禅で学ぶ「エンジニア」人生の歩き方
第13回 磨き磨かれ
翡翠(識者に向けて:今回は硬玉をイメージしています),という石があります。
磨く前の原石は正直なところ「うんまぁみどりだねぇそれでなに?」って感じなのですが,この原石を切り出し磨き研ぐことで,素晴らしい輝きを放つ「宝石」になります。
こういった,石(に限らず,骨や象牙に対してもそうなのですが)を切り出しうち叩き,磨き研ぐことで素晴らしいものにし上げる,そこから「切磋琢磨」という言葉ができあがりました。
腕もスキルも人格もまた。そうやって「見出して切り出して磨いて研いで」素晴らしいものに仕立て上げてゆくもの,なのではないでしょうか?
今回は,磨く側磨かれる側の禅語を。「守破離」というもう一つのテーマとあわせながら,織り交ぜて紹介させていただきたいと思います。
禅語「破草鞋」
ランク:新人 カテゴリ:スキルアップ
はそうあい,と読みます。「破れた草鞋(わらじ)」という,そのまんまの意味合いです。
破れた草鞋とスキルアップ。……はてさて,いったいなんの関係があるというのでしょうか?
この禅語には,実はさまざまな見解がなされています。そのなかから筆者が大きく惹かれた見解を中心に,ここでは取り上げてみたいと思います。
藁で作る草鞋は,現代の靴と比べると耐久性はある程度悪かったようですが,そうは言いましても実用品ですので,それなりに丈夫なものではありました。
今でも営業マンの方々なんかは「靴底のすり減り方で努力を見る」なんて見方があるそうなのですが,草鞋もまたそんな感じで「すり減るまで」歩く,ということが多々ありました。昔の移動手段は徒歩が主流でしたし。
まず「破草鞋」という禅語で出てくるのがこの「草鞋が破れるまで歩き続けるがごとく,摩耗するほどにまで努力を惜しみなくしなさい」という意味合いになります。
なにがしか,ある程度まで「摩耗するほど」の努力というのは,やはりどこの業界業種においても不可欠であるように思われます。尤も「心を摩耗する」のはまったくお薦めできませんので,そのあたりはちゃんとチョイスが必要かとは思いますが。
三昧などという言葉もありますし一念岩を貫くなんて言い方もございます。
無論,鳥瞰俯瞰の視点も大切ですが,時には「何か一つに没頭する」のも,同じくらいに大切だろうと思います。
……という見解が一つあるのですが。
筆者が惹かれたのは「たとえ破れたもう履けない草鞋であろうとも,それは不要なものではないんだよ」という見地です。
実際,破れた草鞋でも昔は発酵させて肥料にもしました。竈のたき付けにもしました。ちなみに,竈のたき付けに使った後の灰(アクって言い方も多いですね)も捨てずに用いることができるあたりがエコロジーってやつです。
エコの話題はそれでそれなりに昨今にふさわしい話題だとは思うのですが,本稿からは外れますので元に戻しまして。
さて。
そも「無駄」ってなんでしょう?
「役に立たないこと」「不要なこと」という意味合いだと思うのですが,では質問です。その「無駄」は「本当に無駄」ですか? 「あなたがその使い方を知らない」から「あなたは無駄だと思っている」だけで,実は「使い方を知っている人にとっては有用」なのではないでしょうか?
「無駄」だと「不要」だと「役に立たない」と“断言”できるためには。「間違いなく,誰もどのようにしても使うことができない」と断じれることが,つまりは「森羅万象古今東西の総てを知っている」必要が,あるのではないでしょうか?
でないのであれば,せいぜいが「今の私には使い方が用い方がわからない」までしか言えないのではないでしょうか?
技術の世界でも,同じような話を少なからず耳にします。
基礎を学ぶのは,確かに割合と面倒であったり退屈であったりすることも多いかと思います。
ただ,それでもなお。基礎を「無駄だ」と断じることはできないはずなのですが……特に経験が中途半端な方に限ってある技術や知識を「無駄だ」「不要だ」と言ってしまうことが多いように見受けられます。
学ぶための方法の一つに「守破離」というものがあります。
教わる側は,教える側のいくつかをどうしても「無駄だ」「不要だ」と感じることが多いようなのですが。
一文字目にある「守」の字の通り,ある程度までは,例えそれがどれだけ理不尽であると感じようとも無駄であると感じようとも,それも含めて学んだほうがよいことが多いのです。
なぜなら,その無駄は「先人の知恵」である可能性が少なからずあるのですから。
同じように,無関係と思われがちなさまざまもまた,もしかすると有益である可能性が少なからずあります。
だから私は,仕事と同じくらいに「遊ぶこと」を大切にしています。微妙に言い訳がましいのはきっと気のせいです(笑
破草鞋
まずは草鞋が破れるまで頑張りましょう。
そうして,そこで得るさまざまを,何一つ残らず大切に使ってみませんか?


