戦略的Webマーケティングセミナー開催

戦略的Webマーケティングセミナー開催(その3):パネルディスカッション「お金に繋がる~Webの価値」

最終回となる今回は、⁠Web Site Expert』の連載キーパーソンが見るWeb業界でもおなじみの阿部、森田両氏と、本日スピーカーをつとめた河田氏、さらにクライアント側の立場から花王 本間氏が参加したパネルディスカッションが行われました。

セッション4:お金に繋がる~Webの価値

セミナー最後を飾るのは、パネリスト4名によるパネルディスカッション。制作サイド(コーポレート/プロモーション⁠⁠、広告ベンダ、企業サイドと4者4様の立ち位置で議論が進みました。
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本セミナーの最後は「セッション4:お金に繋がる~Webの価値」と題したパネルディスカッションです。パネリストに阿部淳也氏1PAC.INC. 代表取締役⁠⁠、本間充氏花王⁠株⁠ Web作成部ディレクター⁠⁠、河田顕治氏オーバーチュア⁠株⁠⁠、森田雄氏⁠株⁠ビジネス・アーキテクツ 取締役・Quality Improvement Director)を迎えて行われました。

ワンパク代表取締役
クリエイティブディレクター、阿部氏。
ワンパク代表取締役クリエイティブディレクター、阿部氏。

本編に先駆けてモデレータ・馮氏(⁠⁠株)技術評論社)のMCで全員の自己紹介。⁠Webにこだわらず幅広いメディアでのコミュニケーションツールを制作している」という阿部氏や「企業のWebディレクターとしてディレクションの立場から話せれば」と語る本間氏、⁠販促現場に近いサービスの人間として広告主の本音などもお伝えしたい」との河田氏。そして「Webを中心にコミュニケーションデザインをやっているWeb制作会社の中の人です」との回答で会場を沸かせた森田氏と、4者4様の立場でご参加いただきました。ディスカッションは馮氏から提案された4つのトピックを軸に進むことに。

1.Web業界の2009年

2009年を俯瞰するにあたり、2008年の状況も込みで回答していただいた一つ目のテーマ。 ⁠2009年は現実世界のネットワークにつながるコミュニケーションや、紙媒体などにもつながる仕組みが作りたい。これまでネットに足りなかったライブ感や時間共有の概念が出てきそう」という阿部氏や「Twitterなどの広がりもあって、ブログに書かれた感想の共有から一緒に見て盛り上がった感覚をブログで共有する形が増えたと思う」と同意する森田氏などまずは「ライブ感」がキーワードとしてあがりました。

他方、コーポレートサイトではCMS導入とツールの淘汰傾向があるという指摘もあり、企業側の本間氏も「確かにCMSの淘汰が進んでいます。企業型CMSも安定してきましたね、逆に言えば今後進化がないということなのかもしれないですが」と語った上で、キャンペーンやプロモーション用ガジェットの純粋な反響・効果とタレントの関連づけへの悩ましさを打ち明けていました。とはいえ「ブログの普及のせいかタレントさんがネットへの露出に抵抗が少なくなった気がする」という発言にも見られたように、ブログや動画が広まったことでネットメディアが一般的により身近になったことは全員が実感していました。

オーバーチュア
マーケティングコミュニケーションズ
マネージャー、河田氏。
オーバーチュア マーケティングコミュニケーションズ マネージャー、河田氏。

「ネットメディアの価値が高まる中で広告的視点から見て、検索エンジンのマッチングのさせ方などに変化などはあったのか」という問いに「実はテキスト検索とタレント名の連携は難しいんです。興味本位での検索が多く広告出稿にはあまり繋がらないので‥‥」と苦笑気味の河田氏。過去のプロモーション失敗例などの例も挙げられる中で、⁠ブランディングとかけ離れたタレント優先のプロモーションだと価値は低い。広告主がそこを意識できるようになれば効果もあがるのでは」という本間氏の提案に、現在のネット広告の状況が垣間見られました。

2.Webの表現手法~作り手からクライアントへの提案(制作側)

表現手法の話から2つめのテーマへ。Webの表現手法について制作側は今どんな提案ができるのでしょう。冒頭のキーワード「ライブ感」も絡めつつ、ディスカッションは進みます。

