「PyCon Taiwan 2012」参加レポート

PyCon Taiwan 2012, Day 0

この記事を読むのに必要な時間:およそ 4 分

6月9日,10日の2日間,PyCon Taiwan 2012が開催されました。日本から も数人のPythonistaが参加してきたので,数回に分けてレポートします。

PyCon Taiwanに行こう!

Python Conference(PyCon)は世界中で開催されています。PyCon Taiwanはそのうちのひとつで,2012年に初めて開催されました。日本では2回目となるPyCon JP 2012が9月中旬に開催さる予定で,現在講演内容を募集中です。

PyCon Taiwan 2012の開催概要は次の内容でした。

期間2012年6月9日,10日の2日間
構成2つの基調講演を含むシングルトラック
Program/PyCon Taiwan 2012
参加費用Early Bird(早期割引)1,300TWD
通常1,500TWD
会場Academia Sinica
参加人数260名(スタッフ除く)

昨年開催されたPyCon JP 2011に台湾から2人のスピーカーが参加してくれたということや,台湾で初めて開催されるPyConを応援したいという気持ちもあり,日本からPyCon JPのスタッフを中心に9名の日本人が参加しました。最初は4人ほどでしたが,あれよあれよと参加者が増えて大所帯になりました。

寺田 学
@terapyon
PyCon JP 2012 座長,ツアーコンダクター
清水川 貴之
@shimizukawa
PyCon JP 2012 副座長,撮影担当
保坂 翔馬
@shomah4a
PyCon JP 2012 広報,PyCon Taiwanでのプレゼン担当
森本 哲也
@t2y
Python Software Foundationメンバー,記事執筆担当
池 徹
@rokujyouhitoma
PyPy-ja総帥,迷子担当
村岡 ゆうすけ
@jbking
PyPy-jaメンバー,未払い担当
西本 卓也
@24motz
NVDA日本語チーム記事執筆担当
鈴木 たかのり
@takanory
PyCon JP 2012 スポンサー担当,記事執筆担当
文殊堂
@monjudoh
グルメ担当,PyCon Taiwanには参加せず台湾旅行を満喫

PyCon Taiwan参加メンバー

PyCon Taiwan参加メンバー

PyCon Taiwanへの参加費用

PyCon Taiwanへ参加するためにかかった費用は次の通りです。実際には3泊する人や違う航空会社を使った人などもいましたが,一番多い旅程はこんな感じでした。

China Air

China Air

項目金額(円)
PyCon Taiwan参加費用(早期申込割引):1,300TWD3,454
往復航空券(空港税,サーチャージ等含む)43,740
ホテル宿泊費(2泊)8,817
合計57,115

これ以外に食費や現地での移動費(MRT:台北の地下鉄,タクシー等)がかかりますが,総じて物価が安いため,3,4日であればぜいたくしなければ1万円くらいの現金で余裕で過ごすことができます。

また飛行機は羽田空港~松山空港を選びましたが,どちらも中心部からのアクセスが(成田,桃園に比べて)よく,さらに羽田空港の国際線ターミナルは空いていたため移動は快適でした。

以下,記事担当の3人がそれぞれ,どのように0日目(PyCon Taiwan前日)を過ごしたかをレポートします。

Mozilla Taiwan訪問

もりもとです。午後から寺田さんの知人でありMozilla Taiwanでコミュニティマネージャーを務めるBob Chao氏を訪問しました。そこではPyCon JP 2011に発表者として参加したThinker Lee氏も働いていました。Mozilla Taiwanは,2011年10月19日に設立されたばかりで,現在は開発者が25人,その他のスタッフが10人といった35人程度の組織のようです。

Thinker Lee氏(左)とBob Chao氏(右)

Thinker Lee氏(左)とBob Chao氏(右)

オフィスの休憩スペースでお互いの自己紹介を始め,それから1時間程度,ざっくばらんに歓談しました。最初のうちは,双方ぎこちなかったものの,そこは開発者ならでは,スマートフォンを取り出して彼らの開発しているBoot to Gecko(B2G)のデモを見せてもらい,話題に欠くことなく盛り上がりました。

