インタビュー

「顧客志向経営」――NTTコミュニケーションズが取り組む,経営戦略としてのUXデザイン

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現場まで経営戦略としてのUXデザインを届けるには

――現場との距離を縮めるためには,どうすればいいのでしょうか。

方針を一方的に押しつけないことです。それぞれの部署,それぞれの立場ごとに,彼らがもともとやろうとしているものがある。その悩みのポイントを見つけて,そこに刺さるように,話を伝えていく。うまく一緒に活動できる枠組みをつくっていく。それが基本です。

弊社は,セールス(営業⁠⁠,サービス,オペレーションと,大きく3つの機能別組織に分かれていて,それぞれに戦略部門があります。

たとえば営業戦略では,お客様と「共創」できる人材を育成していこう,としている。それはUXデザインの得意なところです。だから,その部分から一緒にやっていく。

サービス戦略では,新たな事業創造と,既存事業の更なる強化を目指しているので,これもまたUXデザインと相性が良い領域です。

オペレーション戦略では,カスタマーサポートの品質を上げていきたい。そのために,もともと彼らが顧客ロイヤリティの指標を取っていました。そういった部分は,目的が一致します。

経営から現場へと,活動を進めていくには,層がいくつもあるんです。経営幹部が「やろう」と言っても,組織はすぐには動かない。中間層にもミッションがあって,そこが腹落ちしないと,現場は動かない。そこを,ひとつひとつ解きほぐしていくことを,地道にやっています。

あとは,いくつかの部署 では,以前から一緒にUXデザインの取り組みをしているところもあり,そういう部署とは,先行して成功事例をつくっています。成果がちゃんと出る,ということを見せる。

20近くあるそれぞれの部署に,UXの専門家をつくっていく

――全社という範囲に展開しようとすると,経営企画部のメンバーだけでは対応できないのではないでしょうか。

もちろん,私たちだけで,すべてのプロジェクトが見られるわけはありません。そこで,20近くあるそれぞれの部署に「カタリスト(各部署に設定し,部署内の活動を支援する役割⁠⁠」という,UXデザインの専門家をつくろうとしています。そして彼らを,私たちのチームがバックアップする。

どの部署にも,その事業を改善するための仕事をしている人がいます。たとえば営業だと共創を推進していくための特別チームがある。そういう人たちをサポートするかたちで,一緒に入って,実践しながらプロセスをつくる。やがて「カタリスト」として活躍してもらう。

「カタリスト」が増えてきたら,やがて会社の人事制度としても,デザイン人材を定義する予定です。そうすると新しい人材の採用や,デザイナーの採用ができる。デザイン人材の社内のキャリアパスできる。社員のなかからも,そういうキャリアを目指す人が出てくる。そうしたら,さらにデザイン人材が増える,というように回っていきます。

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1人の気持ちから始まって,全社まで動かした

――お話をお伺いしていて,たいへんな仕事だと思いました。金さんご自身に,その仕事を推進していくモチベーションは,どうして生まれたんですか。

もともとは,2010年まで遡ります。部内の新規事業創出のコンテストで,私が優勝したんです。優勝して,事業をつくってよい,ということになって,取り組みはじめた。ただ,会社のなかで事業を生み出すとか,事業を育てていこうとすると,どうしても構造上,ビジネス目線に寄ってしまったりして,お客様目線に撤しきれない。

社員にはポテンシャルが高い人が多い。それなのに,その可能性がなかなか発揮し切れていない感じがする。もったいないと思いました。うまくやり方を変えれば,もっと成果が出てたり,お客様によりよい価値を提供できそうな気がする。そのためには,UXデザインの考えが広まるといい。

私の興味は,事業創出から始まって,そもそも事業創出をしやすい社内の仕組みづくりへと移っていきました。

そんなとき,私が所属していたR&D部門の所長が柔軟な方で,社員が肩書きに依存せず誰でもユニットをつくっていい,という方針を出してくれました。それで,私がリーダーになって,4人でUXデザインの専門チームを立ち上げたんです。

そこから始まって,やがて全社のサービスデザインの動きがあり,さまざまな部署と関わりを持ちました。そうして,今は経営企画部に合流して,全社の経営戦略にUXデザインを含めることになりました。

優秀な社員がいっぱいいる。可能性をもっと引き出したい。もったいない。その気持ちから始まって,ひとつひとつ,じっくりと積み上げて,広げて,今に至ります。困難はたくさんありました。それでも,UXデザインを広めたい。2010年からですから,もう10年近く,粘り強くやってきました。

――ありがとうございました。

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著者プロフィール

羽山祥樹(はやまよしき)

時代の3歩先をねらうWeb屋さん。

1996年からインターネットに触れる。Webデザインのアルバイトでネットショップの立ち上げと運営を経験。就職後、システム営業を経て、現在はIT系商社のWeb戦略に関わる。

大規模Webサイト運営やWebガバナンス、Webサイトガイドライン、Webコンテンツ品質管理・監査を得意とする。UXD(ユーザエクスペリエンスデザイン)やIA(情報アーキテクチャ)、アクセシビリティの分野でも積極的に活動をしている。

個人Webサイト:http://storywriter.jp/

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