「Adobe MAX Japan 2009」詳細レポート

1日目(その1)基調講演,RTMFPを使った未来のコミュニケーション,Space -スペース- FITC session

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Space -スペース- FITC session

14:20からのセッションには,ジョシュア・デイビス氏のセッションに参加した。ジョシュア氏は,⁠Spaceというのはどういう意味だろうか? 宇宙空間だろうか? それとも我々一人一人の空間?」と,来場者に問いかけるように始めた。

ジョシュア氏は空間と自分自身を結びつけていた。それは,自身が体験したスカイダイビングから,この地球というSpaceの中でいかに自身一人が小さい物であるかを思い知らされたからだと告白した。また,自身が体中に15年間タトゥを入れ続けていると語り,⁠まだ探せばタトゥを入れるSpaceがみつかるはずです。小さいですが」と軽快に言った。会場というスペースからも,幾度となく笑いがあがった。

さまざまな観点を持つSpaceという言葉を,彼は作品のテーマに取り入れ,プログラミングを使ってスペースを決め,グラフィックデザインしていくという。

写真13 ジョシュア・デイビス氏

写真13 ジョシュア・デイビス氏

grids-spacing

まず,彼は代表的なSpaceを用いたデザインとしてgridを挙げた。ジョシュア氏は「gridは非常に良い。縦列と横列を自由に決めることができるし,セルの間隔を変数として使うことができる」と述べ,gridという一定のルールに基づいた中に,ランダム性をいかにいれていくかを作品を通して説明した。ジョシュア氏は作品に取り組む際,常にいかにシンプルなアイディアで複雑な結果を出すことができるかを意識しており,グリッドはそれがとてもしやすいという。

ジュシュア氏は「プログラミングを使えば迅速に,素晴らしい結果をそれほどの労力を使うことなくアウトプットすることができる」とし,プログラミングを使ったグラフィックデザインがいかに効率的かを言及した。

また,ジョシュア氏は,セルの間の関係を定義するパラノイズ,それぞれの位置関係・近似性プロキシミティに関しても触れ,⁠コンピューティング・プログラミングを使ったデザインは15~20年前にはできなかったと思う。しかし今は変わった,Adobeの製品を使うことでその状況は変わったのだ。人の手ではできないことが技術によって超えることが出来るようになった」と語った。

写真14 グリッドを活かした表現の例

写真14 グリッドを活かした表現の例

写真15 近似性プロキシミティを活かした表現の例

写真13 近似性プロキシミティを活かした表現の例

考えることをやめるということ

彼は講師をしているニューヨークのビジュアルアーツ大学で生徒に作品制作のプロセスについて「考えるな」とアドバイスするという。

「シード(種)としてのアイデアからはじめるが,最終的にどうなるかということはわかっていない」とし,⁠予測できるようなものを作っても意味がない。これが課題です。スタートであるアイデアは考えても,最終的なアウトプットはむしろ考えてはいけない。それをすると他のことができなくなってしまう。作品の最終結果を,どのような方向に行くか考えるのではなく,あらゆる実験をしてください」と語った。そして,自身が納得するまで挑戦することが大切であることを強調した。

さらに,⁠ただの無作為の結果では良い結果にしかならない。なんらかのルールに,定義,パターンを取り入れたランダム性のほうが,よりよい素晴らしい結果を生むことができる」と語った。

写真16 パターンルールを作成するための方法を解説

写真16 パターンルールを作成するための方法を解説

写真17 ランダム性を重視した表現を利用したアート

写真17 ジョシュア・デイビス氏

動画1 ランダム性を重視した表現が,重要であることを説明していた

ニコニコ動画:https://www.nicovideo.jp/watch/sm6027718

seedとhard worker

ジュシュア氏は作品作りのアイデアについて,⁠インスピレーションは近くにある。自分の環境にいるときは自分の環境を見ることは難しい。だから,見えないものを探せ。それは自分の側にあるものだが,見えない。なぜならそれは当たり前のものだからだ。自分には当たり前すぎて,見えなくなってしまっているのだ。アイデア(seed)は至る所にある。だから,作品を作るときアイデアがないとは言わずに,自分の目をよく開いて,自分に見えなかった物を,自分の周りにあるもの,日常見ている物を見てください」と示した。

また,作品作りの取り組みへの姿勢について,⁠作品作りそのものが大好きになるのが重要だ。賞をうけるとか,そういう目的ではなく,自分を表すために作り出すということだ。自分を,誰かに見せるのだ。それを世界に見せて欲しい」と示した。

最後に,ジョシュア氏は「hard workerになること,つまり一生懸命やるということ」が重要だと言及した。そして,⁠ただ考え,話すだけでなく,作品は作り出さなければならない。次のPhotoshopにもIllustratorのバージョンにも,自分の尻を叩いてくれる,やる気を出してくれる機能なんてない。自分自身がやらなければならないのだ。あなたが今日,帰ったら作品をつくるのだ。hard workをやるんだ,という気持ちがなければ駄目だ。今日私がここに立っているのも,クレイジーなくらい働いて,どんどんどんどん作品をアウトプットしたからだ。何回も何回も失敗した。そしてやっと何かいいものができた。だから本当に一生懸命大事なことに取り組むこと。それが一番大切なことだと思う」と,会場の一人一人に熱く語りかけた。

実際,彼の話を聴いている私自身,作品を作りたくなってしまった。それも,猛烈にだ。今すぐ作りたくなった。きっと,インスピレーションを得るとはこういうことなのだろうと理解した。ジョシュア氏は会場一人一人だけでなく自分自身にも語りかけているようにみえた。自分に言い聞かせるように。それは言うまでもないが,魅力あふれるとても感動的なセッションだった。

著者プロフィール

加茂雄亮(かもゆうすけ)

株式会社ロクナナにて,ActionScriptを伴うFlashコンテンツや,AjaxコンテンツなどRIA開発に従事するフロントエンドエンジニア。テクニカルライターとしての一面を持ち,WEB・雑誌・書籍、媒体問わず執筆。また,イベントやセミナーでの講演など,精力的に活動している。

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