サンフランシスコで昼食を

第6回 国内外でのプレゼン技術

この記事を読むのに必要な時間:およそ 2.5 分

飽きさせない工夫をする

自分が楽しんでいれば,基本的には聴いている人もつまらないと感じることは少ないはずですが,スライドを作るうえで飽きさせないための工夫というのもいくつかあります。

高橋メソッド

技術系のカンファレンス(特に日本)ではおなじみになりつつある「高橋メソッド」は,そうした工夫のひとつといえます。1ページにたくさんの内容をブレット(箇条書き)で埋め込む旧来のスタイルでは,スライドを一見しただけで次の5分ぐらい何をしゃべるかだいたいわかってしまい,話を聴かないでノートPCで調べ物をしたり…なんて行動を引き起こしがちですね。高橋メソッドは1枚に費やす時間がだいたい10秒から15秒程なので,聴いているほうも目が離せないという感じで,ちょっとした緊張感が生まれてきます注5⁠。

また,高橋メソッドといっても「ただ字をでかくする」というやり方ではなく,ときに図や動画を入れてみたり,パロディ的な画像を差し込んだりして,インパクトを高めるというのも重要です。やはり人間というのは視覚的な効果でものごとを覚えることが多く,文字ばかりのプレゼンはいくら高橋メソッドで勢いよくやっても,あとで何にも覚えてない,なんてことになりがちです注6⁠。

ライブデモ

その意味では,ソフトウェアやサービスのプレゼンであれば「ライブデモ」を行うのが一番のインパクトということになりますが,とくにネットワークを使ってのライブデモなどは失敗するリスクも高く,いざデモを見せる,という時になって「ネットがつながらなくて…」とかで時間を食ってしまうと,聴いているほうも待ち時間でかなり盛り下がってしまいます。事前にデモした様子をScreencast注7などで動画録画しておいて,うまくいかなければそれを再生する,というバックアップを用意しておくことも有効でしょう。

注5)
その意味では,1ページをめくるスピードがあまりにも早過ぎるメソッドは聴いている人を疲れさせてしまうという点で,ちょっと考え物ですね。
注6)
注意してほしいのですが,これは決して高橋メソッドが字が大きいだけのプレゼンだ,という意味ではありません。高橋メソッドの提唱者である高橋征義さんの『でかいプレゼン 高橋メソッドの本』⁠ソフトバンククリエイティブ刊/ISBN:978-4-7973-3253-7)を読めばその本質がよくわかります。
注7)
ちなみに私は⁠Wink⁠というフリーウェア(Linux/Windows用)を使っています。URL:http://www.debugmode.com/wink/
注8)
Lawrence Lessig著/山形 浩生訳/翔泳社刊/ISBN:978-4-7981-0204-7

印象に残る英語のプレゼン法

漢字を使って文字の大きさを極限にしてインパクトを出せる日本語や中国語などの文化と違い,英語ではどんな単語もある程度の文字数を食ってしまうので,画像や写真などと併せてインパクトの強いスライドを作る人もよくみかけます。著書『コモンズ』注8で有名なLawrence Lessigがこのスタイルのプレゼンを始めたといわれています編注⁠。また,O'ReillyのOSCON 2005での,SXIPのCEOであるDick Hardtによるキーノート⁠ Identity 2.0 ⁠注9も,スライドと同期しながらしゃべる怒涛のようなプレゼンテーションだったのが印象に残っています。

編注)
OSCON 2002で行われた氏のプレゼンテーションを次のサイトで視聴できます。http://lessig.org/freeculture/
注9)
http://identity20.com/media/OSCON2005/

聴衆とのインタラクション

個人的に海外でのプレゼン経験は3,4回しかありませんが,アメリカやヨーロッパでプレゼンをしていて最も違うのは,聴いている人とのインタラクションが多く発生するということです。⁠~のサービス・ソフトウェアを使っている人?」と質問すれば多くの人が手を挙げ,またわからないところがあったり間違いを見つければどんどんツッコミを入れてきます。恥ずかしがりな日本人が多い会場ではあまりないことですが,慣れてくるとこうしたフィードバックに対応していくことにも,楽しみを見出すことができるんじゃないでしょうか。あまりフィードバックを気にし過ぎると,脱線して時間をオーバーしたりなんてことにもなりがちですが…。

おわりに

1年にわたりお付き合いいただいた連載も最後になります。サンフランシスコから書いた原稿が6回のうち2回しかなく,タイトルと中身が一致していなかった感はありますが,外資系ソフトウェア企業ではたらくおもしろさや,オープンソースソフトウェアにコミットする楽しみなどが伝わっていたらうれしいです。

著者プロフィール

宮川達彦(みやがわたつひこ)

1977神奈川県生まれ。東京大学理学部卒業後,2000年に(株)オン・ザ・エッヂ(現(株)ライブドア)入社,執行役員Chief Technology Architectとして開発などに携わる。2005年よりシックスアパート(株)に入社,現在は米Six Apart, Ltd.に勤務。ニュースコンテンツの再配信サービス「Bulknews」やフィードアグリゲータ「Plagger」の作者であり,日本を代表するPerlハッカーの一人。カンファレンスでの発表だけでなくイベントも数多く運営するなど,精力的に活動している。個人ブログはhttp://blog.bulknews.net/mt/など。