サンフランシスコで昼食を
第14回[最終回] Shall we have a Hackathon?
2008年4月3日
初出:WEB+DB PRESS Vol.43(2008年2月23日発売)
寒い日にはHackathonでも
サンフランシスコも寒い日が続いています。こう寒いと,「どこかあったかいところでHackathonでもしようか」なんていう会話を知り合いとIRCやIMでしています。寒いところでコードを書くというのもあまり楽しくないですからね(快晴の日に部屋に閉じこもってラップトップをいじっているのも不健康な気もしますが,気にしないことにして)。というわけで,今回はHackathonについてのお話を少し。
OpenID Hackathon
1月にSix Apartの本社オフィスで,OpenID Dev Campが開催されました。これはBar Camp(注1)の一環として行われましたが,形態としては討論の場というよりHackathonに近く,Google,MySpace,Plaxo,Hi-5といったOpenID関係のデベロッパやサードパーティの関係者が集まり,コードを書いたり,メーリングリストやIRCなどのオンラインだけでは難しい,つっこんだ議論などが行われていたようです。
ソフトウェアエンジニアやオープンソースのデベロッパといえば,ヘッドフォンで音楽を聴きながら隣の席の人とでもIMで会話,みたいなイメージがあるかもしれませんが(実際に1日の大部分の会話はそれで済んでしまったり,相手のリズムの妨げにならないというメリットもあります),口頭で会話したりホワイトボードにいろいろと書きながら問題を解決していくプロセスが非常に有効であることは間違いありませんし,もちろんソーシャルな交流という面でもこうしたイベントが役に立っています。
- 注1)
- O'Reilly Mediaが開催している招待制のFoo Campに対抗した,誰でも参加できるデベロッパキャンプ。
「TUIT」足りてる?
HackathonはよくYAPC(注2)などのカンファレンス前後に行われます。東京に人材が集中していていつでも会える日本と違い,各都市/各国に開発者が散らばっているUSやヨーロッパなどでは,プロジェクトの開発者・コミッタが一堂に会するということはなかなかないので,こういう機会には数日確保し,各自溜めこんでいたタスクを集中して片付けるというのは非常に効率のよいやり方だと思います。
オープンソースの世界では“TUIT”という言葉があります。これは“I'll do it when I get around to it(時間がとれたらやるよ)”を“when I get a round tuit(丸いtuitが手に入ったら)”と言い換えたダジャレで,「それはずっとやりたいと思ってたんだけど,TUITが足りないんだよね!」という風に『ちょっとしたプロジェクトに取りかかるためのモチベーション・時間的制約』といった意味で使われています(注3)。皆が集まったHackathonでは『TUITが非常に充実した』状態なので,1人ではなかなかできないものにやっと手を付けられるという効果があります。なお,5月に東京で開催されるYAPC::Asia 2008でもカンファレンス後にはHackathonが予定されているので,今から楽しみです。
- 注2)
- Yet Another Perl Conference:http://www.yapc.org
- 注3)
- TUITが手に入るかも?:http://www.myrtlewoodgallery.com/get_a_round_tuit.htm
Hackathonの産物を実際にリリース
Six Apartでは,昨年の秋から毎週水曜をHackathon Dayとし,どのエンジニアも好きなコードを書くことができる制度を導入しています。業務で忙しい場合は,会議などに邪魔されない日として利用できますが,半数以上のエンジニアがラップトップを大会議室に持ち込み,黙々と,ときにはアイデアを交換しあいながらハックしています。その日の終わりにはHackathonに参加していない社員も集めて成果をデモし,投票で多くの票を集めた人は,金曜日に行われる全社ミーティングで発表することができます。中でもプロダクトに関連するハックで好評を集めた機能はそのまま実際のプロダクトにリリースされることもあり,最近Voxで実装された写真の回転機能や,Movable TypeのAction Stream機能などは,ここから生まれました。
また,「とくに動作に問題はない」というバグは誰も手をつけず溜まりがちですが,こうしたバグをHackathonのように会議室にこもって黙々と消化していく「Bugathon」もプロジェクトによっては開催されています。
おわりに
本連載は,今回で一区切りということになります。楽しんでいただけたかわかりませんが,外資系企業でのエンジニアリングから始まって,実際に連載中に本社に転勤などもあり,いろんなネタが書けたかなと思っています。また誌面やブログでお会いするのを楽しみにしています。

