ソラコム、IoTデバイスからFaaSに連携する「SORACOM Funk」、リモートからIoTデバイスにSSH、RDP接続する「SORACOM Napter」、大容量ファイルに対応したデータ収集サービス「SORACOM Harvest Files」ほか多数の新機能、サービスを発表

⁠株⁠ソラコムは2019年7月2日(火⁠⁠、同社の主催するカンファレンス「SORACOM Discovery 2019」の基調講演にて、新たなIoTサービスやデバイス、新機能、価格改定など多くの新発表を行った。ここでは、そのうち注目のサービスを中心に紹介する。

IoTデバイスからクラウドの「サーバレスサービス」に直接連携する「SORACOM Funk」

「SORACOM Funk」は、クラウド上のプログラムを簡単なコマンドで直接実行するいわゆる「サーバレス」/FaaS(Function as a Service)といった機能にIoTデバイスを連携するサービス。サーバを立てることなく、集めたデータにロジックを適用し、処理を行うことができる。

SORACOM Funk
SORACOM Funk

サービス開始時点で対応するFaaSは、AWS Lambda、Azure Functions、Google Cloud Functionsの3つ。利用料は、0.0018円/1リクエスト、月あたり5万リクエストまで無料利用枠として利用できる。

SORACOM Funk設定画面、利用するFaaSを選択して、用意されているロジックを指定するだけ
SORACOM Funk設定画面、利用するFaaSを選択して、用意されているロジックを指定するだけ

IoTデバイスにリモートからSSH、RDP接続する「SORACOM Napter」

「SORACOM Napter」は、クラウドやサーバを介さず、リモートからIoTデバイスに直接接続できるサービス。これまで同社では、リモートからIoTデバイスにセキュアにアクセスするために、プライベートネットワークサービス「SORACOM Canal」やデバイス間LANサービス「SORACOM Gate」を使った方法を提案してきた。これらの接続にはサーバの設定等の準備が必要なため、もっと簡単にリモートからIoTデバイスにセキュアにアクセスしたいというユーザからの要望があったという。⁠SORACOM Napter」はこうした要望に応えたもの。

SORACOM Napter
SORACOM Napter
ユーザはコンソールからリモートアクセスのリクエストを送ると、デバイスにSSH、HTTP、VNC、あるいはRDPでの接続情報を得てそれぞれの方法で当該のIoTデバイスにリモート接続できる
ユーザはコンソールからリモートアクセスのリクエストを送ると、デバイスにSSH、HTTP、VNC、あるいはRDPでの接続情報を得てそれぞれの方法で当該のIoTデバイスにリモート接続できる

たとえば、ネットワークカメラの映像を必要なときだけアクセスして確認したい場合等に、グローバルIPアドレスを付加した常時アクセスを設定しているとセキュリティ上のリスクが高くなるが、Napterを用いると、必要なときのみカメラへのリモートアクセスを一時的に与えることができ、試用しないときにはオフにすることが可能となる。

「SORACOM Napter」の利用料はSIM1枚あたり300円/月、1ヵ月あたり1SIMぶんの無料利用枠が付加される。

データ収集・蓄積サービス「SORACOM Harvest」を拡張、ファイルの送受信に対応した「SORACOM Harvest Files」

「SORACOM Harvest」はIoTデバイスからのデータ収集、蓄積を支援するサービス。サーバやストレージをユーザ側で準備しなくても、クラウド上のSORACOMプラットフォームに簡単にデータを送信、保存、可視化(SORACOM Lagoonを使って)までをサポートする。

これまで「SORACOM Harvest」で送信できるのは、JSON、テキスト、バイナリなどの比較的短いデータだけだった。これに対してユーザから、カメラ画像を保存したい、ファームウェアをアップロードしてデバイスに配布したい等の要望があり、これらの要望に応えて、ファイルの送信にも対応したのが「SORACOM Harvest Files」である。

「SORACOM Harvest Files」では、IoTデバイスから画像ファイルやログファイルなどIoTデバイスで収集したファイルを、サーバを用意することなく保存することが可能。アップロードするファイルパスにはIMSIやタイムスタンプを自動的に付与できる。デバイスごと個別の設定は必要ない。プロトコルはHTTPを使用し、ファームウェアのようなファイルをデバイスにダウンロードすることもできる。

SORACOM Harvest Files
SORACOM Harvest Files

料金は、Harvest Filesへのファイルアップロード、保存が、アップロードが完了したファイルの合計ファイルサイズ1GBあたり200円/月。なお、アップロードしたファイルの保存期間は2年で、2年を経過したファイルは削除される。Harvest Filesに保存したファイルのエクスポート(ダウンロード)は、通信量1GBあたり20円。扱える最大ファイルサイズは5GBまで。また、⁠SORACOM Harvest Files」はSORACOM Air for セルラー飲みのサービス。SORACOM Air for LoRaWAN, SORACOM Air for Sigfoxには対応していない。

