海外PyCon発表修行レポート2015

第5回 PyCon Malaysia 2015参加レポートとSphinx発表

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招待ディナー

カンファレンス1日目の夜に,スピーカー,海外からの参加者を招待したディナーが行われました。店はKokopelli Bistroという一見民家にしか見えないお店です。カンファレンス会場から車で15分の場所にあり,参加者は会場からシャトルバスで移動しました。

この招待ディナーの料理もすべてハラルフードでした。また,マレーシアの多くの人が宗教上の理由から飲酒しないこともあり,アルコールは一切ありませんでした。とはいえ,日本ではこういったディナーでお酒が出てくるのが普通なため,お酒なしではさみしく感じてしまいますね。

ディナーでは,参加者同士それぞれが,Pythonや関連する技術について話したり,飛行機でマレーシアに来るのに何時間かかった,といったような雑談をしていました。日本からは筆者と寺田さんが参加していましたが,訛りの強い英語の会話にはなかなかついて行けませんでした。

会話は苦戦しましたが,このようにスピーカー同士が顔を合わせて雑談をするような場は重要です。PyCon.MY座長のイクバルさんはこのディナーについて,スピーカーや海外からの参加者をおもてなしすることが大事,と言っていました。スピーカーにとっても,遠くまで出かけていって技術ネタを発表しようという人達が集まるので,技術的に濃い話ができ,意見交換できるのは良い企画でしょう。しかし筆者は,この場にそれ以上に重要な役割があると感じました。こういった場で雑談に耳を傾け,なんとなくお互いに顔を覚えることで,翌日以降のカンファレンスで挨拶し,そして次第に強い繋がりになっていく,そういったきっかけを提供してくれていたと思います。そういう意味でも,この場に集まった全員に価値のあるとても良い会食でした。

Sphinxの発表

筆者はカンファレンス1日目と2日目に,それぞれSphinxの翻訳支援(i18n)機能についての発表と,Sphinxのautodoc機能についての発表を行いました。

翻訳支援(i18n)機能についての発表は,参加者が10名で,全参加者の1割未満でした。PyCon.SGで翻訳支援機能の発表をしたときにも思いましたが,カンファレンス参加者が100%英語を使える国では翻訳のニーズがほとんど無いということですね。

Q&Aで「MarkdownのドキュメントをSphinxで扱うための変換ツールがあるか?」という質問がありました。EuroPythonでも話題が出ていましたが,Markdownを他の記法に変換する際に大変なのはHTMLタグが入っている場合です。そして多くの場合,HTMLタグが入っているMarkdownを綺麗にreSTに変換することはできません。質問者には,そのような事情を伝えました。

もう1つの発表,autodocの発表では,始めは30人ほどの参加でしたが,後から人が入って最終的に40人ほどが参加してくれました。

演台から参加者撮影も4回目,今回一番ノリが良い!

演台から参加者撮影も4回目,今回一番ノリが良い!

発表の最初に,"docstringを書いたことがある人⁠が何人いるか尋ねると,20人が手を挙げてくれました。次に,⁠docstringでAPIリファレンスを生成したことがある人⁠を尋ねると,0人でした。そこで「このセッションは君たちのためにある!」と言って,本題に入っていきました。

ところで,⁠この発表は君たちのためにある!」というのは,EuroPythonである発表者が使っていたセリフですが,良い始め方だなあと思ったのでそのまま使わせてもらいました。プレゼンテーションでは参加者の共感を得る内容から始めるのがセオリーですが,こういった会場への質問と,手の挙がる数に合わせたうまい返し方ができると,より参加者を発表に引き込みやすいと思います。人数に合わせて,というところがなかなか難しいですが,うまく使って行きたいですね。

発表を真剣に聞く参加者

発表を真剣に聞く参加者

筆者の発表に参加してくれた寺田さんが,後で参加者の様子を教えてくれました。参加者は,Sphinxとautodocの話を真剣に聞いて,メモを取り,スライドにある操作手順などを写真に撮っていたということです。Sphinx自体,マレーシアでほとんど認知されていないのかもしれません。寺田さんの感想としては,⁠autodocというSphinxの応用的な使い方の話だったけれど,Sphinxの歴史や導入前後の体験,インストール手順などにも軽く触れられていて,Sphinxをまったく使ったことがなくても聞きやすい内容になっていてとても良かった。ただ,話題が次のセクションに進むときはあっさり進めるのではなく,直前にひとことまとめて,溜めがあっても良い」ということでした。導入の分かりやすさは,これまで3回の発表を経て改善してきたところなので,その成果を着実に得られているということが実感できて嬉しかったです。また,新しい改善点も指摘してもらえたので,次に向けて改善しようと思います。

発表内容の詳細については,6月に台湾で行われたPyCon APAC 2015の発表レポートをご参照ください。

おわりに

今回のPyCon.MYでは,2つの発表を行いましたが,カンファレンスが開催される地域に合った内容の発表が重要,ということがよく分かりました。現地で使われている言語の実情を知るのはなかなか難しいですが,プロポーザルを送る前にカンファレンスのスタッフに聞くなど,事前に調べる方法はあっただろうと思います。よほど名の知られた熟練者であれば⁠話したいことを話せる⁠のかもしれませんが,まずは⁠必要とされている事を話す⁠ところから始めて,少しずつ発表の腕を磨いていきたいと思います。

次回のレポートでは,2015年8月29日(土⁠⁠,30日(日)に行われたPyCon Korea 2015について紹介します。

著者プロフィール

清水川貴之(しみずかわたかゆき)

ドキュメンテーションツールSphinxのメンテナ。2003年にZope2と出会い,それがオープンソース等のコミュニティー活動を始めるきっかけとなった。

Sphinx-users.jp運営。一般社団法人PyConJP理事。株式会社ビープラウド所属。

著書/訳書:「Pythonプロフェッショナルプログラミング第2版」「Sphinxをはじめよう」「Pythonプロフェッショナルプログラミング」「エキスパートPythonプログラミング」。

運営・参加イベント:Python mini Hack-a-thon主催,Sphinx+翻訳Hack-a-thon主催,PyCon JP 2011-2014運営

サイト:http://清水川.jp/
Twitter:@shimizukawa