これからのWebサイトに必要なのは「パフォーマンス」「可用性」「使いやすさ」、そしてモバイル対応─Keynote Systems, Inc.キーパーソンインタビュー

2012年6月11日、Keynote Systems, Inc.のKevin Mullen氏(以下Kevin)とMalcolm Otter氏(以下Malcolm)にインタビューする機会を得ました。同社は、Webサイトのパフォーマンスを計測して高速化のアドバイスをしたり、Webサイトの使いやすさを調査して改善点の提案などを行う企業です。

Kevin氏はWebサイトのパフォーマンスに関するソリューションを全世界で展開しています。近年は特に重要視されつつあるモバイルサイトのパフォーマンスに力を入れています。

Malcolm氏はUXテストの専門家で、コンピュータサイエンスのほか心理学者としてのバックグラウンドもあります。

本インタビューでは、Webサイトの高速化や使いやすさを中心にお話を伺いました。

Kevin Mullen氏
Kevin Mullen氏
Malcolm Otter氏
Malcolm Otter氏

Webサイトのパフォーマンス

Q:御社がWebサイトに関するアドバイスをする際に重要視している点を教えてください。

Kevin:「パフォーマンス」⁠可用性」⁠使いやすさ」です。どれも収益に直接関係しています。また、これらはコストのセーブにもつながります。Webサイトに接続できなかったり、使いづらくてユーザが目的を達成できなかったりすると、それに対応するために電話応対するなどのコストが発生します。Webサイトがこの3つを満たしていれば、結果的にコストを抑えることができるのです。

Malcolm:これらをないがしろにすると、ブランドイメージに悪影響を及ぼすというデメリットもあります。

Kevin:日本ではAmazonがこの3つを満たしています。パフォーマンスも良く、停止することもほぼなく、ユーザが迷わずに商品を購入できるようUIを最適化しています。

Q:Webサイトのパフォーマンスについて日本と海外の考え方の違いはありますか。

Kevin:日本企業のほとんどは、まだWebサイトのパフォーマンスを重要視していないのが実情です。アメリカなどではモバイルサイトによる収益が毎年2倍の規模で急速に増えているので、これからはユーザに使いやすいモバイルサイトを作るのは必須です。

モバイルサイト

Q:各社ごとに専用のアプリケーションを提供するケースもありますが、モバイルサイトとの使い分けはどのようにするのが適切なのでしょうか。

Kevin:ある程度は機能的に重複しますが、どちらも大事です。使い分けとしては、ユーザが何かを探したいときにアプリケーションをダウンロードしなければならないのは大きな障壁になります。幅広くユーザにリーチするためにモバイルサイトを持つことは必要です。

一方、モバイルサイトではできないことはアプリケーションで行う必要があります。アメリカでは小切手がよく使われますが、小切手を切ってやりとりするためにカメラで撮影する必要があるので、アプリケーションとして提供されています。

また、ユーザが使い分けているケースがあります。たとえば、eBayのユーザの場合、オークションに出品するときはスマートフォンで、買いたい出品物を探したいときはタブレットで、実際に購入するときはPCでアクセスする方が多くいます。それは、出品する際は写真を撮る必要があるためスマートフォンを使い、何か良い出品物はないかと探すのはリビングでTVを見ながらくつろぎながらタブレットを使い、落札するために入札するためには高速なPCを使うからなのです。

Q:モバイルサイトとPC向けのWebサイトを作る際に気を付けることの違いはありますでしょうか。

Kevin:モバイルサイトは回線速度が遅いことが多いので、Webページをできるだけ軽くするために要素を抑えることが重要です。また、PCからアクセスする場合とユーザの目的が違うことが多いので、ユーザがモバイルサイトに対して何を求めているのかを明確にして、それを満たす機能に特化することが重要です。

UXテスト

Q:御社が行っているUXテストの特徴を教えてください。

Malcolm:まずUXテストの概要についてお話します。UXテストは、簡潔にいうと「開発者が提供した機能を、ユーザが実際に効果的に使えているのかを調査する」ことです。従来は少人数のテスターを集めて実際に操作しているところを観察することが多かったのですが、これだとテスターの年齢、性別、デジタルリテラシーなどの属性に偏りがあり、結果にも偏りが出てしまいます。

Keynote Systems, Inc.では、UXテストを行いたいWebサイトにアクセスした人に、テストへの協力をお願いするシステムを用意しています。同意してくれた方にテスターになっていただくことで、数千、数万単位のユーザの操作を取得します。これにより、男女差、年齢差、教育の違いなどを吸収できる大きな母集団を対象に調査することが可能となり、偏りのないデータの取得を実現しています。このデータを統計的に分析することで、精度が高く有意義な分析結果を提供しています。調査の結果、ブランドイメージ、顧客満足度、コンバージョン率が20%以上向上することが多々あります。

Q:御社は世界各国でソリューションを提供していますが、使いやすいUI、直感的なUIは国ごとに違いがあるのでしょうか。

Malcolm:国や地域ごとに異なる文化、文字、教養を持ち、それによって使いやすいと感じるUIには違いがあります。重視するものにも違いがあり、たとえばたくさんのコンテンツを詰め込むスタイルが好まれる地域もあれば、可能な限りシンプルにしたUIが好まれる地域もあります。

Kevin:パフォーマンスに対する意識も異なります。たとえばモバイルについては、アメリカでは表示するまでに6秒以上かかると不満に感じるユーザが多いのですが、ヨーロッパでは9秒くらいかかっても不満に感じるユーザは少ないのです。ただ、Keynote Systemsでは8秒以下という推奨値を持っており、これを満たしているのは、日本では現状Amazonをはじめとするごく一部のサイトのみです。

MITE

Q:御社が現在力を入れられているMITEについて教えてください。

Kevin:MITEは、モバイルサイトのパフォーマンスを計測するツールです。もともとはきちんと表示できるかをテストするツールだったのですが、パフォーマンスを計測する機能も加えました。機能を限定したものを無償で提供しています。

きちんと表示できているか、機能が正常に動いているか、ストレスを感じない速度で表示できているかのテストをMITEだけでできるのが好評をいただき、世界各国で利用されています。

また、来年ごろには実際のスマートフォン端末を遠隔操作してテストを行うDeviceAnywhereとも連携させる予定です。

これからの展開

Q:これからの日本での展開について教えてください。

Kevin:日本は非常にポテンシャルの高い市場と考えていて、去年から人的、開発リソースを多く投入しています。日本法人も設立予定で、日本で開発やテストを行っている企業と連携してソリューションを提供していく予定です。特にモバイル市場を重要視していて、数々のソリューションやソフトウェアを強化し、提供していきます。

Malcolm:Keynote Systemsでは、企業が提供するWebサイトのパフォーマンスのランキングを発表しています日本企業の各業界ランキングを調査し発表しています。また、日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデン、オーストラリアの売上上位1~3位を誇るスマートフォンサイトのパフォーマンスランキングと、日本向けにFacebookページも用意しています。

─⁠─ありがとうございました。

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