「あァー!書けないっ!」と悩まなくなるための文章術

第2回イベントレポートをかんたんにまとめる方法

「書くのが一番難しいイベント」は?

「イベント」と言ってもいくつかあります。講演会、討論会、競技会、展示会・見本市。さらに、主催者だったり、参加者、出展者だったり、見る側だったりと、立場もいろいろですね。

でも、講演会や討論会はとりあえず「何が話題になったのか?」をまとめればレポートにはなります。録音テープから書き起こして要約する手もあります。

競技会なら、結果をベースに、競技で何があったのかをまとめることで形になります。対戦型なら、その実況だけで十分読み応えがあるでしょう。

主催者や出展者、参加者なら、イベント前からの経緯を報告するだけでレポートになります。

すると、レポートを書くのが一番難しいのは展示会・見本市で、それを見て回った報告書ということになるのかもしれません。

ただ、難しいと言っても、ちょっとしたコツをおさえれば、意外とかんたんにまとめられたりもします。以下、まとめ方のパターンを見ていきましょう。

総花的、カタログ的にまとめる

レポートとは「何があったのか」という事実の列挙ですから、いわゆる「カタログのようなもの」と割り切ってしまうと楽です。文字数を決めて、展示社と内容を書き出してみましょう。

文字数は、重要度に合わせて3パターンくらいあるといいですね。あとはそれをどう並べていくか、です。

見た順序で並べたり、アルファベットやあいうえお順で羅列しては、非常に読みにくく、資料価値の低いものになります。何らかのグループ分けと順序を付けてやることが必要になります。

基本的には、展示内容と、企業の知名度や規模がベースになりますが、制作する原稿の目的により、以下のようにほかの要素で分類することも必要になるかもしれません。

  • 自社との取引における親密度
  • 資本などの関係性

問題は、これをどう見せるかです。

写真に説明を付属させ、完全にカタログにしてしまうなら、このグループ分けのままでいけるでしょう。しかし、写真はわずかで、レポート本文をメインとして見せるとなると、以下のように「起承転結」のようなストーリーの流れを考えて、それに応じて順序を多少入れ替えてやらなければなりません。

「起」は、イベント概要や会場の様子。「承」は、当たりさわりのない無難な展示物から始めて徐々に盛り上げ。「転」で、奇をてらったモノや、驚きを持って迎えられたモノ。「結」は、イベントテーマにふさわしい、重厚なコンセプトを持ったモノ。

なお、写真取材では、以下の3つを押さえること。

  • ブース全体を撮った「遠景」
  • 展示の様子を撮った「中景」
  • 個別の展示物を撮った「近景」

作成する資料で全部使うかは別にして、これは写真取材の基本です。

テーマを持ってまとめる

上司などから「ただのカタログは駄目だ。テーマを持ってやれ!」のような指示が出ることもあります。

「テーマを持つ」なんて言われるとものすごく高度で難しそうですが、逆から見れば、⁠テーマ以外のものを省く」あるいは「添え物にしてしまう」ということです。そう考えると「テーマに沿ったもの以外はふるい落とされる」ので、要素の選択が非常に楽になります。

むしろ、本文形式のレポートの場合は、これが一番楽な方法です。テーマを「つなぎ」あるいは「ストーリーの方向性」にできますから、全体の構成を考える際に、起承転結、序論本論結論のような話の流れも立てやすくなります。

ただしテーマは、そのイベントの趣旨に合った「意味」を持っていること。ここを外すと、趣味で書いた「見聞録」になってしまいます。

もちろん、実際に取材に動いているときは、ほかのレポートなどがどう転ぶかわかりませんので、全体的なレポートも書けるように、資料集め/写真撮影をしておく必要はあります。

あえて細かいところでまとめる

似たようなイベントレポートが連続する。さらにその内容が類似してしまう ―― 提出するレポート単体では起きませんが、社内報や広報パンフレット類ではこんなこともあり得ます。たとえテーマを持ってまとめても、メインとなる部分にテーマを置けば、印象は変わりません。

そういうときには、変化をつける意味で、⁠細かいところを拾っていく」という方法があります。

たとえば、それぞれのブースには、会社として推したいものの影に、反響を見るための試作品があったり、ロングセラーがあったり、市販間近の製品があったりするものです。

あるいは、特定ユーザーの視点で見て回るのも興味深いものになります。メインターゲットと違う性別、年齢などはその例ですが、イベントにより、ほかにも考えられるかもしれません。

そういう情報は、行った人以外わからないので、思いのほか「役立つ情報」として高く評価されることがあります。

ただこちらも、ほかのレポートなどがどう転ぶかわかりませんので、全体的なレポート向けの取材も十分にしておくのは言うまでもありません。前者と違って、こちらは決め打ちで取材していると、⁠全体レポートで行け」という指示が出たときにリカバリがほぼ不可能なので。

サポートイベントをまとめる

イベント会場内ではサポートイベントが行われていることも多いですね。来場者が連れてきた子供相手だったり、どう見ても便乗だったりと、目的はいろいろありますが、サポートイベントも写真数カットと内容くらいは押さえておきましょう。なぜなら、全体的に寂しい内容だった場合、空きを埋める材料になるからです。

たとえば、コラムにして「こんなサポートイベントもありました」とすることができます。カタログのようなレポートなら、メイン展示と区別するために写真を丸く(あるいは角丸長方形)切り抜いて各所に散らし「こんなイベントもやっていた」とだけ説明をつけるのもいいでしょう。会場全体の雰囲気を伝える効果もあります。

もちろん、サポートイベントだけで構成するのは、イベントレポートの本来の目的、話の本質から外れてしまうので不可です。

前記4パターンから応用を考える

こう考えてくると、講演会、討論会、競技会など、ほかの形式のイベントもいろいろなまとめ方ができる、と気づくでしょう。テーマを持ったり、細かいネタを拾ったりするのは、見本市だけではありません。もちろん、主催者、登壇者だけではなく、見本市を見て回るように、観客側の視点に立ってレポートをまとめる方法も考えられます。

ひとり、あるいは2人の人物に着目するのも一案です。膨大な情報があるなどでまとめにくい話の場合は、そういった絞り込み方法も考えてみてください。スポーツのレポート番組にたとえるなら、試合展開を追う「報道」的なものではなく、中心選手の心の動きから追った「ドキュメンタリー」風といった感じでしょう。

もちろん、報告書の場合は小説ではないので、個人に関する表現を抑え、あくまでキーマンを中心に全体の組み立て=構成を考えるという形になります。

このように、まとめ方には一定のパターンがあります。拙著文章を書くのがラクになる100の技では、プレスリリース、論説やレポート、企画書、資料要約や読書感想文などの例を取り上げているので、興味があれば手にとってみてください。

そして、多くの文章には「書き方のパターン」というものがあります。それをおさえてしまえば、よりラクに文章を書きあげることができます。次回は、イベントレポートのまとめ方を例に、文章の組み立て方について解説します。

次回は、だれもが悩む、締切に間に合わせる進行のコツを解説します。

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