「AWS re:Invent 2019」ミニレポート“re:Inventのスキマから”

005 Kubernetesだけじゃない! Amazon/AWSのインフラをも支えるコンテナサービス「Amazon ECS」

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ここ1,2年のKubernetesブームはインフラ運用とアプリケーション開発の両方に大きな変化をもたらしました。AWSにおいてもKubernetesサービスへの需要は大きく,アンディ・ジャシー(Andy Jassy)CEOは今回のAWS re:Inventのキーノートにおいて「Amazon EKS for AWS Fargate」を発表しています。これはEC2(サーバインスタンス)の管理やホストを必要としない,サーバレスなコンテナ実行エンジンである「Amazon Fargate」の上で,マネージドKubernetesサービス「Amazon EKS」が使えるようになるというもので,Kubernetes運用のスペシャリストがいなくても,Podsの管理やプロビジョニングなしでKubernetesアプリケーションが実行可能になります。サーバレスでセキュアなKubernetes環境を望んでいたユーザにとってはまさに待望のサービスといえます。

Kubernetesユーザのニーズに応えていく一方で,AWSは2014年11月に最初のアナウンスメントを行った「Amazon ECS(EC2 Container Service⁠⁠」を同社のコンテナサービスにおけるもっとも重要なポートフォリオとして位置づけています。Kubernetesへの注目度がやや過度な状態にあるためECSが話題になることはあまり多くないのですが,EKSに先駆けたフルマネージドなコンテナサービスとして展開されてきたECSはGEやSamzung,Autodeskといった大手企業の本番環境でひろく使われており,Kubernetesとは別のモメンタムを形成してきました。

re:Invent 2019のECSセッションで講師を努めたAWSのプリンシパルプロダクトマネージャであるニック・コルト(Nick Cault)氏は「現在,Amazon ECSによってローンチされる1時間あたりのコンテナの数は,Amazon EC2によってローンチされる仮想マシンの5倍にあたる」と語っていますが,この傾向はAWSユーザだけではなく,Amazon/AWSにとっても同様のようです。

ニック・コルト(Nick Cault)

ニック・コルト(Nick Cault)氏

コルト氏はECSによってサポートされているサービスとして

  • Amazon SageMaker
  • Amazon Lex
  • Amazon Polly
  • AWS Batch
  • Amazon.comのレコメンドエンジン

などを挙げていますが,いずれもAmazon/AWSのコアともいえるサービスあり,高い精度とパフォーマンス,さらに信頼性が求められる分野でもあります。⁠セキュリティ,リライアビリティ,アベイラビリティ,そしてスケーラビリティの面で慎重にテストを繰り返し,こうした重要なサービスのビルディングブロックを形成する基盤としての条件をAmazon ECSがクリアしているからこそ,これらのサービスは安定して稼働することができている」とコルト氏は語っており,ECSが大規模コンテナクラスタの運用に適している点を強調していました。ECSはKubernetesでいう「Pods」と似た「Tasks」というユニットをベースにしているのですが,このTaskの扱いやすさ,スケールのしやさ,さらにEC2と同様にスポットインスタンスを用意していることなどが,大規模ユーザにとって受け入れやすいポイントとなっています。

Amazon ECSはインフラファーストではなくアプリケーションファーストの思想にもとづいて設計されており,スケーラビリティやリライアビリティに関しては,アプリケーションの要件を満たすところからはじめるアプローチをとっている

Amazon ECSはインフラファーストではなくアプリケーションファーストの思想にもとづいて設計されており,スケーラビリティやリライアビリティに関しては,アプリケーションの要件を満たすところからはじめるアプローチをとっている

リサーチ会社のGartnerの予測によれば,⁠2022年までに世界の組織の75%以上が本番環境においてコンテナ化されたアプリケーションを実行するようになる」とのこと。2019年の現時点ではまだ30%以下にとどまっているものの,インフラ運用とアプリ開発という2つの世界が急激にKubernetesを中心とするコンテナ環境へとシフトしている以上,この数字はかなり現実味を伴っているように思えます。ちなみにコルト氏によれば,AWSにおける各コンテナサービスは年率150%で成長しており,さらに「世界中のクラウドで動いているコンテナのうち,80%以上がAWS上で稼働している」そうです。拡大を続けるクラウドネイティブなコンテナ市場において,Amazon ECSがどんな存在感を見せていくのか,Kubernetesとともに注目していく必要がありそうです。

著者プロフィール

五味明子(ごみあきこ)

IT系の出版社で編集者としてキャリアを積んだ後,2011年からフリーランスライターに。フィールドワークはオープンソースやクラウドコンピューティング,データアナリティクスなどエンタープライズITが中心。海外カンファレンス取材多め。Blog 「G3 Enterprise」やTwitter(@g3akk),Facebookで日々IT情報を発信中。

北海道札幌市出身/東京都立大学経済学部卒。