世界最大のPythonカンファレンス「US PyCon 2019」レポート

第1回 US PyConへの道,1日目キーノート「Pythonこの10年」,注目セッション~日本からのLT参戦

この記事を読むのに必要な時間:およそ 6 分

オープニング

いよいよ5月3日となってカンファレンスが開始しました。オープニングはConference ChairのErnest W. Durbin IIIさん@ewdurbinさんの進行ですすめられました。最初に「Welcome」で参加者にようこそと伝えて,⁠Thank Yous」というタイトルで関係者へのお礼などを言っていく感じです。

3番目の話が「Code of Conduct(行動規範⁠⁠」の話でした。Code of Conductについては毎日オープニングでも触れられていて,重要に考えていると感じました。また,Code of Conductがあるだけではなく,なにかあったら連絡をちょうだいと「電話番号とメールアドレス」が用意してあるのはよいなと思いました。いきなりSNSに書き込まれて炎上することは誰にもメリットがないと思うので,連絡先を明記するのは大事だなと思いました。

Conference ChairのDurbin氏によるオープニング

Conference ChairのDurbin氏によるオープニング

あとは会場案内や食事やスポンサー,5トラック95セッション(すごい数ですね)あること,Open Spacesなどの案内がありました。

また「PyCon Hatchery」という名前でいくつかの新しい試みの紹介がされていました。スペイン語トラックのLas PyCon Charlas,The Art of Python,Maintainers Summitなどです。他にはパックマンルールといって,輪になって話をするときには人が入れるスペースを作ろうって話などがありました。写真に写りたくない人はネームタグに専用の赤いリボンをつけてくださいというアナウンスも,感心しました。

そしてなにより驚いたのが,このオープニングをはじめすべてのキーノート,トークに英語の字幕がリアルタイムに付いていると言うことです。おそらくリアルタイムでプロの方が入力していると思うのですが,すごいです。耳が聞こえにくい人だけでなく,私のように英語を聞き取る能力が低い人にとっても「なにについてしゃべっているかわかる!!」となるので,とてもありがたいなと感じました。

トークに字幕がついてわかりやすい!

トークに字幕がついてわかりやすい!

キーノート:Russel Keith-Magee

オープニングに続いて1日目のキーノートであるRussel Keith-Magee氏の発表が始まりました。ビデオとスピーカー自身によるテキストの書き起こし(ありがたい)がブログから参照できます(項末参照⁠⁠。

Russel Keith-Magee氏

Russel Keith-Magee氏

氏はDjangoのコアデベロッパーであり,世界中のPyConやDjangoConで発表してきたそうです。Djangoは2006年からコアチームに入っていますが,オーストラリアの西海岸にあるパースに住んでいることもあり,2008年まで他のコアメンバーには会っていなかったそうです。

まず最初にブラック・スワン理論になぞらえて,Pythonで過去10年間に発生したブラック・スワンな(予測できない)できごとについて語りました。それは以下の4つです。

ブラックスワン1: 誰もがノートPCを使っている
以前はデスクトップやサーバーしかなかった。10年間で誰でもノートPCやタブレットでプログラミングができるようになった。
ブラックスワン2: Pythonはサーバーにとどまる
すべてのPythonがノートPCで動作するわけではなく,Webアプリケーションを書くためにもPythonを使用できる
ブラックスワン3: インストールは解決済みの問題
xkcd: Python EnvironmentでPythonのパッケージ管理について複雑であるというマンガがありますが,現在はその問題は解決しています
ブラックスワン4: コード配布は問題にならない
作成したPythonのコードをどのように配布するかの方法は統一されていないが,そこは問題にはならない

続けて,現在氏はBeeWareプロジェクトで活動しているという話がありました。このプロジェクトは1つのコードからLinux,Windows,macOS,Android,iOS,ブラウザ(Django)で動作するアプリーケーションを作成するというものです。現在は概念実証(Proof of Concept)の状態だそうです。

後半はアメリカズカップ(ヨットの国際大会)で,1983年にはじめてアメリカ以外のチーム(オーストラリアのパース)が優勝した話になぞらえて,チームの重要性などの話がありました。個人的に印象的だったのは,バーンアウト(燃え尽き)についての話です。氏は15年間Djangoのメンテナーをしているそうですが,2015年初頭にDjangoコミュニティでの自身の貢献に対して大きなプレッシャーがあり,燃え尽きたそうです。現在もコミュニティの一員ではあるが,少し距離を置いているそうです。

最後にコミュニティを健全に進めていくために,以下のようなアクションをとろうという提案がありました。

  • アクション1:ブラックスワンについて考えはじめる
  • アクション2:維持管理とR&Dのためのリソースを改善する
  • アクション3:貢献者とその貢献を評価する
  • アクション4:寄付をする

私自身,コミュニティの継続性や燃え尽きなどについては考えさせられる部分がありました。自分がとれるアクションをしていきたいなと感じました。

スピーカーによるブログ
Where do you see Python in 10 years? -Ceci n'est pas un blog

著者プロフィール

鈴木たかのり(すずきたかのり)

一般社団法人PyCon JP,副代表理事,株式会社ビープラウド所属。

部内のサイトを作るためにZope/Ploneと出会い,その後必要にかられてPythonを使い始める。PyCon JPでは2011年1月のPyCon mini JPからスタッフとして活動し,2014年-2016年のPyCon JP座長。他の主な活動は,Pythonボルダリング部(#kabepy)部長,Python mini Hack-a-thon(#pyhack)主催など。

共著書に『Pythonによるあたらしいデータ分析の教科書(2018 翔泳社刊)』『Pythonプロフェッショナルプログラミング 第3版(2018 秀和システム刊)』『Pythonエンジニア ファーストブック(2017 技術評論社刊)』『いちばんやさしいPythonの教本(2017 インプレス刊)』などがある。

最近の楽しみはPython Boot Campの講師で訪れた土地で,現地のクラフトビールを飲むこと。2019年は世界各国のPyConでの発表に挑戦している。趣味は吹奏楽とボルダリングとレゴとペンシルパズル。

Facebook:takanory.net

Twitter:@takanory

Github:takanory