エンジニアのためのSoulHacks

SoulHack #1 仕事の枠組みと中身のギャップを前提として働こう

2008年5月15日

この記事を読むのに必要な時間:およそ 3 分

仕事と組織のギャップ,仕事と意識のギャップ

このように,仕事の性質は全く変化しているのですが,組織や働き方,それに関する人々の意識は,あまり変化していません。

たとえば,同じ時間に出社して,毎日同じ時間割で休みや昼食を取る,というのは,大量生産における工場労働の為に作られたルールです。規則正しい時間の枠組みの中でみんな揃って仕事をするという仕事のスタイルは,深く我々の中に習慣として根付いていいます。

「知識労働」においては,ミーティングやコミュニケーションは重要ですが,仕事をする時間をピッタリ合わせる必要はありません。チーム内で時間帯や休日をずらして仕事をした方が,リレー方式で判断の結果を回せるので,むしろ効率的なケースもあるでしょう。

そもそも,⁠管理職が部下を管理する」という考え方には,管理職に情報を集め判断を集中させ,部下が指示通りの作業に集中するという前提があります。つまり,一般的な企業で見られる階層的な組織や役職という発想は,一時代前に作られたものなのです。

仕事の中身と仕事の枠組みを,それぞれ,マスオさんと自分とで比較してみれば,なんとなく中身は変わっているのに,枠組みは変わってない感じがすると思います。

仕事の枠組みと全然合致してない仕事をしているのですから,マスオさんのようにスッキリと勤務時間を終えることができないも当然です。

かと言って,そういう常識を全部崩してしまえば安心して働けるかと言えば,そうとも言えないでしょう。

仕事の枠組みとは,多くの人にとって毎日の生活そのものの枠組みでもあります。それが全てではないにしても,時間的にも質的にも過半数を占める重要なものです。仕事の枠組みを根本から変えたら,仕事はやりやすくなるかもしれませんが,生活の枠組みが変わってしまいます。

時代劇を見るように,今は存在していない過去の風習の中に生きる人として,マスオさんを見ることができるようになるのは,まだまだ先のことでしょう。

組織や役職や勤務時間のような仕事の枠組みは,まだ我々の中に根深く残っています。これが無くなって全く違うものになってしまったら,それはそれで落ち着いて仕事をすることができません。

だから,これは根本的な矛盾であり,ちょっとやそっとでは解決できない問題なのです。

SoulHack #1 仕事の枠組みと中身のギャップを前提として働くこと

最初のSoulHackは,このギャップに意識的であることです。このギャップが簡単には解決できるものではないし,自分や上司や会社のせい(ばかり)ではないことを,きちんと意識して働くことです。

GTDをはじめとする,多くの仕事術やLifeHacksは,このギャップを調整するためにあるものだと思います。

調整してギャップが無くなると思ってしまうのは,過剰な期待であり,最終的には無理をしたり失望してしまうことになります。ギャップは無くならないけど,その調整をするための道具は必要であるという認識が,LifeHacksの前提としてまずあるべきだと私は考えます。

特にGTDは,仕事のみを扱う「仕事術」としてはあまり意味がありません。仕事とプライベートの両方にまたがるタスクを全て扱ってこそ意味があると思います。

それはどういうことかと言えば,仕事の中身が「知識労働」へと変質したことで,仕事の枠組みと同時に「プライベート」がゆらいでいるのです。もし,プライベートが「仕事でない時間」⁠仕事でない領域」として定義されていたら,仕事の枠組みがゆらぐのと一緒に,⁠プライベート」をきちんと守ることも難しくなってしまいます。時間としてもそうだし,頭の使い方,エネルギーのかけ方としてもそうです。

「プライベートが不可避的に侵食されている」という現状認識があれば,GTDが,仕事をプライベートを同時に扱うことの意味がよくわかってきます。

ギャップに意識的であれば,仕事術や各種のツールを有効に活用できる可能性が大きくなると思います。

このような意味で,LifeHacksの前提となり,それを補助するようなノウハウについて,これから連載していきます。

次回は,この「ギャップを調整する為のツール」という観点で,SoulHacks流のGTD論をお届けしたいと思います。

著者プロフィール

中島拓(なかじまたく)

株式会社ブレーン研究部にて,Windows用ソフトウエアルーター 「PROXY-2000シリーズ」を開発する。 オープンソースソフトウエアとしては,Ruby用HTMLテンプレートエンジン Amrita/Amrita2,個人用GTD支援ソフト「レビュアブルマインド」の開発に携わる。

アンカテのブロガーとして,2006年アルファブロガーに選出される。

URLhttp://d.hatena.ne.jp/essa/

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