インタビュー

「Hyperledgerが金融に特化したソリューションなら興味を持たなかった」 ―Brian Behlendorf氏インタビュー

この記事を読むのに必要な時間:およそ 2.5 分

オープンソースプロジェクトをリードする極意とは?

――今後のHyperledgerプロジェクトをどのようにリードしたいですか?

B:Hyperledgerでは,中期的にはフレームワークにかかわるもの,何かのサービスに特化したものなど複数のプロジェクトが立ち上がってくるだろうと考えています。そして,それら1つ1つがモジュールになって横展開できるようになるでしょう。

これらのプロジェクトが標準に則って開発されていれば,私自身は1つ1つに介入していこうとは思っていません。時間の経過とともに統合されたりもしていくでしょう。そういう意味で流れに任していきたいと思います。実際に,Apacheプロジェクトがそのような形で展開されていったのです。当初はWebサーバのプロジェクトだったものが,今はおよそ300のプロジェクトに拡大しています。

――少し視点を変えて,今までオープンソースコミュニティをリードしてきて,うれしかったこと,苦労したことなどを紹介してください。

B:うれしかったという点では,コミュニティが自立してきたなということを感じられるときですね。コミュニティの中ではいろいろな質問が出てくるわけですが,そういった質問に対して,今まで回答したことがなかった人が「こうやったらいいよ」と答えるようになることです。こうなってくると,コミュニティが成長して,ひとつのステージを乗り越えたなと感じます。また,開発したテクノロジーが,企業,あるいは業界で活用されるという発表もうれしいですね。

悲しいなと思うときは,コミュニティが異様な緊張感に包まれ,開発が止まってしまうようなときですね。

Hyperledgerプロジェクトは初期段階で,みんなが必死になってコードを書いている状況です。そして,実際のユーザケースが出てくると,さらに新しいものが生まれてくるでしょう。そして,今いる開発者に加えて,新しい開発者が参加しやすい環境を作れたらいいなと思っています。このプロジェクトではまだ良かった点,悪かった点ということは生まれてはいませんので,これからいろいろなことが起こってくると思っています。

――オープンソースプロジェクトは,ITインフラ領域での成功例が多いようです。Hyperledgerプロジェクトは金融業界向けに見えますが,いかがでしょうか? そのような場合,開発者にとって参加のハードルが高くなることはないでしょうか?

B:Hyperledgerプロジェクトがウォール街に特化したソリューションであったならば,私は興味はありませんでした。Hyperledgerは,いわばデータベースのようなもので,いろいろな用途に使えます。先ほどいくつか例を挙げたように,ヘルスケアやIoTなど,金融業界以外のさまざまな分野でも活用可能です。もちろん,金融業界からはHyperledgerのメリットを感じて,積極的に参加いただいています。基本的には共通のフレームワークという認識で受け入れられていると思います。

開発者にとって,単に金融機関が儲かるだけというと面白くはないでしょう。そのため,もう少し社会性の強いアプリケーションも見ていきたいと思います。たとえば,いろいろな取引の透明性を高めていくとか,難民問題に対して金融サービスなどでどのように支援していくか,あるいは,気候変動に対してコンプライアンスを守っていくためのシステムを,IoTを使ってどのようにモニターしていくのか,などにも利用できると考えています。このような社会的な貢献をしていけるものも考えていきたいと思います。

――日本企業やエンジニアへの期待をお願いします。

B:エンジニアの方には,ぜひソースコードをダウンロードしていただいて,試していただきたいと思います。そこでどんなことができるか,どういう可能性があるのかを考えてもらえるとうれしいです。オープンソースプロジェクトは,どのような企業でも,どのような方でも,自由に参加してもらえるものです。ぜひ,メーリングリストで共有してもらえるとうれしいです。まだまだこのプロジェクトは始まったばかりです。積極的にいろいろな人が参加していただけることを期待しています。

画像

著者プロフィール

赤井誠(あかいまこと)

日本ヒューレット・パッカード株式会社(日本HP)に入社後,ソフトウェアR&D,事業企画,マーケティング部門を歴任。2003年からLinuxビジネス立ち上げのリーダーとなり,日本HPをLinux No.1ベンダーに導く。また,x86サーバーを活用したハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)を立ち上げ,HPC No.1ベンダーに導く。2011年4月 MKTインターナショナル株式会社を起業し,現職。
キャリアデベロップメントカウンセラー

著作・翻訳:
『マックで飛び込むインターネット』(翔泳社) の執筆以降,ライター活動も実施中。『リーダーにカリスマ性はいらない』,『MySQLクックブック』『JBoss (開発者ノートシリーズ) 』(オライリー・ジャパン)など多数。

バックナンバー

2016年

  • 「Hyperledgerが金融に特化したソリューションなら興味を持たなかった」 ―Brian Behlendorf氏インタビュー

コメント

コメントの記入