shibuya meets techレポート

#1アプリ戦国時代を生き残る、スマートフォン開発者の戦い

IT専門の人材サービス・アウトソーシング事業を行うパソナテックが6月1日、渋谷のコワーキングスペースLightningspot内にWeb制作やスマホアプリ開発、ソーシャルマーケティング事業を展開する「渋谷Lab(ラボ⁠⁠」をオープンしました。本記事では、オープニングイベントとして5夜連続で開催した「shibuya meets tech」イベントの様子を紹介します。

ユーザの急速な拡大と合わせてSAPやメーカがアプリを続々と投入し、混迷を極めるスマートフォン市場。こうした時代を生き抜くためにスマートフォン開発者は市場の変化をどのように読み取り、アプリ開発するべきなのでしょうか?

6月4日に開催されたshibuya meets techでは、岐阜県発のアプリ開発集団「だるまジャパン」メンバー2名がスマートフォン開発のスペシャリスト、株式会社GClue・佐々木陽氏と日本コロナの会・山本直也氏をゲストに招き、スマートフォン開発者が気になる市場動向、技術動向、開発戦略についてインタビューしました 。

インタビューセッションの模様
インタビューセッションの模様

スマートフォン開発者、生き残りのカギは自社アプリ

冒頭、だるまジャパンから挙がったテーマは「アプリ開発の現状について⁠⁠。このテーマに佐々木氏が自身の経験を踏まえて答えました。

「スマートフォン黎明期だった3年前は受託開発案件も少なかったので自社アプリをリリースしなければ土俵に乗れませんでした。やがて、スマートフォンがブームになると受託開発も勢いを増しますが、3年経つと市場が飽和してきます。そうすると、今度はユーザ獲得を狙う会社が増えてきます。スマートフォン市場のユーザ規模は大きくなる一方なので、次はこうしたモデルが市場を牽引するようになるのです。」

いまアプリ開発者が留意しなけなければならないのは、市場が3年目の転換期にあるということ。受託開発が増えた反面、品質・価格ともに競争は激しくなり、中小の開発会社ほど、作り込み要素の大きいスマートフォンの受託開発へは慎重に取り組み、ユーザ獲得を狙った自社アプリの展開を考えなければならないといいます。

この意見に、個人の開発者も巻き込んで膨張する市場はチャンスも多いと付け加えた山本氏。⁠スマートフォン市場は、個人でも有能な開発者が多いので、世界へ向けて、大手企業とは違うアイデアの切り口からアプリをリリースできれば十分に渡り合える市場です。たとえばcolonaで開発された国外5、000~6、000のアプリの中には14歳の少年が開発して1、000万DLを越えたケースもあります。」

「答える側」のGClue 佐々木陽氏(左)と日本コロナの会 山本直也氏
「答える側」のGClue 佐々木陽氏(左)と日本コロナの会 山本直也氏

3年は損をする覚悟で

続く「今、選択すべきプラットフォームはiPhoneとAndroidどちらか?」というテーマには佐々木氏から、

「世界でもiPhoneへの投資は多く、特に日本のようなマーチャンダイズ重視のSI企業が多い商圏ではituneストアという大きなマーケットは郡を抜いて魅力的に映ります。ただ、市場の先行きは読めないもので、例えば『自分達はネイティブアプリで攻めるんだ!』と狙っていても蓋を開けたらWebアプリの方が100倍、1000倍の売上を出していたという例だってあります。いずれにせよ失敗するリスクはあるので、自分の信じるプラットフォームで3年損をする覚悟で頑張ると市場が追いついてくるかもしれません。」

とエールを送られました。

GClueもiPhoneアプリ開発で売上好調なスタートを切ったものの、クライアントニーズに応えて昨年までAndroid開発にシフト。しかし、今はまた市場・クライアントのニーズに応じてiPhone開発メインに戻るなど、変則的な需要の波に合わさざるを得ない受託開発の難しさを語ります。だからこそ3年周期で流動する市場で、今、どれだけリスクを取って自身のノウハウと実績を蓄積できるかが重要とのこと。

