タイム・マネジメントの心得 ~あなたを多忙から開放する10の方法~

第3回 見えない“時間どろぼう”を探す

2008年7月15日

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工場の時間管理に学ぶ

この話のポイントは何でしょうか? それは,"実行可能な約束をして,それを守る"ということです。営業や資材担当が一番困るのは,⁠確約なしに)⁠頑張ります」という答えが返ってくることです。この部長さんのやり方は,こうした心配やイライラや問合せを減らしました。そして,じつは問合せ・調整・回答の連絡に,膨大な時間が空費されていたのです。

もう一つのポイントは,急な割込みを無くしたことです。急な予定変更がなくなれば,無駄な段取り替えがなくなります。目の前の作業に集中できるため,現場の効率は30%もアップしました。割込みを避け,モノの流れをつくることは,仮置きや探し物をなくす効果もありました。モノ探しは時間の浪費です。必要な順番で物が流れてくれば,入出庫も所在管理の手間も不要になります。

そして,第3のポイントは,ただ一つの司令塔(計画)の元で動く,ということです。考えてみてください。もしも空港に管制塔が3つあったら,どの飛行機も離着陸できないことになりませんか?

つまり,この部長さんは,工場の中で目に見えぬまま作業時間を奪っていた「特急割り込みの調整作業」⁠段取り替え」⁠モノ探し」というムダを追い出し,働く人が目の前の仕事に集中できるような環境を作り出しました。その道具として,ただ一つの計画(司令塔)を正として,ぶれないように守ったのです。

“時間どろぼう”をつきとめる

童話作家ミヒャエル・エンデの名作「モモ」によると,現代人が忙しいのは,⁠時間どろぼう⁠がみんなのゆとりの時間を盗んでいってしまうから,だそうです。時間どろぼうを退治してくれる魔法の主人公がいない我々の現実世界では,自分で浪費を退治するしかありません。上で紹介した生産管理部長の例では,割り込み調整作業・段取り替え・モノ探しの3つが⁠時間どろぼう⁠だったわけです。

特急割り込みへの対応も,部品探しも「仕事時間」であって,決して遊んでいるわけではない,と私たち会社員は考えがちです。しかしこれらは本来,製品の付加価値を上げるためには何の貢献もしていない時間なのです。こうした時間どろぼうを捜し出して突き止め,退治するためには,私たち自身の頭の中を切りかえてみる必要があります。これが,私のいう「タイム・マネジメントの心得」なのです。

M・エンデの名作童話「モモ」(岩波書店・刊)

ためしに,皆さんも自分の毎日の仕事における⁠時間どろぼう⁠が何か,考えてみてください。会議の時間ですか? あるいは書類探しの時間ですか? それとも移動の時間? あらたまって考えてみると,いつもは「仕方ないこと」⁠必要作業」と思われていたことが,いかに自分の仕事の付加価値に無関係なことか,気がつかれるでしょう。

念のために言っておきますが,私は時間的なゆとりを一切切り捨てろ,と主張しているのではありません。意図して持つ「ゆとりの時間⁠⁠,たとえば休憩時間は浪費ではありません。浪費とは目的に合致しない使い方のことです。それを見つけ出すために,⁠計画』というものの重要性が浮かび上がってくるのです。

著者プロフィール

佐藤知一(さとうともいち)

プロジェクト・アナリスト。エンジニアリング会社に勤務し,国内外の製造業向けの工場設計および生産システムづくりに従事するかたわら,執筆・講演活動などを行っている。専門はプロジェクトマネジメント・スケジューリング・生産計画・リスク分析など。海外におけるプロジェクト事情にも詳しい。

URLhttp://www2.odn.ne.jp/scheduling/

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