タイム・マネジメントの心得 ~あなたを多忙から開放する10の方法~

第6回 超入門,タイム・マネジメント理論

2008年10月15日

この記事を読むのに必要な時間:およそ 2 分

タイム・マネジメントの基礎概念・その2 タスク/イベント/プロジェクト

タイム・マネジメントにおいて,着完日時とならぶ重要な概念が「タスク」⁠イベント」⁠アクティビティ」そして「プロジェクト」です。この4つは多義語で,分野・業種によっていろいろな意味で使われていますが,本シリーズでは次の意味で用います。

「タスク」とは,納期と,完了すべき条件(=たいていは納品物)のある仕事のことです。すなわちTo Doリストに書き込む個々の『To Do』とは,タスクそのものです。ちなみにタスクには「課業」という立派な日本訳語が学術の世界で定められていますが,実際にはほとんど使われているのをみたことがありません。むしろ「任務」とする方が,ずっと理解しやすいと思われます。

これに対して「アクティビティ」とは,始まりと終わりの日時が明確にきまった出来事を指します。たとえば正月に2泊3日で帰省する,というのはアクティビティですね。

タスクとアクティビティの違いは何でしょうか。それは開始・終了の日時が固定されているかどうかです。タスクは,完了条件を満たして納品物をおさめない限り,勝手に早く終わらせることはできません。一方,アクティビティは時間枠の決まった行事で,自分の状況や都合だけでは動かせません。アクティビティには,具体的な完了条件がないことに注意してください。たとえば,毎週定例のミーティングは,タスクではなくアクティビティです。アクティビティには定期的な繰り返しのあるものも少なくありません。

「イベント」というのは,ある時間的長さをもつタスクが,何かの状態にたどりつく瞬間を意味します。たとえば,富士登山で5合目にたどりつく,といったことです。イベントの中でも重要な意義をもつものは,<マイルストーン>(里程標)とよばれます。マイルストーンは,プロジェクト・スケジューリングで大事な役割をはたすので覚えておいてください。

タスクやアクティビティは始まりと終わりがあって長さをもちますが,イベントとマイルストーンは瞬間であって時間的長さがありません。卒業式はアクティビティですが,卒業はマイルストーンです。卒業は学習という長いタスクの中の,重要な達成点を示すのですから。

最後は「プロジェクト」ですが,これは実はタスクの集合体です。プロジェクト自体が,ふつうは納期と完了条件をもっています。つまり,プロジェクトとタスクは相似形なのです。違いはどこにあるかというならば,プロジェクトは複数の人間の協力で進める仕事ですが,タスクは個人でやる場合もあることでしょう。

なお,プロジェクト・マネジメント理論の世界では,上記タスクのことをアクティビティと呼ぶ場合があるのでご注意ください。たとえば,プロジェクトマネジメント協会(PMI)の制定した標準ガイド「PMBOK Guide®」などがそうです。そこでは,タスクとは日常的な細かなTo Doのことを指しています。こうした用語定義はそれぞれの伝統によって決まりますが,本シリーズでは少なくとも一貫して上記の呼び名でよぶことにいたします。

フォワード・スケジューリングとバックワード・スケジューリング

さて,いよいよタイム・マネジメントの中心的な技法に話を進めましょう。仕事の着手日を決める二つのスケジューリング方法についてです。

スケジュール計画を立案するとき,ふつう,最早着手日=ESは本日にとります(今日はまだ着手できない,というような特段の事情がない限り⁠⁠。そして,タスクに必要な期間日数をもとに,いつ完了できるかを計算し,これを最早完了日=EFとします。今日が月曜日の朝で,作業の所要日数が3日ならば,最早完了日は水曜日いっぱいです。このように,本日を起点にして,すぐに着手して早く終わらせるような計画の立案を,フォワード・スケジューリングといいます。フォワードは最早着手日から最早完了日を決めていく,足し算の論理です。

これに対して,納期日を最遅完了日=LFにとって,そこから逆算して着手日を決めるような計画の立案を,バックワード・スケジューリングといいます。バックワードとは,引き算の論理であり,最遅完了日から最遅着手日=LSを決めます。

2種類のスケジューリング手法

2種類のスケジューリング手法

この二つの手法は,どちらかが優れてどちらかが劣っている,という事はありません。目的に応じて,両方の考え方が使い分けられるようするべきです。ただし一般に,スケジュールを組むのがへたな人は,決まって日程を足し算で考える傾向があります。これに対して,時間管理の上手な人は,ふつうは引き算で考える習慣をもっていることを覚えておいてください。あのトヨタ生産方式の「ジャスト・イン・タイム」は,まさにバックワード・スケジューリングの考え方に立脚しています。

ただしバックワード・スケジューリングでは,うっかり途中で仕事をミスしたり,あるいは(自分のせいではないのに)外部から仕事の邪魔が入って,予定より作業時間が長くかかってしまったら,すぐに納期遅れにつながる可能性があります。ですから,トヨタでさえ最小限の仕掛り在庫はもっており,それをバッファー(緩衝)として,スケジュールを急な割込みや変動から守っています。

これをオフィスワークの仕事に置き換えて言えば,最遅着手日よりも,最小限の余裕日数分だけは前倒しにして,着手日を決めるべし,ということになるわけです。

著者プロフィール

佐藤知一(さとうともいち)

プロジェクト・アナリスト。エンジニアリング会社に勤務し,国内外の製造業向けの工場設計および生産システムづくりに従事するかたわら,執筆・講演活動などを行っている。専門はプロジェクトマネジメント・スケジューリング・生産計画・リスク分析など。海外におけるプロジェクト事情にも詳しい。

URLhttp://www2.odn.ne.jp/scheduling/

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