エンジニアのためのSoulHacks

SoulHack #2 GTDで仕事を自分の「テイスト」に染めてしまおう

2008年6月16日

この記事を読むのに必要な時間:およそ 4.5 分

世の中は柔らかくつながりやすくなっている

ここまでの話を読んでこう思う人も多いと思います。

「言いたいことはわかるけど,仕事で毎日遅くまでプログラム書いて,その上,別の言語を勉強するなんてしんどいなあ。仕事につながるようなネタはプライベートの中にそうそう見つかるものじゃないし,あったとしたらそれはやっぱり仕事の一部じゃないの」

確かに,こういうことをある程度具体的なストーリーとして語れるのは,オープンソースのプロダクトが中心となって動いているような,ソフトウェア開発の中でも狭い特定の領域だけかもしれません。

しかし,トレンドとしては世の中全体がそういう方向に向かっていると私は思います。

ここで考えてほしいのは,⁠自分が関わっている組織や仕事のプロセスが固くなっているか柔くなっているか」ということです。自分の回りを見て,これからマスオさんのような生き方がしやすくなっているか,より難しくなっていくか,その動きの方向性を見てほしいと思います。

大半の企業,組織にとっての環境は,グローバル化,ネットワーク化が進展することで,より多くの相互作用が生まれ,柔くなっているのではないでしょうか。分野的,ジャンル的に,よりかけ離れた所から協力者も出てくるし競合相手も出てくる,見渡すべき範囲が広がっているのではないでしょうか。

「自分の忙しさは世の中がつながりやすくなっている所から生まれている。そして,その傾向は日々進んでいる」

そう思うのであれば,今まで全くつながりが無かった自分の仕事と自分のプライベートの間に,何か別のものを介してつながる可能性が無いか,もう一度見直してみた方がいいと思います。

今はそうではなくても,トレンドとして,そういう方向に変化しているのが感じられるとしたら,GTDを試してみる価値があります。

あるいは,仕事上発生するさまざまな選択肢のバリエーションが,極端に広がっているということはないでしょうか。自分を排除して客観的に物事を決定しようとすることが非常に難しくなっていて,そこが忙しさにつながっていることは無いでしょうか。

そうであれば,むしろ積極的に,自分の「テイスト」とか「直感」とかを仕事に持ちこむということも検討してみるべきです。それをシステマティックに行う為のツールとして,GTDをとらえることもできます。

GTDによる「攻め」「守り」

GTDには「レビュー」というフェーズがあります。今回お話しているような観点からは,これが最も重要なフェーズです。

「レビュー」とは,定期的に消化したToDoと残っているToDoを見直して,リストを整備していくことです。それをGTDの手順に添って行っていくことが,自然と自分の生活全体のバランスとつながりを見直すことにつながります。⁠攻め」「守り」の両面で,それを意識的に行うことが非常に有効だと私は考えます。

GTDは仕事とプライベートを含めた自分の生活全般をモニターするものです。両者のバランスを考えるきっかけにもなるし,両者のつながりを見つけていく場にもなります。

プライベートを守るという意味では,⁠自分のプライベートが仕事にどれだけ侵食されているか」をチェックする為ために使うことができます。仕事が不定形でどうしてもプライベートにハミ出してくる時に,それによって,プライベートの何がどれだけ犠牲になっているか。それが,GTDのさまざまなフェーズで見えてきます。

結果として,ある程度プライベートが犠牲になるのは仕方ないとしても,それをなし崩し的に行なうのではなく,意図的な決断として行うべきです。それがあれば,⁠ここだけは守るべきだ。これはNOと言うべきだ」というタイミングが自然と見えてきます。

また,攻める意味では,GTDは「自分のテイストで自分の仕事を染める」為の作戦基地になります。仕事の周辺にあって仕事ではないものを,どう確保していくか。どこを糸口にして,そのことを仕事に持ち込んでいくか。

そして,その「攻め」の為には,Aさんにとっての「プログラミング言語の勉強会」のような,仕事でもプライベートでもない,中間領域が重要な起点になります。

このような「中間領域」は,知識労働者にとっては仕事の性質上ほとんど必然的に発生するものです。もっと仕事に近い場合もあるし,仕事との関係が薄いものもあるでしょう。それは家族や友人たちと過ごす時間とはまた別のものであるし,当然,仕事とも別の時間です。だから,⁠中間領域」を仕事やプライベートの代わりにするわけにはいきません。重要ではあるけど千差万別で,関わり方が難しいものです。

そういう中で,ここで自分が何を犠牲として何を得ているか,それがGTDによって日々のToDoを管理している中に,自然と見えてきます。それが,GTDを実践する最も大きい意味ではないかと私は考えています。

「自分が何をやっているか意識的に把握し目的に照らして得失を考える」領域であるけど,同時に楽しみの為の領域でもある,そういう領域に対してどう対応したらよいか,そういう知恵がこれまで無かったのです。そして個人の人生の中で,そういう領域の意味が重要なものになっている,そういう状況の変化に対応する為のツールとして,GTDが生まれ,受け入れられているのではないでしょうか。

ということで,SoulHack #2は「GTDで仕事を自分の「テイスト」に染めてしまおう」です。仕事でもプライベートでもない中間領域を意識的に広げて,そこから仕事の領域に「攻め」に出る,その為のツールとしてGTDを活用しようということです。

著者プロフィール

中島拓(なかじまたく)

株式会社ブレーン研究部にて,Windows用ソフトウエアルーター 「PROXY-2000シリーズ」を開発する。 オープンソースソフトウエアとしては,Ruby用HTMLテンプレートエンジン Amrita/Amrita2,個人用GTD支援ソフト「レビュアブルマインド」の開発に携わる。

アンカテのブロガーとして,2006年アルファブロガーに選出される。

URLhttp://d.hatena.ne.jp/essa/

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