パソナテックカンファレンス2008レポート

2日目AM メインセッション 「『まつもと的仕事の楽しみ方』のここだけ話」

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パソナテック10周年記念 PTカンファレンス2008の2日目(10月11日)午前中のメインセッションとして登場したのは,Rubyの開発者として知られる,まつもとゆきひろ氏(株式会社ネットワーク応用通信研究所フェロー)。「『まつもと的仕事の楽しみ方』のここだけ話」と題して,エンジニアとして楽しく働くためのコツや,ワークスタイルを確立する方法などについて語りました。

まつもと氏のセッションの模様

まつもと氏のセッションの模様

まつもと氏は,幸せな仕事を手に入れる可能性を高めるために,どのように「目標」「戦略」を定めれば良いかということを,自身の経験や実践を元にしながらユーモラスに語りました。目標とは何を人生のゴールにするかということであり,戦略とはその目標に到達するために何をするかということ,そして目標と戦略に従って「行動」を起こすことが大切だと語りました。

己を知っている人はブレない

まつもと氏によると「目標」の設定は,まず自分自身のインベントリ(たな卸し)から始まるとのこと。自分を振り返って,自分の得意なところは何か,欠点は何かを知ること,そして欠点と長所を把握して,長所を活かすことが自分を地位をつくる武器になるとコメントしました。

たとえば,まつもと氏は,「よく情報系の学校にもぐりこめたな」というくらい数学が苦手で,情報系の学部では落とすと進級できない数学で赤点を取ったことがあるそうです。一方で,文系科目は得意で,表現力やコミュニケーション能力については普通の理系の学生より得意であったため,赤点を取った授業も先生と交渉して「なんとかレポートでごまかしてもらったことがあります」という自身の経験を語りました。

また,幸せになるためには,「何をしたら幸せになるか」を知らなければならなく,楽しい仕事をしたかったら,自分はどんな仕事をしていたら楽しいのかということを把握してないといけないと断言しました。それは,人生において「妥協できないもの」は何かを知ることだそうです。同時に,妥協できる,ここは変えてもいいということについても把握しておくべきと補足しています。

まつもと氏の場合は,まず都会嫌いなので,人口が少なくて,職住が近接した,自然の多いところで暮らしたいという希望がありました。また家庭を大切にするタイプなので,一家を養える程度の収入と,家族と過ごす時間は必要条件。スーツを着るのも嫌で,2007年の経済産業大臣表彰にもジーンズ姿で臨んだほどです。

そして,中学生のころからずっとやっているプログラミングが大好きなので「プログラミングに没頭していたい。しかも,自分が好きな分野のプログラミングを,自分で設計して,自分で実装したい」という強い気持ちを持っていました。これは,Rubyの開発者であるまつもと氏ならではの十分条件だと言えるでしょう。

一方で,なんでもかんでもわがままを言っても現実できるわけはないので,ある程度は妥協点を見出すことを考えなくてはなりません。まつもと氏の場合は,まずお金持ちにはならなくてもよく,お金がそんなに欲しいかと言われるとほしくないそうです。また,コンビニで「まつもとさんですよね?」と声をかけられても恥ずかしいだけなので,有名になることもあまり望んでいません。

まつもとゆきひろ氏

まつもとゆきひろ氏

同調圧力をはねのけ,成功確率を高めていく

そうやって目標を持ってがんばっても,挑戦が成功するとは限りません。しかし,成功する確率を6割から8割に,8割から9割に上げる方法はあるのではないかとして,まつもと氏が個人的に「これが有効なんじゃないかな」を思っている2つの「戦略」について紹介しました。

まず「代替可能ではない自分になる」こと。つまり誰がやっても同じような仕事をしているのではなく,自分でないとできない何かがあれば大切に扱われる可能性があるというものです。

もう1つが「差別化」で,人によって長所も欠点も違うので,成功する方法も人によって違います。だから周りと同じことをしていても成功しません。逆に,違う方向へ行ったほうが成功する確率は上がると言います。しかし,「日本ではとくに社会からの同調圧力が強いので,それをはねのけなければならない」と語りました。

まつもと氏も,小学生の図画工作の時間に「動物を作る」という授業で,教科書には紙を2つに折って足を2つ描いて動物を作るというやり方を教えていたのに,クラスでひとりだけ丸い紙の筒に紙の棒を4本突き刺した動物を作ったそうです。ひとりだけ違うので,先生は「あなたはどうして他の人と同じことができないの?」と叱り,実は授業参観日だったので親にも「恥ずかしい思いをした」と今だに言われるそうです。

しかし今思えば「他人と同じことをしない」ことは,かえって成功するのに役立ったので,今では「その先生は間違っていた」と自信をもって断言できると言います。確かに,「なぜ他の人と違うことをするの?」という問いが,先生や周りの友達や社会全体に無言の圧力として存在しているわけです。しかし,他の人と同じ事をしないからといって,悪いことが起きることは滅多にないと言います。

「あえて言うと,社会から感じる同調圧力は幻想です。皆さんは別に他人と同じことをする必要はないんです。皆さんは自分がありたいような自分であってかまわない。だけど,この幻想は非常に強くて,行動するときになんとなく「他に誰もやってないし」「前例がないし」と,つい自分に言ってしまう。それは,社会が無言のうちに皆さんの足を後ろから引っ張ってるんです。それを振り払うことができるかどうかが,成功できるかどうかのひとつの鍵じゃないかな」と,まつもと氏は語りました。

良い点を伸ばしていく

さらに同調圧力をはねのけて差別化を計るときには,「苦手克服」や悪いことを直すよりも「良い点を伸ばす」ことが良い戦略だと言います。得意なことや好きなことならば,時間や労力を使うことが苦ではありません。それを1年,5年,10年と続ければ誰にも負けないと,努力を継続させることの重要性を説きました。

最後に,「こんなことを話してきましたけど,実際に自分が行動を起こさないと成功しないんです。他人の成功談を聞いて「ああいい話を聞いた」で終わりだと,何も変わらない。成功戦略を立てる。そして実際に自分も行動を起こす。そして言うべきことを言う。そして努力するということを継続的に行っていかないといけない」と語り,「他の誰でもないあなたになってください」と締めくくりました。

著者プロフィール

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IT系書籍編集者を経て現在フリーのテキスト加工家。

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