特で新しい思考について、ひとつひとつ解明していこうと思います。まず、今回は自分のおかれている状況の変化について、段階をおって見ていくことで、状況の再確認をしてみましょう。

例えば、志村君はこんな風に仕事をしてきました。

ここで一つ、例を見てみましょう。いかりや商事に入社した新人の志村君が、会社に入ってからどの様に成長していくのか、成長するにつれ、どんな風に仕事を管理しようとするのかに迫ります。

会社の研修が終わってOJTが始まりました。志村君が始めに渡された仕事は、片手で足りる数でしたが、念のため仕事をToDoリストにまとめ、作業が完了したらチェックボックスにチェックをつけて仕事が終わったか終わってないかを確認するやり方、つまり『ToDo管理』を行うことにしました。

しばらくして所属が決まり、志村君も部内ミーティングに参加するようになりました。部内ミーティングの時間はグループウェアのカレンダーに登録されます。こうして、⁠ToDo管理と会社のカレンダー』の二本立てで仕事管理をすることになりました。

志村君が部に所属してからしばらくすると、プロジェクトにアサインされました。OJTの頃はさほど問題なかった仕事の量ですが、この段階になってくると徐々に仕事が増えてきました。また、志村君は仕事を任されたことでやる気が増し、どんどん仕事をこなしたいと考えました。そこで、今までのToDo管理を止め、この時間に何をするという風に、一日の中での時間を割り振りながら仕事をこなすようにしました。志村君にとっての仕事管理は、時間割のように時間を決めて仕事をする計画を立てること、つまり『時間割管理』に変更になりました。

実際、プロジェクトを進めてみると、自分の決めたスケジュールを進めることは難しいと、志村君は薄々感じるようになりました。お客さんから電話が入ったり、同じプロジェクトメンバの先輩である加藤さんに相談しなくてはならないことが生じたり、逆に相談されたりなど、思いがけず時間を取られてしまうポロリと割り込む仕事(以下ポロリ)があるからです。そうすると、一気に時間はずれ込みます。そこで志村君は仕事の管理方法を、時間割管理から、1日単位で今日はこれとそれをしよう、といった管理の仕方、つまり『1日単位管理』にシフトしていきます。ところが、志村君を取り巻く環境の変化はこれだけでは済まなかったのです。

プロジェクトもだんだんと慌しくなり始めます。1日で消化できていた仕事がますます終わらなくなり、志村君は、仕事を次の日に持ち越すことが多くなります。理由は簡単です。通常業務の増加に加え、今までそれほど問題でなかったポロリが、徐々に増えてくるからです。順調に成長し、それだけ頼られる存在になっていく志村君。家に帰るのがだんだん遅くなる現実が辛くなってきた志村君。せっかくの自分のスケジュール管理も、書いても書いても書き直しばかり。やることを次の日に書き直すことが面倒になり、1日単位から、1週間内に仕事こなそうとする『週間単位管理』に、志村君は変更せざるをえません。しかし、週間単位管理でも、対応しきれない状況に陥りはじめます。志村君は奈落の底へゆっくり落ちていきます。

プロジェクトは佳境を迎えました。志村君も、いつの間にか任される仕事の範囲が広がり、致命的な問題が発覚すると、至急対応しなければならないような、緊急かつ重要ポロリが、志村君に降りかかるようになってきたのです。志村君はジレンマに陥ります。仕事を任されるのは嬉しいけれども、だからといって家に帰るのが連日深夜になるのは望んだ状態ではない、そんなに俺の仕事管理が悪いんだろうか! いやいや、精一杯やってるさ、これが俺の限界なんだ。気持ちはささくれ立ちます。休日になっても志村君はぼーっと過ごすぐらいしかできません。せっかくの休みなのに、何をやりたいのかわからないし、そもそもそんな気力だってありません。平日の仕事でいっぱいいっぱいなのです。土日くらい、何も考えず漂いたい――そう思うのも仕方のないことかもしれません。

プロジェクトが終わったら、落ち着くよね――そんな志村君の希望的観測は、夢へと潰えました。

志村君は仕事ぶりを買われ、その後プロジェクトの主要なメンバになっていくのです。プロジェクトのグループリーダとなり、プロジェクトリーダとなり、あっという間に志村君は、プロジェクトにとって欠かせない存在と成長しました。志村君の私生活の時間と引き換えに……。いつも忙しいのが当たり前の状況に慣れてしまった志村君は、いつの間にか忙しい自分の状態を疑問に思わなくなりました。仕事で家に帰るのが遅くなるのも当たり前、だってそれが働くってことだもん!――こうして、志村君はワーカホリックの道を一直線に進むのです。

多くの人が、志村君の話に涙を禁じえないことでしょう。こうしてみると、ふと疑問が沸きます。⁠人生それでいいのか、志村君?⁠⁠ 休日も楽しめない志村君の人生は、仕事をこなすだけでおしまいです。むなしい気持ちになりませんか。それに、いつまでもこんな生活を続けていけるわけではありません。年もとります。健康を害するかもしれません。

志村君がこのような生活サイクルに陥ったのは何が原因でしょうか。もちろん、こなしきれない仕事量に問題がありますが、もっと問題なのは志村君の仕事の管理方法なのです。

仕事管理方法と仕事の種類はどう関係している?

