共有し,学びあい,Sansanはもっと成長する――Sansan Builders Boxレポート

後編 グローバル対応,インフラ,ユーザニーズ,さまざまな視点からアプローチし開発をするSansan――Sansan Builders Box[セッションレポート]

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創り手はユーザの声を聞け。定量だけではわからない「ユーザはなぜ使わないのか」に向き合う方法

最後に紹介するのはSansan事業部プロダクト開発部プロダクトマネージャー 尾部絵里子氏による,プロダクトセッション「創り手はユーザの声を聞け。定量だけではわからない「ユーザはなぜ使わないのか」に向き合う方法」です。

Sansan事業部プロダクト開発部プロダクトマネージャー 尾部絵里子氏

Sansan事業部プロダクト開発部プロダクトマネージャー 尾部絵里子氏

尾部氏は,クラウド名刺管理サービス「Sansan」の舵取りを行うプロダクトマネージャーで,これまでずっと「ユーザはなぜ使わないのか」に向き合いながらSansanに関わってきました。その過程で彼女が学んできたノウハウを,余すところなくお伝えします。

プロダクトアウトだからこそ持つ難しさ

尾部氏によれば,BtoBビジネスにはある種の難しさがあると言います。それは,サービスをユーザ自身の意思で導入していないため,利用のモチベーションが低い方も一定数いらっしゃること。

また,Sansanの名刺管理サービスはプロダクトアウトであり,強いニーズに基づいてできたサービスではありません。それも,利用者増加を難しくする一因であると述べました。

「導入済みの企業様でも,便利さに気づいてくださるユーザは導入後すぐにSansanを使っていただけます。一方で,それに気づいていただけないユーザにはなかなか使っていただけません。後者の方々にもプロダクトの価値を届けていくことが,私たちの使命だと思っています」と主張しました。

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市場のニーズよりも,企業が持つ意志を重視してプロダクトを開発し,市場に導入する考え方。

「問い」から始めよ

次に,尾部氏はセッションのメインテーマである「能動的な問い」の必要性について触れます。提示したのは,⁠いろいろやっても問わないと足りない」⁠職務に真面目でも問わないと足りない」⁠センスの良い問いとは」という3つの観点です。

まず,⁠いろいろやっても問わないと足りない」について。プロダクトマネジメントでよくいわれるのが,右脳と左脳,数字と生の声,俯瞰と熟視,主観と客観,受動的欲求を聞くことと能動的問い,のバランスをとることの重要性です。このうち「能動的に問うこと,が最も忘れられやすい」と尾部氏は指摘します。

問い合わせフォームやアンケート,ユーザ会などから寄せられる喜びや悲しみ,痛みなどの意見は「自分の想いを言語化できるユーザの声」だけに限られてしまいます。これらに応えていくことももちろん大切です。しかし,そうでないユーザの声を拾い上げること,彼ら・彼女らがどのような表情・ニュアンスで語っていたのかという「声なき声」を拾い上げることも,同じくらい重要になります。

「これらは,インタビューやユーザテストなどを通じて能動的に問わなければ,けしてわかりません」と尾部氏は提唱しました。

2つ目の「職務に真面目でも問わないと足りない」について。ユーザに近い立場である営業やCSは,生の声を直接いただく機会が多く,熟視もできます。一方で,エンジニアやデザイナーはユーザから遠い立場にいるからこそ,集約された数字を見たり,間接的な声を聞いたりと,状況を俯瞰的にとらえることができます。

ですが,担当ポジションによるバイアスがかかってしまい,どちらかに偏った視点になってしまうことが業務ではよくあります。ポジションの罠です。組織間で協力すればお互いに補完できるものの,その場合でも能動的問いが抜け落ちてしまうケースは多いです。⁠だからこそ,プロダクトマネージャーは能動的な問いを意図的に取り入れることが必要です」と尾部氏は語りました。

最後に「センスの良い問いとは」について。ここで,尾部氏は名著『ジョブ理論』で挙げられていた例を解説します。

ミルクシェイクの売上を伸ばすうえで「どうしたら売れるか?」⁠どうしたら使ってもらえるか?」を検討することは意味がありませんでした。そうではなく,⁠顧客は自分のどんな⁠ジョブ⁠がミルクシェイクを⁠雇用⁠させたか?」⁠ミルクシェイクの『本当の競合』は何なのか?」に基づいて問いを立てる必要があったのだといいます。

このエピソードは「問いの立て方」により上げられる効果が全く変わってくることを示唆しています。

適切な問いを立てることで,解決策が変わる

最後に,尾部氏はセッションの内容を総括し「アイデアを思いついたときに,まず考えてほしいチェックポイント」を挙げました。

  • 本当の競合や課題,解決したいジョブは何か
  • データやユーザの声でわかるのか。能動的に問いかけなければいけないのか
  • 欲しい情報を引き出すための適切な問いを立てられているか

「センスの良い問いを立てるには,本当に得たい情報や解決したい問題は,この問いでは得られないのではないかとまず疑うこと。適切な問いを立てて本当の競合や課題を知ることで,解決方法が変わるのです」と述べ,セッションを終了しました。

Sansanの今と未来がわかった1日

以上,前後編に分けて「Sansan Builders Box」の模様をお届けしました。⁠名刺」というメタファを,インターネットにつなげることで企業・個人,それぞれの資産・価値に変えるサービスを開発し続けるSansanの技術力,人財,組織を余すところなく公開したカンファレンスとなりました。

また,内容に加えて,会場内には,よく見かけるパイプ椅子ではなくリラックスチェアが用意され長時間でも聴講しやすくしたり,3トラックが同一フロアで同時進行している場合には,サイレントセッション(聴講者に専用のイヤホンを用意し,それぞれのセッションのプレゼンが干渉しあわない仕掛け)を実施するなど,非常にユニークで,Sansanとしての心配りを感じるカンファレンスでした。

用意されていたリラックスチェア。アメリカ西海岸ベイエリアでのイベントでたまに見かけるような,カジュアルでゆったりと聴講できる会場だった

用意されていたリラックスチェア。アメリカ西海岸ベイエリアでのイベントでたまに見かけるような,カジュアルでゆったりと聴講できる会場だった

サイレントセッション。壇上に上がっているスピーカが使用するマイクは,会場内に音を出力せず,各セッションの参加者のイヤホンごとに配信される仕掛けとなっていた

サイレントセッション。壇上に上がっているスピーカが使用するマイクは,会場内に音を出力せず,各セッションの参加者のイヤホンごとに配信される仕掛けとなっていた

今,多くの企業がテクノロジーを軸に,さまざまなサービス・プロダクト開発を行っています。そして,そのテクノロジーをオープンにし,さらなる高い品質を目指す姿勢は,これからの企業にとって,必須となっていくことでしょう。

Sansanのクリエイターたちによる技術ブログ
https://buildersbox.corp-sansan.com/

著者プロフィール

馮富久(ふぉんとみひさ)

株式会社技術評論社クロスメディア事業室室長。

1975年生まれ。横浜市出身。1999年4月株式会社技術評論社に入社。入社後から『Software Design』編集部に配属され,2004年1月に編集長へ就任。同2004年9月に『Web Site Expert』を立ち上げ,同誌編集長に就任,現在に至る。その後,2008年9月に設立したクロスメディア事業部(現クロスメディア事業室)に配属。現在,社外活動として電子書籍を考える出版社の会の代表幹事やWebSig 24/7のモデレーター,TechLIONプロデューサーなども務める。過去にIPAオープンソースデータベースワーキンググループ委員やアックゼロヨン・アワード他各賞審査員などの経験を持つ。

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