RubyKaigi2008 スペシャル★レポート

RubyKaigi・アンド・ナウ――日本Ruby会議2008運営委員長の個人的なふりかえり

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海外からの招待基調講演の取りやめ

RubyKaigi2006ではRuby on Railsの作者であるDHHことDavid Heinemeier Hanssonを,RubyKaigi2007ではDave "達人プログラマー" Thomasを招待して基調講演としていましたが,今年はそれを取りやめて,発表はすべて一般公募(Call For Presentation : CFP)に応募してもらうことにしましたruby-talk:286198)⁠

この募集に対するDave ThomasからのRubyKaigiは私がこれまでに参加したなかで最も暖かく歓迎されたカンファレンスの一つという応援メッセージの効果もあってか,当初は日本語による発表よりも英語による発表の応募のほうが多いという状況でした。

結果的にRubyKaigi2008では海外参加者から,次のような方々が発表してくれました。

  • Chad FowlerとRich Kilmer(RubyConf,RubyGems)
  • Aaron Patterson(WWW::Mechanize,johnson.rb)
  • Charles Nutter(JRuby)
  • Evan Phenix(Rubinius)
  • Laurent Sansonetti(MacRuby)
  • Alex Kane(Tunecore.com)

また,厳密には海外参加者ではありませんが,会場に遊びに来てくれていたRamazeの作者であるMichael Fellingerさん(現在日本に在住しているそうです)からRejectKaigiでRamazeの紹介がありました。

発表者だけでなく,参加者についても昨年までに比べると格段に「日本人ばなれした」風貌の参加者が増えたのもRubyKaigi2008の特徴の一つでした。

今年参加してくれたChad Fowlerからは来年はもっと日本人以外の参加者が増えて言語障壁も低くなるといいねとも言われています。YAPC::Asiaの国際性を見習って,日本だけでなく世界中のRubyistから認知されるRubyKaigiにしていきたいと考えています。

マルチトラック化とセッション司会制

RubyKaigi2008ではメインセッションとサブセッションのマルチトラック化を採用しました。これはもちろん「多様性」という今回のテーマに応える試みでしたが,同時に「応募が多過ぎて1トラックではフォローしきれない」という切実な問題への対応でもありました。

また,メインセッションでは昨年までのような総合司会を置かずに,セッションのまとまりごとに識者にセッション司会をお願いする形式を採用しました。これは,セッション内容に造詣の深い人を起用することで,より深い良い発表に導ける可能性に挑んだものです。もう一つの狙いとしては,進行について「昨年との違い」を演出するものでもありました。

マルチトラック化そのものはおおむね好評だったと認識しています。RubyKaigi2008の参加者やスピーカのみなさんからいただいたフィードバックを踏まえて,進行やタイムテーブルを改善しながら今後もマルチトラックを前提にしてく予定です。

Ustream.tvによるストリーミング中継

公開までのタイムラグはさておき,RubyKaigiでは初回からセッションの録画を公開しています。今年は,従来通りのセッション録画に加えて,Ustream.tvを通じた会期中のストリーミング中継にチャレンジしました。

中継は会場に来れなかった人にも,雰囲気や内容を楽しんでもらえるようにという「参加形態の多様性」を実現する試みでした。配信の準備および現場での作業は,録画・配信の特別編成チームKaigiFreaksが中心に動いてくれました。

KaigiFreaksが今回のために作成したネットワークおよび録画・配信に関する資料がRuby札幌のサイトで公開されています。今後のカンファレンス運営の参考になれば幸いです。

事前のアナウンスが不十分だったこともあり,今回のストリーミング中継については賛否や懸念もいただいていますが,たとえ運営側で禁止したとても,今や誰にでも簡単に同様のことは行えてしまいます。であるならば,運営側が積極的にサポートしていくほうが賢明だと考えています。

RejectRejectKaigi

RubyKaigiでは第2回の2007年から発表を公募する方式(Call For Presentation : CFP)を採用しています。予定していた発表枠に対して非常にたくさんの応募があり,残念ながら多くを却下(Reject)せざるをえませんでした。こうした,RubyKaigi本編に通らなかった(または通りそうにない)発表を集めた「RejectKaigi」というイベントを,RubyKaigi2007終了後に開催しました。昨年のRejectKaigiでは19の発表が行われました(1つの発表あたりの時間は2分30秒です。これは丁度,ライトニングトークの半分の時間です)⁠

RubyKaigi2008でも昨年と同様にRejectKaigiでの発表を募集したところ,昨年を大幅に上回る31本の応募がありました(うち2本は発表者都合によりキャンセルされました)⁠そのため,RejectKaigiからさらにRejectせざるをえない事態になりました。かといって,RejectKaigiまでRejectして発表できないというのも応募者が浮かばれないので,急遽「RejectRejectKaigi」を実施することにしました。ただし,会場を借りている時間帯や撤収の都合もあるので,以下のような構成をとりました。

  • 1つの会場でRejectKaigiとRejectRejectKaigiを同一タイムラインで同時進行
  • 公平を期すためにマイクの利用はなし

本編終了後のカジュアルなイベントであることに発表者のヤケクソ感が重なり,双方の発表者が大声を上げ,歌い,ピアニカを鳴らすというかなり混沌としたイベントとなりました。おもしろかったです :-)

ただ,数多くの発表が却下され続ける状況というのも好ましくありません。⁠もっとおもしろいRejectKaigi」を求めるよりは,RubyKaigi以外にRubyに関する発表を行える場を用意するのが健全だと考えています。私がRejectKaigiの最後に発表したRegional RubyKaigiの御提案はそうした主旨にもとづくものです。

RejectKaigiの最後に発表した「Regional RubyKaigiの御提案」

RejectKaigiの最後に発表した「Regional RubyKaigiの御提案」

著者プロフィール

角谷信太郎(かくたにしんたろう)

(株)永和システムマネジメント,サービスプロバイディング事業部所属プログラマ。「『楽しさ』がシステム開発の生産性を左右する」と信じてRubyによるアジャイル開発を現場で実践するテスト駆動開発者。目標は達人プログラマ。好きな言語はRuby。好きなメソッドはextend。著書に『アジャイルな見積りと計画づくり』(共同翻訳),『JavaからRubyへ』(翻訳),『アジャイルプラクティス』(共同監訳),『インターフェイス指向設計』(監訳)。

URLhttp://kakutani.com/

著書