携帯電話研究家イケハタさんのスマホ業界つれづれ話

第1回日本ICTの粋を集めた"おもてなし"――旅行者にスマホの無料配布を

新たなる東京オリンピックに向けて

はじめまして! 携帯電話研究家の池端です。今回からこのコラムを担当させていただきます。

モバイル業界周りの気になる動きから、お気に入りの端末話まで、⁠そこはかとなく」書いていこうと思っています。どうぞ、よろしくお願いします。

きたる2020年、東京オリンピックの開催に向けて、国内経済に活気を取り戻そうと政府・産業界が盛り上げに躍起になっています。

会場建設や幹線道路整備などを受注するであろう土木・建設業界はもちろんのこと、オリンピック開催の年までの観光客増加を見込んで、東京駅周辺では次々と新しいホテルがオープンしているというニュースを新年度の始まりに聞いたりもしました。

昭和の頃の高度経済成長とオリンピック景気のリバイバルヒットに皆さん乗っかりたいのでしょうね。もちろん、私もです!

ということで(便乗の感は否めませんが…⁠⁠、2020年に向けて、海外からの旅行者にスムーズに日本での観光や滞在を楽しんでもらうため、ひいては日本国内にスマートにお金(外貨)を落としてもらうべく、日本のICT(情報通信技術)の粋を結集した「おもてなし」施策を、私も考えてみました。

それが「旅行者向け無料端末レンタル」です。

おもてなし無料レンタル端末のしくみ

無料レンタルのしくみはこんな感じです。

  • ① レンタルする端末はNFC(近距離無線通信技術)とQi(無線給電)搭載のスマートフォンかWi-Fiルータを選べる

  • ② MVNOのSIMカードを実装し、一定容量以上のパケットを使う場合は課金チャージをするか、使い放題プランが選べる

  • ③ レンタル端末でネットに接続すると、各種アプリやサイトを統合&連携した旅行者用のポータルコンテンツが起動する

  • ④ コンテンツから滞在地域のホテルの宿泊やレストラン予約、タクシーの配車等ができ、観光スポット情報を引き出せる

  • ⑤ これらのサービス利用者だけが受けられる各種割引サービス(ネットクーポン)を端末に付与する。それらはスマホだけで予約から決済、チェックインやチェックアウトもできる店舗や施設などに優先的に誘導するようにする

  • ⑥ 音声翻訳アプリも入っている

スマホを使った効果

このサービスのポイントは、無料レンタルしたスマホが1台あれば、ガイドブック不要で過ごせること。

旅行者がそれぞれの滞在スタイルに応じたサービスを受けやすくなる「ナビ」として、スマホとネットサービスをどんどん活用してもらおうという意図があります。

レンタルを無料化するためには、旅行者が日本滞在中に使うすべての費用をこのスマホにひもづけておきます。つまり、スマホで利用した各サービス料金からアフィリエイトでキックバックが入る収益モデルを用意しておくのです。

私は経済学者ではないので、とても大雑把な試算ですが、国産端末の定価が5万から10万円くらいで、旅行者が1週間ほど利用すれば、無料貸与でも十分に本体価格を回収できるはずです。

バッテリーの充電はワイアレスでコンビニやファミレスでできます。日本語が苦手な旅行者や、外国語が苦手な日本人相手でも、音声翻訳アプリやデバイスの補助があればショッピングや会話を楽しむことができます。

これらは技術的にほぼできあがっていますし、上記のすべての要素を1台のスマホに実装することも十分に可能です。

また、旅行者だけが受益者ではありません。コンテンツ産業や通信サービス業、スマートペイ関連業などにも経済効果が及ぶはずです。

東京をまるごと便利に!

このような話しをすると、近未来の予想や空想のように思う人もいるかもしれません。

しかし、一部はすでに実用化されています。外国人旅行者専用の無料Wi-Fiサービスは、駅や電車内などエリアは限定されるものの、東急電鉄や京急電鉄などで実施されています。

今回は旅行者向けという枠組みで考えましたが、これが東京23区全域で常時使えるサービスへと進化したら、1台のスマホさえあれば、東京はお財布要らずで生活できる街になるかもしれません。

このコラムでは、こんな風に、モバイル周辺の最新のトレンド情報なども絡めつつ書きつづっていけたらいいなと思います。次回は、2014年のモバイルトレンド「MVNO」について語ります。

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