収益を生む『突破力』

次にマネタイズについても質問が投げかけられました。この質問に対して山本氏から、リアルのプロダクトと連携するモデルについて意見が挙がりました。

「アプリにはメディアに近い側面があります。アプリ単体にだけ収益を期待するのではなく、業界(飲食、出版など)のプロダクトと連動して付加価値を高めるようなアプリを展開し、マネタイズに貢献していくのは有望なモデルです。」

佐々木氏も山本氏の意見に同意しつつ別の視点からも考察します。

「体力のある会社であればアプリを本数多くリリースして確率論でアタリを手繰り寄せる戦略もありですが、そうでない会社ならば寝る暇を惜しんで良いアプリの開発に励むべきです。東南アジアをはじめ世界の国に目を向ければ、日本の半分の人件費で努力する会社もあるほどですから。」と、生産性に留意したアプリ開発戦略の重要性を示唆しました。

また、⁠良いアプリの開発に励むべき」という意見に、だるまジャパンから「良いアプリ開発のコツはありますか?」と疑問が投げかけられました。

これに佐々木氏が答えます。

「目標に対する『突破力』次第です。突破力がないと時間密度がどんどん薄くなってしまい自己満足で完結してしまいます。世界中にライバルがいて、同じ時間の中にいるのに失敗する人と成功する人に分かれるのは時間密度(そこから生まれる突破力)の違いによります。時間密度が濃ければ、そのぶん多く失敗できる余裕も生まれます。」

「必死さや強い目的意識が突破力となり、時間密度を濃くします。」

聞き手のだるまジャパン 水野将史氏(左)と尾崎慎一氏
聞き手のだるまジャパン 水野将史氏(左)と尾崎慎一氏

スマートフォン開発のトレンド

3つ目のテーマとして、スマートフォン開発における現在のトレンドやスタンダードについて、それぞれの意見を伺いました。

最初に応えたのは佐々木氏。

「完全に技術志向からユーザ志向にシフトしました。かつては、ライバルが実装できない高度な技術でアプリを作れることがアドバンテージでしたが、結局、技術の難易度はユーザに受け入れられることと関係ない。今は、いかに開発プロセスを合理化して、ユーザへ高速に一定品質のアプリを提供できるかが肝心なのです。」

合理化という視点で現場をみれば、ネイティブでの開発体制が10人、20人と大きくなってくると歩留まりが発生し、品質の劣化や遅延に繋がるとして、Gclueの現場では開発ツールを導入して適切な人数で効率よく開発できるようにしており、また、エンジニアに対しても技術の難易度より成果を評価しているとのこと。

続けて山本氏もフィーチャーフォン時代からの変遷を振り返りました。

「フィーチャーフォンは機能の作り込みから始まり、やがて、キャリアの独自のプラットフォームに対応するコンテンツ開発主流へとシフトしました。今、そうしたモバイル市場を変えているのがスマートフォン。プラットフォームは開発者に対してオープンで、コンテンツ開発においてもColonaやPhoneGapのようなSDKが登場したり、クラウド上でアプリが稼働するような仕組みが整っています。デザインやUXの素養が強く求められていることも開発者にとっては大きな変化です。」

最後に

イベントの締めくくりとして、だるまジャパンから、小規模メーカのアプリがランキング上位を占めていたり、2日に1本というハイペースでアプリをリリースするSAPがある盛んな現状を踏まえてスマートフォン市場攻略の勘所を問いました。

佐々木氏は、⁠儲かっている会社が増えてきているのは事実。さまざまな会社から成功事例を直接聞きくのが一番の勉強になります。市場のユーザ規模が2,000万から最終的には6,000万まで膨らむとを考えると、流行の3番手4番手くらいまでビジネスとして成り立つのが現状です。」と前置きした上で、⁠時として食べていく手段がやりたい事を上回るのは悩ましいところですが、最後は『自分たちが何をやりたいのか』という問いに帰ってきます」と語りました。

山本氏も、⁠多くの人がスマートフォンでサービスやアプリを展開できるオープンプラットフォームに注目したいです。あらゆる業種が持っているwebサイトやサービスと連携できる将来性。あるいは、一般ユーザから面白いコンテンツが生まれる可能性がスマートフォンにはあります。また、勉強会やネット上のコミュニティもオープンだし、ユーザの声を聞きながら開発できるのもスマートフォン開発の面白いところ。」と述べ、こうした市場を楽しみながらスマートフォン開発してほしい、と締めくくりました。

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