リモートからセルラー経由で処理プログラム書き換え可能なエッジ処理カメラ「S+ Camera Basic」とエッジプロセッシングサービス「SORACOM Mosaic」

「S+ Camera Basic」⁠サープラスカメラ)は処理基板にRaspberry Piを使用してエッジプロセッシングが可能なネットワークカメラ、通信モジュール、SIM、カメラ、電源を一体化 し、電源を入れるだけで通信も含めて稼働する初期パッケージとして用意されている。カメラのレンズは回転可能で、プログラムにより向きを変えることができる。

またカメラのアルゴリズムは、遠隔からセルラー経由で更新可能で、更新はWebコンソールから管理できる。あらかじめ用意されているリファレンスプログラムや、今後登場予定される3rd partyプログラム、そしてユーザ自身が作成するプログラムもアルゴリズムとしてカメラにデプロイできる。

S+ Camera Basic
S+ Camera Basic

この一連の動作を管理するプラットフォームの役割をもつのが新サービス「SORACOM Mosaic」で、以下のようなサービスを提供する。

  • デバイス管理機能
    • デバイスリソース管理
    • デバイスログ取得
  • プログラム管理機能
    • プログラムデプロイ機能
    • 世代管理機能
  • Web UI
    • 「S+ Camera Basic⁠⁠ は当面トライアルパッケージとして提供される。これには、⁠S+ Camera Basic」5台、3ヵ月の各種サービス利用料、カメラ利用の1dayトレーニング(オンサイト×1日⁠⁠、S+ Cameraスタートコンサルティング(8時間相当)が含まれる。また「SORACOM Mosaic」は、パートナー向けにプライベートベータが提供される予定。

      新発表のサービスの位置づけ
      新発表のサービスの位置づけ

      スタイリッシュなリファレンスデバイスやSORACOM SIMの機能強化も

      このほか、⁠SORACOM Air for セルラー」のデータ通信が利用できる新たなリファレンスデバイスとして、⁠M5Stack用3G拡張ボード」が発売となった。M5Stackはカラー液晶ディスプレイ、microSDカードスロット、スピーカー、コネクタ、バッテリをパッケージ化したコンパクト(約5cm四方)なデバイス。ESP32を搭載しており、ArduinoIDEやMicroPythonでの開発が可能となっている。センサー等の載った拡張基板をメインモジュールと組み合わせて機能拡張することも可能。

      これに「M5Stack用3G拡張ボード」を新たに提供する。M5Stack拡張基板とこの「M5Stack向け3G拡張ボード」を組み合わせ、さまざまなデータをSORACOMプラットフォームが提供する各種アプリケーションサービスで利用できるようになる。⁠M5Stack用3G拡張ボード」は1台8,880円、M5Stack Basicセットは13,000円で、SORACOM のユーザーコンソールから販売される。

      M5Stack用3G拡張ボード(左から2つめ)と組み上げたM5Stack(左端⁠⁠、右2つは分解したモジュール
      M5Stack用3G拡張ボード(左から2つめ)と組み上げたM5Stack(左端)、右2つは分解したモジュール

      また、SORACOM IoT SIM(グローバル向けSIM)の新機能として、新たに国内でKDDI LTE回線に対応した。これにより同一のSIMでNTT docomo 3G/LTE網とKDDI LTE網のマルチキャリア接続を実現できる。KDDI LTE回線対応のデータ通信料金はこれまでの1/10である0.02 USD/MBで提供される。通信料の値下げはグローバル(世界83ヵ国)でも行われ、特にヨーロッパ多くの国で0.02USD/MB(これまでは0.08USD/MB)となった。

      さらに、これまでSORACOM IoT SIMを使う場合、世界のどこで使用しても、ドイツの「ランデブーポイント」を経由した接続となるため、そこから遠い日本などで使用した場合、ある程度の通信遅延が起こってしまう。この対策として、8月から新たに、日本と米国にランデブーポイントが新設される。これによって、ドイツ、ヨーロッパ圏以外の地域で使用しても、遅延の発生が抑えられることが期待される。

      そして「テクノロジープレビュー」という位置づけであるが、SORACOM SIMは「eSIMプロファイルダウンロード」に対応する。これは最新のiPhone等で利用可能な機能で、物理的なSIMを必要とせず、QRコード等で管理サーバからeSIMのプロファイルをリクエストし、ダウンロードすることで利用可能となる。

      eSIMプロファイルダウンロード
      eSIMプロファイルダウンロード
      eSIMプロファイルダウンロード成功時の表示
      eSIMプロファイルダウンロード成功時の表示

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