Re:PoIC~ライフハッカーのためのPoIC入門

第4回 GTDとPoIC~相補完する思考

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GTDとPoICの比較

では,GTDとPoICの違いはどういうところにあるのでしょうか。

GTDとPoICの相違は,例えばその時間感覚にも現れています。時間の枠の切り取り方がGTDでは短く,PoICでは長くなっています。GTDの基本時間単位は1日であり,最小時間単位は2分です。しかし,PoICは分単位の時系列でカードを管理しているにも関わらず,取り扱う時間のスパンが,年単位の長期間に渡ります。

東京工業大学の本川達雄氏は,時間の逆数(1/時間)と体重あたりのエネルギー消費量(比代謝率)が比例すると考えられる,と述べています。時間の逆数とは,⁠時間の進む速さ」のことなので,動物の体の中では,エネルギーを使えば使うほど時間は速く進んでいく,ということになるそうです。

GTDとPoICの,それぞれの情報処理システムを生体になぞらえて,単位時間あたりの情報処理のエネルギー消費量,つまり情報の比代謝率も,時間の逆数と比例するのだと考えてみます。すると,情報処理のエネルギー消費量とは,情報を処理するのにどれだけ仕事量がかかるか,といったことですから,比代謝率の高低とは手間の多寡ということになります。

つまり,GTDのシステム内の時間が早いということは,それだけ情報の比代謝率が高い,つまり単位時間あたりの仕事量が多いと言え,PoICでは情報の比代謝率が低い,つまり単位時間あたりの仕事量が少ないので,時間の進み方が遅いのだ,というような考え方ができるのではないかと思います。そして,比代謝率が低く,エネルギー消費量が少ないので,PoICは長く続けるのに適しているのだと僕は考えています。

また,GTDは誰がおこなっても同じ結果が得られるように出来ています。この場合,結果というのは,⁠最適な優先順位順に仕事内容が処理されていく」ということであり,その仕事が達成されたということです。ここでいう仕事とは,料理,部屋の模様替え,旅行の準備など,ビジネス以外のことも含まれています。

しかしPoICの場合,誰がおこなっても同じ結果が得られるものではありません。同じ人間が,同じカードを使って,同じ時間作業したとしても,同じ結果が得られるかどうかは判りません。そもそも,同一の結果というものが存在しません。何故なら,PoICが得ようとしている結果というのは,知的生産物,すなわち「アイデア」だからです。ここでいうアイデアには,人生を快適に生きるアイデアや,家を自分好みにするためのアイデア,小説を書くためのアイデア,BLOGのアイデアなど,ビジネス以外のアイデアも含んでいます。

つまり,GTDとPoICでは求める結果がそもそも異なっているのです。GTDの目標とは,あくまでも「何をするか」であり,PoICの目標は「どうするか」なのです。

GTDとPoICの連携

GTDは,ひとつの仕事を,手順に従って「分析的」に検討し,フローチャートに従って「選択的」に分類し,唯一の解答である「最も効率のいい仕事の順序」に至るという「直線的」な考え方をします。これは「還元主義的」であり,ジョイ・ギルフォード(Joy Paul Guilford,1897年 - 1983年)の言う「収束的思考」に相当します。収束的思考とは,既存の情報から唯一の,あるいは最善だと考えられる解へと到達しようとする,思考過程のことです。

またPoICは,タグで分類したカードを,⁠統合的」にドッグに貯め,時系列で「包括的」に管理し,カードを捲り,並べ,遡り,⁠既存の情報から新しい情報を(より多く)作り出す」というPoICのパイルドライブは「非直線的」におこなわれています。これは「総体主義的」であり,ギルフォードの「拡散的思考」に相当します。拡散的思考とは,既存の情報から数多くの,新しい多様な考えを生み出そうとする思考過程のことです。

創造性とは,拡散的思考と収束的思考が統合されたものであり,アイデアを現実のものにしていく一連の運動のことだと言えます。ブレイン・ストーミングKJ法といった発想法も,思考を拡散させ,そこから唯一の解答へと思考を収束させていく方法について述べています。思考収束ツールであるGTDと,拡散思考ツールであるPoICも,統合的に使うことができると思います。

例えばPoICでは,その機能のひとつである,データウェアハウス的な側面からデータを分析して,ある意思を決定することができます。前回の例で言えば,⁠残りが5%を切ったマヨネーズ」というデータを「認識」し,何故それは起きたのかと「分析」し,ほかに何が起こりうるのかと「予測」することで,いまどうすれば良いのかという「結論」⁠すなわち「今日のうちに買い置きしておこう」という意思決定を導き出すことができます。

この「今日,マヨネーズを買う」という部分が,GTDで言うところのプロジェクトに相当することになります。そしてGTDを用いて,いつ買うか,どこで買うか,どうやって行くか,お金はどうするのか,他に買うものはないのかなどと,プロジェクトをタスクに細分化していき,最適な手順にまとめあげて実行します。また,⁠マヨネーズを買う」というプロジェクトの実行日が「今日」でない場合,細分化された手順は「GTDカード」に記入され,PoICのドックに納められることになります。

つまり,ふたつのシステムを補完的に使用することで,現状に対して「どうすればよいのか」が,PoICによって導き出され,それを実現するために「何をすべきか」を,GTDによって決定していくことが出来るようになります。GTDを挫折したことにより,僕は自分がGTDの上位に立つためには,きちんとした目的意識が必要なのだと感じました。その目的意識は,PoICを利用して自分の中から引き出すことができるのです。

重要なのは目的を達成することであり,ツールの優劣を決めることではありません。お互いに補完しあうことで,目的意識を持ちながら,やるべきことを完遂できるのではないでしょうか。

まとめ

僕はGTDに挫折しており,完璧にメソッドをマスターしているとは言えません。ですから,僕のGTDについての感想は,ひょっとして「木を見て森を見ず」的な,ずいぶんと偏ったものになっているかもしれません。その点に関しては,あらかじめご了承願います。

ただ,GTDがデビッド・アレン氏の著書のタイトルにもあるように,⁠Art(技術)⁠であるということは間違いないところでしょう。これは,自動車を運転する技術,などと同様の意味での技術のことです。ここには「何のために自動車を運転するのか」といった目的意識は含まれていません。⁠どこに行くのか」⁠行った先でなにをするのか」はドライバーひとりひとりが考えることであり,それらが運転技術には含まれていないように,GTDそのものにも目的意識は含まれていないのだと思います。

僕にとって目的意識を持つ,つまり,意思を決定するためのツールがPoICであったに過ぎず,PoICでなければGTDと連携できない,というものではありません。そして,GTDとPoICは対照的な考え方ではありますが,決して対立するものではなく,むしろ両方の良い点を自分なりに取り込み,相補完的に連携することによって,さらに創造的な仕事を成し遂げられるのだと考えています。

次回は「PoIC++~43TabsとPoIC拡張」と題して,PoICとGTDを併用する際に問題となる「GTDカード」の扱いに関して,その解消方法である「43Tabs」を説明し,PoICの拡張について書いていきたいと思います。

著者プロフィール

野ざらし亭(のざらしてい)

「Blog:野ざらし亭」亭主。他人のアイデアに相乗りする自称知的ヒッチハイカー。現在 はPoICの荷台に厄介になっている。

Blog:野ざらし亭
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