先ほどの志村君のしてきた仕事の管理方法について、順をおって検討してみましょう。

  • ToDo管理
  • ToDo管理+会社カレンダー
  • 時間割管理
  • 1日単位管理
  • 週間単位管理

志村君は、仕事量の変化に合わせて仕事管理のやり方を変えていきます。仕事の状況が変わるにつれて、それに対応できるように仕事管理も変えていく必要があったのです。

その仕事の状況の変化と、仕事管理の変化をまとめたのが図1です。

図1 仕事管理と仕事の状況の変化関係図
図1 仕事管理と仕事の状況の変化関係図

これを見ると、通常業務の増加に加え、ミーティングやポロリといったような仕事が増えたことに対応するために、仕事管理の方法がだんだんとバージョンアップしていったことがわかります。もちろん、人によってはこの図のように、左から右に順々に管理方法が変わらなかった人もいると思います。仕事の状況によって、どの管理方法が適しているかも異なってくるからです。現に私についても、いきあたりばったりで仕事管理について模索していたこともあり、管理方法としては右側へ行ったり左側へ行ったりしていますし、この図に出てこないBTSのような管理方法も行っています。ここで理解してほしいのは、⁠仕事の状況が変わった=仕事の種類が多様化した」ことによって、仕事の管理方法が変化していくということです。

しかし、ここでもう一つ別に注目してほしいことがあります。次の図2を見てください。

図2 仕事管理と仕事の継続関係図
図2 仕事管理と仕事の継続関係図

仕事が多様化したからといって、部のミーティングは減りません。つまり、以前から抱えている仕事がなくなるわけではありません。通常業務は、ToDo管理の時代から週間単位管理になっても続いています。これを表したのが図2なのです。

さらに、この図2にちょっとした工夫をしてみましょう。次の図3を見てみてください。

図3 仕事管理と多様化した仕事の関係図
図3 仕事管理と多様化した仕事の関係図

何か気づきましたか? さらに工夫をしてみましょう。次の図4を見てください。

図4 仕事管理と仕事量の関係図
図4 仕事管理と仕事量の関係図

何か気づきましたか? 
さて、何が増えているでしょうか?

今まで私は、仕事が多様化したと言ってきました。通常業務・ミーティング・ポロリ、といったように仕事は多様化しています。また、ポロリといっても、緊急ポロリなどちょっと毛色が変わった仕事も増えてきています。

しかし、この図4では、そもそも仕事が多様化したことで、その結果、単純に総仕事量自体が増えていることを指し示しています。私達は仕事の多種多様さに目を奪われて、仕事量そのものが、以前より徐々に増えていたことをすっかり忘れてしまっているのです。いやいや、仕事が増えているのはわかっているんだ、と言われる方もおられることでしょう。問題なのは、その仕事量が許容量を越えて、もはや仕事をこなせられる状態ではない、ということに気が付いていないことなのです。まさに、水から少しずつ温度を上げて、茹で上げられてしまったカエル状態! これでは、いつかぶっ倒れること必至です。

あれもやんなきゃ、これもやんなきゃ――最右列の仕事状況が、丁度このような状態です。この仕事状況に対応できる管理方法は、図1から図4まで何も記述されていません。週間単位管理では無理なことは既にあなたがご存知のはずです。だから、このような仕事状況に太刀打ちできるような、新しい仕事管理方法が必要となっているのです。ならば、ここに入る仕事管理方法とは一体何なのか?

それこそが、GTDなのです。

仕事大量時代、到来

志村君のおかれた状況を見て、⁠私も同じだ」と共感した方も多いと思います。これほど忙しくなくても、与えられた仕事ややらなくてはならない仕事をどのようにこなしていけばいいのか混乱している人、混乱はしていなくても、もっとタイトに仕事をこなしていきたい人など、この連載を読まれる方の状況は、様々だと思います。

しかし、どんな方にも共通して言えること、それは「もっと頭の中をスッキリしたい!」という気持ちではないでしょうか。

現代の私たちをとりまく環境は、とにかく仕事量が尋常でないことを理解できたと思います。⁠今日はこの作業とこの作業をやろう」⁠今週はここからここまで」と、ちまちまと実行してきた今までの仕事の管理方法を、根本から考えなおさなくてはいけません。何せ相手は大量、しかも複雑です。こうなったら、⁠目には目を、歯には歯を』です。私達も大量には大量処理で対抗です。合言葉は「金曜日にすがすがしく帰ろう!」です。でも、どうやってその大量処理を実現すればいいのでしょうか? それは、次回以降をお楽しみに。

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