台湾で開催された「PyCon APAC 2015」参加レポート

第1回現地の様子とカンファレンス1日目 ~Van Lindberg氏による基調講演、おやつタイム、等々~

はじめに

こんにちは、芝田将です。

2015年6月5日(金⁠⁠~7日(日)までの3日間、台湾の台北で開催されたPyCon APAC 2015に参加してきました。筆者はこれまでPyCon JPも含めてPyConへの参加経験が無く、非常に新鮮なものばかりでした。参加レポート第1回では現地の様子とカンファレンス1日目の内容を参加者目線でお届けします。

PyCon APAC 2015について

PyConはPythonユーザ間の情報の共有や交流を目的として、世界各国で開催されているイベントです。その中でもPyCon APACはアジア、太平洋地域の様々な国からPythonista(Pythonユーザ)が集まる大規模なイベントとなっています。これまでPyCon APACはシンガポール、日本でも開催されてきましたが、今年は昨年に引き続き台湾で開催されました。

図1 PyCon APAC 2015 公式サイト
図1 PyCon APAC 2015 公式サイト

イベント前日の様子

現地での移動

桃園空港から会場までの移動手段はPyCon APAC 2015の公式サイトに載っています。空港にはいくつかのバス業者のチケット売り場があり、どこを使えばいいのか悩みましたが、PyCon APAC 2015の公式サイトでは最も経済的で便利な移動手段として「国光バス」が紹介されていて非常に助かりました。台湾のタクシー料金は日本に比べるとかなり安いですが、空港から会場までは結構距離があるためできるだけシャトルバスを利用するのが経済的です。また日本から来たメンバーの中には桃園空港ではなく松山空港を利用する方もいました。会場へは松山空港のほうが近いため、そちらを利用するのも良さそうです。

筆者は上記ページに載っている通り、桃園空港内で国光バスのチケットを購入し、南港展覧館までバスに乗り(料金はNTD115)移動。その後タクシーを利用して宿泊先であるカンファレンス会場の近くのホテルまで移動しました。タクシーでは中国語が分からなくてもスマートフォンで行き先を見せると問題なく目的地まで連れて行ってくれました。

図2 国光バス
図2 国光バス

台北市内での移動は、タクシー以外にもMRT(地下鉄)やバスがあります。現地ではEasyCardと呼ばれるICカードを購入しておくとMRTやバス、コンビニなどで使うことができ、非常に便利です。特にバスには両替機がなく、英語が通じないことも多いのでEasyCardを持っていると簡単に支払いができました。

ホテル・会場

図3 会場正面玄関
図3 会場正面玄関

カンファレンス会場は昨年のPyCon APAC 2014と同じく中央研究院(Academia Sinica)です。また会場のそばには宿泊施設があり、筆者も含め遠方からの参加者の多くはそこに宿泊していたようです。

図4 ホテル
図4 ホテル
図5 会場
図5 会場

会場の設備は素晴らしく全席にマイクや電源、有線LANが用意されています。無線LANもありましたが、参加者が多いためかインターネットに繋がりにくかったです。有線LANは安定していたため、LANケーブルを用意しておくと良いと思います。また筆者は日本の空港でWi-Fiルータを契約して持って行きましたが、SIMフリーのWi-Fiルータやスマートフォンをお持ちの方は空港でプリペイドSIMを購入するほうが経済的でお勧めです。

カンファレンス1日目

受付とノベルティ

事前にメールで送られてきた番号を伝えるとRFIDが埋め込まれた名札が渡されます。それをRFIDリーダにタッチすると受付ができ、ノベルティが手渡されました。このRFIDリーダはRaspberry Pi等を使って自作したそうです。

図6 RFIDカード
図6 RFIDカード
図7 受付
図7 受付
図8 手渡されたノベルティ
図8 手渡されたノベルティ

ノベルティには、トートバッグにパンフレット、ステッカーやスポンサー広告などが入っています。さらに別の受付でもRFIDリーダに名札をタッチするとTシャツのサイズがディスプレイに表示され、登録時に指定していたサイズのTシャツをスムーズに受け取ることができました。RFIDによってどの参加者がTシャツを受け取ったのかを管理しているようです。面白い試みですね。Tシャツがグレーをベースとした誰でも気軽に着れるデザインになっているのも嬉しいです。

図9 Tシャツ(前)
図9 Tシャツ(前)
図10 Tシャツ(後)
図10 Tシャツ(後)
図11 Tシャツの受付
図11 Tシャツの受付

Opening

Openingではスタッフやスポンサーの方々への感謝を述べた後、PyCon APAC 2015のスケジュールと参加者に知っておいてほしいPyCon APAC 2015の設備やイベントについて説明をしていました。

図12 オープニング
図12 オープニング

[Keynote 1] Van Lindberg: Ecosystem Threats to Python

図13 Van Lindberg氏による基調講演
図13 Van Lindberg氏による基調講演

オープニング後すぐにPSF(Python Software Foundation)のチェアパーソンとして活躍しているVan Lindberg氏による基調講演が始まりました。PythonやJava、JavaScript(Node.js⁠⁠、Golangのエコシステムを比較し、Pythonの立ち位置や特徴について説明をしていました。Pythonのエコシステムは大きくなってきて便利ですが、Pythonのバージョンアップについて行きづらくなってきているという話には非常に共感でき、筆者もPythonユーザの一人としてPython 3系の資産を増やしていくことに少しでも協力していきたいと思いました。

