「あァー!書けないっ!」と悩まなくなるための文章術

第1回なぜか文章が書けない5つのパターン

あなたはどうして文章を書けないのでしょうか?

「文章を書くのは苦手……」
「書こうとしても、時間がかかって……」

そういう方に「どうして文章が書けないんですか?」と尋ねると、さまざまな答えが返ってきます。

「書けないものは書けない」
「何を書いていいのかわからない」
「書き出しがイメージできない」
「カッコいい言葉が出ない」

などなど。でも、それは本当でしょうか?

本人の認識としてはさまざまな答えがあるのはわかります。とはいうものの、私がライター/編集者を27年あまりも経験してきたなかでお付き合いさせていただいた人たち=資料となる下書きをいただく一般企業の方々や、編集部に配属になったばかりの新人クン、記事の執筆があまり得意ではない編集者サンなどが、原稿を書こうとして悩んでいるのを見ていると、実際はそれほど複雑でも多様でもないようです。

「書けない理由」は5つに分類できる

経験的なものですが、⁠文章が書けない理由」は5つのパターンに集約できると考えています。

1. 短すぎ

必要なことの骨格だけをアッサリとまとめて書いてしまって、要求されている文字数にまったく届かない。大筋でまちがってはいないのですが、肉付けが不足し、内容も薄いのが特徴です。

もっと裏付けや具体例を足して、説得力を増したいところですが、本人はあまり興味はないというか、⁠どのネタをどう使うかなど考えたくない、面倒だ」という感じ。

2. 書きすぎ

いつも文字量が大きくオーバーして、削るのに四苦八苦。しかし、削りに削って仕上げてみると、必要なことまで削ってしまって、肝心なことが説明し切れていなかったり。書きたいことがいっぱいあって、絞れないのです。

なので、書いておかなくてはならないことを削ってまでも、残したいものが出てきてしまう。心を鬼にして削るべきはどこなのか、その見切りができないのです。

3. 書き出しが迷走

取りかかれば早いのに、その前の段階で「何から書き出すのか?」が決められないため、最初に悩んでいる時間があまりにも長い。⁠何を書いていいのかわからない」という人も、内容ではなく、多くがこの「書き出しが決められない」タイプです。

結果、時間切れでアタフタと書くことになります。書く内容の要素について、重要度や関連性の整理がついていないことが多いようです。

うまくいくのは、たまたま書き出しがひらめいた場合や、書くことが1つしかなかった場合だけ。⁠ひらめけば早いんだよ!」が口癖です。

4.書き直しが多い

いきなり書き始めることができるし、執筆速度も速い。……のですが、何度書いても納得がいかず、締め切りの日まで、書き直しを繰り返します。文章全体も、どことなく薄い印象が……。

何本も原稿を書いて提出し「どれか選んで」と言ってくるタイプも、亜種としてここに含まれます。

ポイントは、自分の原稿に自信が持てないこと。それはテーマの取り方や選んだ要素に、必然性、そして裏付けが感じられないからです。要素同士の関係性や重要度の整理が不十分なのです。

5. 美文を追求する

「技巧を凝らした美しい文章にしたい!」と思うものの、⁠自分にはスキルもセンスも足りない……」と思っているから、悩み続けて書けない。

上達意欲は高く評価すべきでしょう。けれども、エッセイや小説、詩集ではない、ビジネス文書にまで「格調高い歌い上げ」が必要だと思ってしまうのが問題。⁠タイトルにカッコいいキャッチフレーズを付けたい!」と悩むのも、似たようなものです。

究極の問題点はただ1つ

この5つ、よく見ると障害となっていることはたったの1つしかありません。それは「執筆前の段階で、書くべき内容が適切に絞り込めていない」です。

1番は、絞りすぎと同時に、何が必要なのかわからず、まとめて切り捨てている例。2番は、⁠本筋と関係ないものを入れたい」という想いに振り回されていますね。3番は、書くべきことをきちんと整理していけば、⁠これが話の筋としては最初に来るはず」といった各要素の役割が見えてくるはずです。4番は、各要素の重要度が見えていないために、絞りきれないから起こることです。5番目さえも、⁠足りないのは美しい文を書くセンスやスキル」ではなく「そもそも美文が必要な書類なのか?」という内容の見切りがついていないことから発生した問題です。

じつは、最近はプロライターでも、3番のように書き出し迷走で苦労することや、4番の書き直しタイプの亜種のように、複数用意する場合がよくあります。それは、書く側ではなくて依頼する側の段階で絞り込めていない、打ち合わせを重ねても絞らせてくれない、という案件が増えている結果です。

余談はさておき、これはあたりまえとも言えます。300から500文字くらいならともかく、それ以上の分量を、頭の中だけで組み立てるというのは、かなり難しいことだからです。

書き始める時点でも悩みとプレッシャーがかかりまくりますが、書いている間も

「このまま必要な文字数だけ書けるのか?」
「内容がこの文字数で収まるのか?」

という不安が押し寄せてきます。そのストレスの中で、書きたいことを把握しつつ、読みやすくまとめあげることの難しさたるや……。

では、どうしたらいいのでしょう?

拙著文章を書くのがラクになる100の技では、具体例も挙げながら、たっぷりと書いているのですが、かんたんに言えば

「執筆前に要素を書き出し、それを整理し、文章全体の構成を作ってから書き始める」

ことが大事です。

一見すると手間です。しかし、頭の中でグルグルやっているより、よほどわかりやすく、時間もかかりません。あれこれ悩む前に、まずは準備を大事にしてみてください。

そして、多くの文章には「書き方のパターン」というものがあります。それをおさえてしまえば、よりラクに文章を書きあげることができます。次回は、イベントレポートのまとめ方を例に、文章の組み立て方について解説します。

おすすめ記事

記事・ニュース一覧