B2Gは,レンダリングエンジンGeckoを使ったブラウザベースのOSで,アプリケーションをHTML,CSS,JavaScriptで開発できるのが特徴です。実際に実機で紹介してもらったアプリは,WebGLのサンプル,電話をかける,カメラでの撮影,動画再生でした。JavaScript,HTMLなど既存のウェブアプリケーションの技術をそのまま応用できるのが良いと思いました。

後述しますが,その日のディナーも彼らと一緒に楽しみました。急な訪問にも関わらず,暖かく迎えて頂いたBob Chao氏とThinker Lee氏に感謝します。

Mozilla Taiwanでの集合写真

Mozilla Taiwanでの集合写真

NVDA関連ミーティング

西本です。 私はチャイナエアラインで広島空港を出発,台北の桃園国際空港に到着しました。 一人で台北市内に移動,そして東京組のメンバー(寺田さん)と合流しました。

初日の私の活動はTaiwan Digital Talking Books Associationの訪問です。事務所は若者ファッションの街である西門町からすこし歩いた場所にありました。道路の名前と番地を頼りに歩き,近くの病院の人に教えていただいて,ビルの5階のオフィスにたどり着きました。理事長さんとスタッフの皆様から,私たちは温かい歓迎を受けました。

Taiwan Digital Talking Books Association(TDTB)は,視覚に障害のある方々の教育や就労を支援する非営利組織です。DAISY(オーディオブックの世界標準規格)の書籍を制作したり,コンピューターを合成音声で操作する方法を教えたりしています。そして,オープンソースのスクリーンリーダーNVDA(NonVisual Desktop Access) の,台湾におけるコミュニティの拠点でもあります。オフィスにはパソコンがずらりと並んでいました。すでに100人以上がここでNVDAのトレーニングを受けたそうです。

NVDAはPythonとC++で実装され,GPL v2でライセンスされているWindows対応のスクリーンリーダーです。オーストラリア在住の開発者を中心に精力的に開発が進められており,非営利組織NV Accessが,企業や利用者から寄付を集めて,活動を支えています。高価な商用のスクリーンリーダに匹敵する性能があり,世界的にシェアを伸ばしています。NVDAの国際化を支える翻訳ボランティアも世界で活動しており,現在は約40の言語に対応しています。

しかし日本語や中国語など,東アジア言語圏において,NVDAは実用的とは言えませんでした。標準の音声合成エンジンがこれらの言語に対応しておらず,また,かな漢字変換などマルチバイトの文字入力をサポートしていなかったからです。 日本ではNVDA日本語チームが,日本語の音声合成やかな漢字変換の読み上げ機能を追加した派生版をリリースしています。点字ディスプレイとよばれる装置に日本語の点字を出力する作業にも取り組んでいます。 一方NV Accessからは,台湾TDTBなどと協力して中国語対応を強化するという発表がつい先日ありました。このプロジェクトについて詳しく話を伺い,どのように日本から貢献をすればよいのか,意見交換をしたいと考えました。

NVDA関連ミーティングの様子

NVDA関連ミーティングの様子

まず中国語対応の方針について教えていただきました。台湾では中国語の繁体字が使われます。この文字をどのように入力しているのでしょう? 台湾で使われているキーボードをみると,アルファベットに加えて,ひとつのキートップに3種類もの漢字や記号が書かれています。台湾では使われている文字入力方式は,日本のかな漢字変換のように,文字の発音を入力して変換をする方式と,文字の形を入力する方式が,いずれも複数あり,入力方式が統一されていないようです。

では,スクリーンリーダーで使うときはどのような方法なのでしょうか? 見せていただいたのは嘸蝦米というソフトウェアでした。これは文字の形と意味と発音をすべて使って,ひとつの漢字をアルファベット2文字から3文字で直接入力してしまうというものです。例えば「本」は t e j で入力するのですが,最初の t は「本」という文字を構成している「木」つまり tree の t なのだそうです。すべての漢字を覚えるのはとても大変だと思うのですが,覚えてしまえば「候補選択」が必要ないため,スクリーンリーダーで扱いやすいのだそうです。この「嘸蝦米」を音声で使えるようにすることがNVDAの開発の目標だと伺いました。ちなみに「嘸蝦米」は,もともとスクリーンリーダー利用者のためのソフトではなく,入力効率にこだわる上級者御用達のIME(Input Method Editor)として販売されている製品だそうです。

