楽天テクノロジーカンファレンス2008開催~インタビュー:楽天株式会社取締役常務執行役員 開発部部長兼CPO杉原章郎氏に訊く―楽天の技術と開発方針

カンファレンス中、楽天株式会社取締役常務執行役員 開発部部長兼CPO杉原章郎氏によるプレス向けラウンドテーブルが行われました。この中で、杉原氏は楽天の技術の基礎、これからの展開について語りましたので、その模様をお届けします。

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内製での展開と社員のエンパワーメント

――楽天の技術についてご説明いただけますか。

よく楽天のイメージとして、さまざまな部分で外部の技術やリソースを取り込んでいるように思われています。その理由の1つが大規模トラフィックを扱っているからです。しかし、実際にはどのサービスも内製で企画、開発しています。内製で行っていること、これは楽天にとって1つの強みです。

また、社員全員が楽しく主体的に働けるような⁠エンパワーメント⁠が、楽天の技術を支える基盤となっています。

5つのコンセプト

――楽天におけるエンジニアに対するアプローチはどのようになっていますか。

楽天では、成功するための5つのコンセプトを設定しています。

  • 常に改善、常に前進
  • Professionalismの徹底
  • 仮説→実行→検証→仕組化
  • 顧客満足の最大化
  • スピード!!スピード!!スピード!!

これらはすべてエンジニアのマインドをふまえたものです。つまり、エンジニアたちにとって一方的なトップダウンを行うのではなく、エンジニアの創造力を引き出すようにしています。ただし、属人的な部分を強調するのではなく、組織的に考える体制づくりを心がけています。

楽天の開発のポイント

――楽天の技術開発のポイントについて教えてください。

楽天がサービスや技術を開発するときのポイントとして、いくつかの考え方を意識しています。

まず、これまでのノウハウやプラットフォームを活かして、快適かつ質の高いWebサイトを新規事業に展開するという考え方です。こうすることで、技術者のプライドやプロフェッショナリズムに訴えることができ、開発生産性が上がります。これに加えて、顧客接点ごとにきめ細やかなサービスを提供します。それを支えているのが、スーパーDBや自社開発レコメンデーションエンジンといった技術になります。

最後に、全体を見たときに、決済までの総合サービスの提供で得たコストメリットを顧客に還元していくというものです。具体的には、⁠楽天市場」「楽天トラベル」といったサービスを中心に、楽天IDを利用した総合的な決済システムの構築を行っています。

来年以降の課題

――2009年以降について教えてください。とくに今年スタートした台湾など、これからの海外戦略があれば教えてください。

今年スタートした台湾での展開が非常にうまくスタートできました。今後は、台湾を皮切りに、どのようにアジアの体制を作っていくかが重要なポイントとなります。これからはアジアの優秀な学生を、新卒で採用できるような体制づくりを意識しています。現在、その一環として、中国大連において小論文のコンテストを行うなど、学生に対するアプローチを増やしています。

Rubyへの取り組み

――最近では、楽天技術研究所を中心に、Rubyをベースにした積極的な開発が行われています。今後、Rubyに関してはどのように取り組んでいくのでしょうか。

おっしゃるとおり、現在は、技術研究所を中心にRubyの開発を行っています。しかし、これからは開発部門からサービス部門につなげ、実際の楽天のサービスにRubyの技術を活かしていきたいです。

ただし、すべてをRubyにするというわけではなく、機能やサービス、目的に応じて最適な技術を採用することを最優先に考えています。その中で、Rubyが持っているメリットを最大限に活かせるように、Ruby側に寄せていきたいです。

Rubyによる大規模処理―Roma/fairyについて

――今のお話の延長として、昨年発表されたRoma/fairyといった技術があるかと思います。現時点での開発状況、今後のサービスインへのロードマップがあれば教えてください。

すでに発表されているとおり、Romaは分散ストレージ、fairyは分散並列処理フレームワークという位置付けで、Rubyによる大規模処理を効率的に行うための技術として開発が進んでいます。

fairyについては、すでに自社内部での利用が始まっており、これからは実際のサービスにおけるデータマイニングに向けて、データ作成基盤としての検証に入っています。見込みではありますが、2009の1Qの内部データでは使われていくのではないかと思います。

また、Roma/fairyとも、正式なリリース後にOSS化していくことも検討しています。

携帯デバイスへの対応

――今回のカンファレンスでは、インフラ技術やそれらを活用した運用面にフォーカスしたセッションが多く見られています。こうした基盤の延長として、ユーザとのエンドポイント、すなわちユーザが使用するデバイスが重要になるかと思います。とくに携帯デバイスについては今後どのように取り組まれるのでしょうか。

携帯デバイスは、⁠楽天市場」をはじめ、楽天のサービスにとってとても重要なインターフェースです。これからも、ユーザのニーズに合わせて積極的に開発し、小さな画面でもサービスが提供できるようにしていきます。とくにiPhoneについては、これからもっと対応させていきたいですね。

それから、他のデバイスとしては、TVを介したインターネット接続に期待したいです。現状、IP TVなどが進化してはいるものの、まだまだユーザが限定されています。今後は、TVというメディアが持っている、小学生から年輩の方まで幅広い層にリーチできるメリットを活かしたインターネットTVの実現に期待したいですし、そうなるように私たちもサービス提供をしていきたいです。

また、こうした各種デバイスへの対応については、すでに編成業務を担当している部署を横断的に連携させています。レギュレーションやデザイン仕様の統一を強化して、どのデバイスで見ても「楽天と言えばこのデザイン」というようなインターフェースを実現できるようにしたいです。

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