「FITC Tokyo 2009」詳細レポート

#1Lee Brimelow氏「Sneak Peek of Max 2009」Flash CS5などの新機能の紹介

11月28日、ベルサール汐留にて、FITC Tokyo 2009が開催された。FITCはトロントをはじめ、シカゴ、ハリウッド、韓国、アムステルダムにおいて成功を収めたデザイン・テクノロジーイベント。今回待ちに待った日本上陸ということで、500名近い来場者で会場は活気に満ちあふれていた。

本稿では、FITC Tokyo 2009の模様をレポートする。

Sneak Peek of Max 2009 - Lee Brimelow氏

ひとつめのセッションは、Adobe社のプラットフォーム・エバンジェリストであり、Flashのビデオ・チュートリアルサイトgotoandlearn.comで世界的にその名を知られているLee Brimelow(リー・ブリムロー)氏が登壇。10月5~7日の3日間に渡ってロサンゼルスで開催されたAdobe Max 2009で公表された、Flashに関する最新情報を発表した。

写真1 FlashCS5に関して説明する、Lee Brimelow氏
画像

Flash Professional CS5の新機能

まずは、⁠CS4では、アニメーションエンジンをはじめ、様々な機能が追加された。今回のCS5でも、より魅力的な機能が追加されている」とし、Flash Professional CS5に関する情報が公表された。以下では、発表された内容について紹介する。

iPhoneアプリ書き出し
iPhoneアプリを、Flashで制作できるようになった。この機能を用いることで、WindowsでもiPhoneアプリの制作が可能になる。
アクションパネルの改善
ビルトインクラスはもちろんのこと、カスタムクラスを読み込んでコードヒント表示が可能。
Text Layput Framework(TLF)
FlashPlayer 10から搭載された、国際言語に対応する新テキストエンジン。CS4ではActionScript からのアクセスがサポートされていたが、CS5ではプロパティインスペクタに実装されマルチカラムや縦書きなど、より細かな書式の設定が可能となる。従来のテキストエンジンはClassicTextとして選択可能。
デコツールの強化
いくつかのブラシが追加された。また、ブラシはJavaScriptで表現されているため、ユーザーが拡張可能。
コンパイルエラーパネルの改善
より見やすく刷新され、エラー何個、警告何個というようにわけて表示されるように。
XFL
flaに変わる新ファイルフォーマットとして、xflが実装。Flashファイルがオープンフォルダとして保存され、ライブラリ内のアセットを自由に差し替えることが可能になった。また、XMLによってFlashのトゥイーンやテキストフィールドの文字など、全て格納されているため、自動化がしやすくなる利点も。
コードスニペットパネル
コードをパーツ、スニペットとして登録・呼び出しが可能になる。テンプレートとして活用することができる。いくつかのコードは、Adobeからも提供されるようだ。
FlashBuilderとの連携強化
新規にクラスを作成する際、FlashBuilderが選択できるようになった。インストールされている場合は、FlashBuilderが自動的に立ち上がる。
コンポーネントインスペクター
CS4まではコンポーネントのパラーメータを制御するパネルとして、コンポーネントインスペクターパネルを使用してきた。CS5では、この機能がプロパティパネルに組み込まれる。
フォントの埋め込み強化
使用しているフォントの一覧やその変更など、いままでテキストフィールドごとに作業していたフォント周りの設定をフォント埋め込みパネルで一括に管理することが出来るようになった。
FLVPlayBackのステージ上での再生
今までのFLVPlayBackコンポーネントは、Flash Professionalのステージ上では再生することができなかった。この機能が実現したことで、再生しながらプロパティの細かな調整などが可能になった。
写真2 Text Layput Frameworkを利用することで、テキストの扱いが容易になる
画像