Refreshment(おやつタイム)

図14 おやつタイムの様子
図14 おやつタイムの様子

午前中にはRefreshmentという時間が設けられています。この時間はセッションの合間に時間を取り、会場の通路でおやつやコーヒー、お茶等の飲み物が配られます。お菓子は非常に美味しく、セッションが終わるとすぐに長蛇の列ができていました。

Dmitry Trofimov: Python Debugger Uncovered

図15 Dmitry Trofimov氏によるデバッガの紹介
図15 Dmitry Trofimov氏によるデバッガの紹介

ここからは、筆者が聞いたセッションの中から特に印象的だったものを紹介していきます。

まず1つめはPyCharm開発者であるDmitry Trofimov氏によるデバッガの紹介です。pdb、PyCharm、PyDevについての簡単な説明の後、デバッガがどのようにできているのか解説していました。非常にシンプルなデバッガのサンプルコードから始まり、解説が進むにつれて実際に使われているデバッガの実装に近づいていく様子が非常に分かりやすかったです。詳しく知りたい方にはPyDevやPyCharmのデバッガに使われているfabioz/PyDev.Debuggerのコードを読む事をお勧めしていました。

参考リンク
セッションの概要ページ

昼食

図16 配られた昼食
図16 配られた昼食
図17 昼食の様子。会場内は寒いので中庭で食事
図17 昼食の様子。会場内は寒いので中庭で食事

お昼はお弁当が配られます。お弁当は牛や豚、鶏、ベジタリアンの4種類から選ぶことができ、さまざまな国から集まるPyCon APACならではという印象でした。筆者は鶏の弁当を食べましたが、日本人の舌にも合う味付けで非常に美味しかったです。会場内はかなり冷房が効いていて寒いため、日本から来たメンバーはみなさん中庭で昼食を取っていました。

Summy Fung: Future Developmet of PyCON in Asia Pacific

図18 セッションの様子
図18 セッションの様子
図19 セッション終了後も会場外の通路でディスカッションを続ける各国のチェアパーソン
図19 セッション終了後も会場外の通路でディスカッションを続ける各国のチェアパーソン

このセッションではアジア・太平洋地域の各国(日本、韓国、台湾、マレーシア、シンガポール)のPyConとPSF本家からチェアパーソンが集まり、今後のPyCon APACの運営方針や目標について議論を行いました。

日本からはPyCon JP 2015の座長でもある鈴木たかのり@takanoryさんが登壇しました。ディスカッションではPyCon APACの規模が非常に大きくなってきていることから、PyCon APACを開催するにあたって人をたくさん集めないといけないというハードルが上がってしまっている、という懸念が挙がりました。また今後どこの国でPyCon APACを開催していくべきかという議論を行いました。

この議論を聞いて、各国が規模等にこだわらず自分たちのPyCon APACを開催してくれれば、参加者はそれだけで非常に楽しめるんではないかと感じました。

本来、概要・ディスカッション・締めの3部構成でしたが、ディスカッションが非常に盛り上がり、司会からは「時間がないので続きはどこか別の場所でやってくれ」と言われるほどでした。実際にセッション終了後も会場外の通路に集まりディスカッションを続けていました。

参考リンク

セッション概要ページ

議事録

Melvin Foo: RPyScan

図20 ステージには大きな装置(RPyScan)が設置されています
図20 ステージには大きな装置(RPyScan)が設置されています

発表者はシンガポールの高校生3人組でした。人の体の3Dモデリングに必要な3D Scannerは非常に高価な事から、彼らはRaspberry Piと36個のカメラを使用して自分たちで製作しました。発表前から多くのスタッフとともに大きな装置を組み立てていました。

プログラムの解説やCamera MountなどRPyScanハードウェアの説明、さらに会場から被験者を募集して3Dスキャンをするデモを実施しました。その装置であらゆる角度からの写真を撮影したら、3Dモデルの生成サービスを使用して3Dモデルを生成していました。

このセッションは内容が素晴らしいだけでなく、堂々とした態度で英語によるセッションをこなす高校生たちの姿が印象的でした。

参考リンク

スライド

セッション概要ページ

日本からの参加者で夕食

図21 青葉での夕食の様子
図21 青葉での夕食の様子

1日目終了後は日本からの参加メンバーが中華料理店「青葉」に集まり夕食を取りました。今年は日本からの参加者が20人弱と予想よりもかなり多く、海外のPyConに不安があった筆者にとって心強かったです。話を聞いたところ、2012年以降日本からPyCon Taiwanに参加するメンバーが増え続けているらしく、海外のPyConとの交流が活発化していることが感じられました。

筆者はこれまで海外で英語の発表をする経験が一度も無かったのですが、実はカンファレンス2日目にライトニングトークを行います。この夕食の場には筆者以外にも、2日目にライトニングトークで話す方が1人、トークセッションで話す方が2人いたため、英語によるプレゼンをする時のツールやウケるネタについての話が盛り上がりました。

特にこれまで何度か海外のPyConで発表経験のある清水川@shimizukawaさんが、スマホの画面をタッチするとレーザーポインタのようにPowerPointのスライド上に赤い点が表示されるアプリを使っているという話は面白かったです。

次回予告

本連載の第2回では、PyCon APAC 2015の2日目の様子をお届けします。2日目には一緒に日本から参加したメンバーのトークセッションや筆者のライトニングトークがありました。第2回をお楽しみに!

おすすめ記事

記事・ニュース一覧