エンジニアのためのSoulHacks

SoulHack #10 仕事の中にある「空気」を意識しよう

2009年2月16日

この記事を読むのに必要な時間:およそ 4 分

止められない「空気」という問題

日本の社会や企業活動を構成するルールが他の国と違うこと,それ自体は問題ではありません。⁠空気」ベースの社会にも,言語あるいはロジックベースの社会にも,それぞれ長所と短所があります。

しかし,⁠空気」の問題点は,自分自身でそれを把握することが難しいことでしょう。⁠言挙げ」を嫌う「空気」は,掴もうとしても,まさに空気のように手をすり抜けていってしまいます。

かっちりと把握できない為に,一時的にでもそれを停止すべき時に作用を止めることができないということが,⁠空気」の一番大きな問題点です。

これからの経済において,⁠空気」の存在が問題,障害となるケースは増えてくると思います。

  • 顧客やパートナーとして,外国の人と接する機会が増える
  • 世の中の動きが加速している分だけ,素早くラディカルな意思決定が必要なケースが増える
  • 世代間のギャップが大きくなり,⁠空気」の前提となる暗黙の共通認識が得られなくなる

また,情報がベースになった経済においては,価値は差異の中にあります。⁠空気」の同調圧力に合わせて,自分の気配を消すことは,自分の価値をゼロにすることになってしまいます。

こういった問題は,これまでは,外国の人と直接接する人や外国で仕事をする人だけが意識すればよかったことでした。しかし,これからは外国人と関係無く,普通の日常的な仕事をする中で,⁠空気」を意識し,時にその作用から意識的に逃れることが必要になるのではないかと思います。

SoulHack #10 仕事の中にある「空気」を意識しよう

ということで,今回のSoulhackは,⁠仕事の中にある「空気」を意識しよう」です。

この問題は,個人が取り組むには大き過ぎる問題です。とりあえず,上記のリストから,興味を引かれたものを数冊でも読むことは,ぜひお勧めしますが,それによって明確に指針が得られるような問題ではありません。

しかし,問題の存在に全く気がついてないのと,漠然とでも意識しているのでは相当違います。まず,日本の社会には言語化されないルール,言語化され得ないルールがまだまだ数多く存在することを知ることが重要だと思います。また,自分が無意識のまま,それに従って動いていることも意識する必要があるでしょう。

これは,特に,⁠空気」の読めない機械を相手にするエンジニアの方には必須のことでしょう。

日経コンピュータの人気連載で「動かないコンピュータ」という特集があります。ここに出てくるトラブルの多くが,コンピュータが「空気」を読めないことから発生しているように私には思えます。

本番稼動を遅らせることができない理由が,ビジネス上の理由であるならば,強行することのリスクと遅延させることのコストの対比で解決できます。しかし,それが,どうしても遅らせてはならないという「空気」であるとしたら,そういう計算を度外視した決断が成されてしまいます。

組織として,間違った決断を反省し原因を分析することができるケースは「空気」とは関係ない単なる判断ミスです。失敗した時に,その経験が,触ってはいけない事項になってしまうとしたら,それは「空気」の問題です。それを避ける為に必要な情報や過去の事例があるのに,どうしても失敗の方向に組織が突き進んでしまうようなケースは,⁠空気」が根本原因である可能性が高いと思います。

コンピュータが絡まない決断であれば,関係者一同が,その「空気」を認識することで,日本の企業はそれに従って動くことができるのかもしれませんが,機械であるコンピュータには「空気」を読むことができません。その結果,⁠動かないコンピュータ」が生まれ,間に立った技術者が苦労するハメになるのです。

逆に言えば,⁠空気」が自分たちの置かれた環境に対して正しい判断の妨げとなった時,そのギャップは最初に,コンピュータシステムの問題として表れてきます。人間系とソフトウェアのギャップは普遍的な問題かもしれませんが,そこに注目することで,可視化しにくい「空気」に気づくチャンスを与えられているのがエンジニアであるとも言えます。

そういう意味では,エンジニアこそが,⁠空気」を誰よりも早く認識し,いち早く対策を立てなくてはいけない人なのかもしれません。

著者プロフィール

中島拓(なかじまたく)

株式会社ブレーン研究部にて,Windows用ソフトウエアルーター 「PROXY-2000シリーズ」を開発する。 オープンソースソフトウエアとしては,Ruby用HTMLテンプレートエンジン Amrita/Amrita2,個人用GTD支援ソフト「レビュアブルマインド」の開発に携わる。

アンカテのブロガーとして,2006年アルファブロガーに選出される。

URLhttp://d.hatena.ne.jp/essa/

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