注目はiPhoneアプリのコンパイル

なんといっても、CS5での注目の機能はiPhoneアプリをコンパイルできることにあるだろう。会場では、実際にFlashでサンプルを作り、iPhoneアプリにコンパイルするデモが行われた。Apple Developer Programへの登録や、サーティフィケーション・プロファイルの取得などが別途必要になるが、WindowsからでもiPhoneの開発が可能になるのは驚愕であり、多くのデベロッパーにとっては魅力的であることは間違いないだろう。

写真3 Flashでiphoneアプリをコンパイルするときの概念図
画像

App Storeでは、既にFlashでコンパイルされたiPhoneアプリが販売されており、その一部が紹介された。

これらの機能を実装したFlash CS5は、バージョン初のパブリックベータが、年末に予定されているという。気になるユーザーはチェックしてみるとよいだろう。

写真4 Flashを利用したiphoneアプリをデモ
画像

Flash Player 10.1とFlashLite4

Flash Playerの最新バージョンである10.1に関する新機能についても言及された。10.1では、モバイル向けに機能化され、今後出荷されるスマートフォンは、iPhoneをのぞいて全てに実装されるようだ。これによってFlashLiteは廃止の方向に向かうものの、すぐになくなるというわけではなく、ロースペックの機種にはFlashLite4の実装を予定しているという。

10.1では、メモリーの使用容量が大幅に削減。また、マルチタッチ・ジェスチャーのAPIが追加される。このAPIはマルチタッチに対応したスマートフォンのほか、マルチタッチデバイスを認識できるため、デスクトップ機でも利用可能だ。

そのほかに、加速度センサー用のAPI、マイクデバイスへのアクセス、そしてすべてのラインタイムエラーを参照するグローバルエラーハンドリングなどが追加された。

写真5 Flash Player 10とFlash Player 10.1のメモリ使用量の比較
画像

AIR 2.0

AIR 2.0についても、魅力的な機能が追加される。2.0では、AIRから他のアプリを実行できるようになったほか、カメラやUSBなどの外部ストレージデバイスに対応した。Web Kitも最新バージョンにアップデートされたため、HTML 5やCSS3の表示も可能だ。リムブロー氏によるデモでは、Adobe Labsで公開されている"Search Central"を紹介。これはMac OS XのSpotlight機能をサポートし、ファイルシステムにアクセスすることができるものだ。また、マイクデバイスと連動したデモも紹介。音声の録音が可能になったほか、音声の波形データを取り出すサンプルを披露した。

FlashCatalyst、そしてFlashBuilder

最後に、FlashCatalyst、そしてFlashBuilderについて新機能の紹介があった。

FlashCatalystについては、扱えるコンポーネントが増え、ビデオ・オーディオのサポートした。また、インタラクションが追加され、外部のウェブサイトを呼び出すといったことも可能になる。その他、マルチフィルターやSWFの読み込みなどの機能が実装される。氏は、⁠いかにコードが書けないユーザーに対して、コードを書かずにFlashを作ることが出来るかを重点に開発されている」と語る。

FlashBuilderに関しては、データサービスウィザードが新機能として追加される。これは、外部のデータサービスを自動で抽出し、それに適応したサーバー側のクラス(phpなど)と、アプリケーション側のクラス(ActionScript)を生成してくれるというもの。会場ではデモも行われた。

また、連携強化としてFlashCS5のプロジェクトが作成可能になったほか、イベントハンドラやgetter/setterを自動生成する機能や、SWCファイルを読み取り内部のクラスを閲覧可能にするSWC Package Explorerなどが紹介された。

写真6 FlashBuilderでは、より簡単に外部データとやり取りできると説明
画像

このセッションでは、すべてのユーザーが気になっているFlash for iPhoneついての詳細が明らかになったのが大きかったが、Flash Player 10.1でのマイクデバイスへの対応とマルチタッチ対応、そしてAIR 2.0における外部ストレージデバイスへのファイルシステムと、他のアプリケーションとの連携実行が図れるようになったことで、今まで出来なかった様々なことが実現する。これによってまったく新しいサービスが登場することはまず間違いないだろう。注目しておきたいところだ。

おすすめ記事

記事・ニュース一覧