私は,日本の音声合成エンジンや点字ディスプレイ対応の説明をしました。中国語対応の参考にしたいというだけでなく,台湾でNVDA日本語版を使って日本語の勉強をしたい人がいるのです。 同じ漢字を使う言語ではあるものの,日本語の説明は簡単ではありません。なぜひとつの漢字にいろいろな読み方があるのか,どう読み方を使い分けるのか,スクリーンリーダー利用者は読みの同じ文字をどうやって区別するのか。 テキストを点字ディスプレイに送るための変換(点訳)についても,世界で使われているオープンソースのライブラリが日本語をうまく処理できません。多くの言語では文字と点字が一対一に対応しているのですが,日本語の点訳は複雑です。例えば「東京に行く」「トーキョーニ イク」のような「読み」に変換し,適切に空白を入れて区切らなくてはなりません。

NVDAの日本語・中国語の対応を協力して進めていくために,このような情報交換の機会をもっと作りましょう,という提案を受けるとともに,私もぜひ日本にも来ていただけませんか,と提案しました。日本でのNVDA開発者イベントの実現に向けて,今回の私の訪問は大きな一歩でした。

また,NVDA日本語版を使って日本語を勉強をしたいという視覚障害の女性を紹介してだきました。⁠日本のアニメが好き」というので,どんなアニメを知っているのか聞いてみたら,まず「ケロケロケロ」⁠何かと思ったら(同伴のお姉さんの代筆で)⁠軍曹」という文字。どうやら「ケロロ軍曹」のようです。他には?と尋ねると「小丸子」という文字。これもすぐに分からなくて困っていたら「櫻桃」という文字が書き足されました。⁠さくらももこ」といえば「ちびまる子ちゃん」ですね。 台湾の人たちの,日本の文化への関心の高さに改めて驚き,嬉しく思ったのでした。

著者プロフィール

鈴木たかのり(すずきたかのり)

部内のサイトを作るためにZope/Ploneと出会い,その後必要にかられてPythonを使い始める。

現在の主な活動はPyCon JP 2015座長,一般社団法人PyCon JP理事,Python ボルダリング部(#kabepy)部長,Python mini Hack-a-thon(#pyhack)主催,Plone User's Group Japanなど。

共著書に『Plone完全活用ガイド(2008 技術評論社刊)』『Plone 4 Book(2011 Talpa-Tech刊)』『Pythonプロフェッショナルプログラミング 第2版(2015 秀和システム刊)』『Pythonエンジニア養成読本(2015 技術評論社刊)』がある。

趣味は吹奏楽とレゴとペンシルパズル。

Twitter:@takanory

Facebook:鈴木 たかのり

サイト:takanory.net


西本卓也(にしもとたくや)

NVDA日本語チーム 代表。

大学教員を経て個人事業者として独立。音声合成や音声認識,視覚や聴覚に障害がある人を支援する情報技術に興味を持つ。世界で注目されているオープンソースのスクリーンリーダー(画面読み上げソフト)NVDA日本語版の開発メンバー。共著書に『バージョン管理システム(CVS)の導入と活用』(ソフトバンク)がある。

Twitter: @24motz
ブログ: http://d.nishimotz.com/


森本哲也(もりもとてつや)

一介のプログラマ。

自分で設計して,自分で開発して,自分で直せるような独立したプログラマを目指している。OSSコミュニティのゆるい人のつながりが性にあっていてPythonプログラミングが好き。共訳書に『エキスパート Pythonプログラミング』(アスキーメディアワークス)がある。

Twitter:@t2y

ブログ:http://d.hatena.ne.jp/t2y-1979/

コメント

コメントの記入