禅で学ぶ「エンジニア」人生の歩き方

第5回 四つの戒め

この記事を読むのに必要な時間:およそ 3 分

今回は「法演の四戒」と呼ばれるものを取り上げてみます。 トータルすると「控えめにする」という視点が,その基準になろうかと思います。

どれも,結構技術者が陥りやすいものだと思いますので,俯瞰視点で自分の行動を顧みる参考にしていただければ幸いです。

禅語「勢不可使尽」

ランク:新人 カテゴリ:職場にて

日本語で「勢い使い尽くすべからず」と書かれ,その後に「使尽禍必至(勢い使い尽くさば禍必ず至る)」と続きます。なにか「良い感じの勢いに水を差しまくる」ようなお話しなのですが……これにはどんな意味が込められているのでしょうか?

色々と困難トラブルにとらわれている時と比較して,良い感じの波に乗れる瞬間,ってのがあります。

設計しかりコーディングしかり作業しかり,そういう「きたキタ来た~~~!!」という瞬間を感じたことが一度ならずあるかと思うのですが如何でしょうか? そういう調子の良い時は色々と勢いよく進められそうなのですが……そこに,落とし穴があります。

禍(わざわい)。トラブルとかミスとか失敗とか事故とかに置き換えてもよいのですが,1つの顕現した禍の影には,29の禍の種があり,そのさらに背後には300の禍の匂いが隠れています。これをハインリッヒの法則なんて言い方もするのはちょっとした余談。

つまり。禍は,顕現する前に種とか匂いとかに気付けば,それを叩き潰していくことができるんですね。

人間面白いモノで,調子が悪い時は相応に周囲に気を払うので,案外にそういった種や匂いに気付くのですが,勢いがある時はそういった些細なことに気付かなかったり,気付いても「まぁ大丈夫だろう」と,結果的に気付かないのと大差ないことをしてしまうことがあります。

これに気付くように,という意味で「ヒヤリハット」なんて言葉もありますね。

これが,自分「だけ」に害をなす禍であれば,まだよいのですが。

例えば他人の,安全とか健康とか挙げ句には生命とか。或いは相手の心とか関係性とか。そういったものにまで禍が及ぶとしたら……それでもまだ「勢いを使い尽くして走り続けたい」と思いますか?

ある意味,調子がよい時というのは「荒れ野の誘惑」と同じ状態です。勝って兜の緒を締めよ,です。

調子がよいからこそ,勢いがあるからこそ,自らを,自らの行いを振り返り,より多くの配慮を周囲にする必要があるのではないでしょうか?

  • ちょっといい設計ができた。
  • 思ったより早くコードが組めた。品質もよかった。
  • トラブルなくインストールができた。
  • よい提案ができた。

その素敵な思いを大切にしつつ,その手柄に慢心せずに,一呼吸置いて「本当にできているか」をもう一度振り返ってみる。

その余裕の積み重ねが,本当の信頼をあなたの手元に導いてくれると思いますよ。

禅語「福不可受尽」

ランク:上級 カテゴリ:ビジネス

「福不可受尽(福受け尽くすべからず) 受尽縁必孤(福受け尽くせば縁必ず孤なり)」と続きます。

単純に見て「お金が儲かる」という福から始まり,例えば人脈,ビジネス。さらには健康,外見容姿,その他。「福」と名の付くものは多々あります。そうそう「経験」「知識」「スキル」も,同様に「福」と見なせるかと思います。

そういった様々な「福」は,独占する理由のある「ご自身だけの単独の力で勝ち得たもの」なのでしょうか?

「おかげさまで」と謙遜する言葉がありますが,この語源は「お陰様」と言います。この陰とは,あなたの見えないところであなたを助けてくれるサムシングです。

福を受ける受けない以前に,あなたがここに存在していること自体が,連綿と続くご先祖様達がいらしてくれた「お陰様」ですし,息ができるのも空気がある「お陰様」であり,五体満足に生まれ,呼吸器がちゃんと動いてくれている「お陰様」です。

ビジネス一つをとっても,そのビジネスのルートを作ってくれた先人,取引先,お客様,同僚,部下,その他諸々。決して自分1人でどうにかなるものではないと思うのですが如何でしょうか。

そうしてまた。
福をあまりにも受け尽くしてしまうと……人は,歪みはじめてしまいます。

利益のために手段を選ばなくなり,利益を独占し始め……その後に待っているのは,まさに孤立です。 部下からも同僚からも取引先からも顧客からも友人からも見放されてしまうとしたら……そこまでしてなお,福を1人で受け尽くしたいですか?

お裾分けを,御福分けともいいます。 せっかくの,お陰様で頂いた福です。喜びと一緒に,みんなで共有してみませんか?

著者プロフィール

がる

こなしている職業を語ると「……で,何屋さん?」と聞かれる,経歴が怪しいエンジニア。「知のコラボ」とか「シナジー」とかって単語で上手に糊塗してみたい。

コメント

コメントの記入