「FMS(Flash Media Serever)サーバ上でデータを一緒に見ているという共有感というか、波状的なライブ感があるキャンペーンやプロモーションが増えてきている気がする」森田氏や「Webから現実へと繋がる物がライブ感にも大切になってくると思う。Web系の人たちが他の分野でも活躍するようになって、コミュニケーションの本質を考えてクリエイティブするようになるのが今後の理想」という阿部氏の発言には、どこかしらクロスメディア的な流れも感じられます。

「企業側から期待することは?」という問いに、⁠最終的に顧客が商品を買ってくれることがゴールであって、Webはそれを後押しする上での有効なツールだと思う」と本間氏。顧客を購買に向かわせるライブ感の重要性、顧客の意向が満たされない現在の企業サイトの状況も含め多面的な分析が行われていました。

ビジネス・アーキテクツ
取締役、森田氏。
ビジネス・アーキテクツ 取締役、森田氏。

日本におけるテレビの影響力と共に「だからナショナルクライアントは他のメディアにCM予算を回せないんです。でもWebプロモーションではテレビCMにも作れないライブ感が出せますよね。そここそがWebサイトの強みだと思う」と本間氏が発言すると、森田氏からは「Web以外のアイデア(たとえばテレビCMなど)を提案した途端にクライアントがCM制作会社の方に流れてしまう。そういった提案はCMも取り込んだ上で、Webからのコミュニケーションをディレクションしたいという意味なので⁠Web屋⁠という認識で対峙されてしまうとうまくいかないことが多い」との苦言が。それを皮切りに、このタームでは「Webでできないこと・テレビではできないこと」の判断基準を新たに提案していく行動の重要性、優秀な人材が失われつつあるWeb業界の構造や問題点などについて熱い論議が交わされました。

また、⁠広告予算が伸びることのない2009年にWeb業界がやらなければならないことは、マス広告から予算をどれだけシフトさせてトータル収支モデルをよくするか。テレビや雑誌とどれだけ戦えるかが大事」という本間氏、⁠代理店からのプロモーションは、他メディアで予算をとってからWebにまわってくるので、予算的にも提案的にも難しいところがある。また、コーポレートの場合は広報案件になりがち。宣伝としての全体予算からWebにどれだけ調達できるかという工夫が大事」という森田氏など、Web制作業界が考えなければならないことは山積みのようです。

3.Webの効果測定~何を見て、何を期待するのか?(企業側)

花王 Web作成部ディレクター、
本間氏。
花王 Web作成部ディレクター、本間氏。

では、クライアントである企業の動きはどうか。これは自分の考えですがと前置きした上で、⁠今年削減されたテレビCM予算は今後もおそらく増えません。なぜならCMを打たなくても売れるという規制事実が生まれるから。そこで大事なのは、今のうちにWebサイトでの売り上げアップ実績を作り出すことです。もしテレビCM費用の削減分しか充てていないのにWebが実績を残していれば、Webに投資したほうが効果的だという投資モデルができるはず。僕はそこに期待したい」と本間氏は力説。⁠効果測定の本質が出ていますよね」という阿部氏を筆頭にパネリストも頷きます。

クライアントごとの指標の違いを把握した上で制作サイトのレビューや評価を必ずしてもらうこと、KPI設定が曖昧な場合は一緒に設定するレベルまで踏み込むことの重要性が提言されたことを受けて、河田氏も「Web、マスそれぞれに適した物を考えて活かすことを広告主も意識して制作側と一緒にやるべきですよね」と頷いていました。Web制作や効果の経験則を持つ制作会社と利益計算に強いビジネスパーソンをいかにつなげて作業できるかが、今後の重要なポイントになりそうです。

モデレータを務める
技術評論社、馮。
モデレータを務める技術評論社、馮。

また「クライアントと制作側のパートナーシップの重要性を考えた上で、あえてWebサイトにメリットを求めるとしたら?」という質問には、⁠Web制作会社だからこそ思い浮かぶ他メディアでのクリエイティブ。たとえば、導入や気づきの段階でAR(拡張現実)を活用するなどのアイデアはをWebをやってないと思い浮かばない方法だと思う」という阿部氏の回答のほか、企業IRやリリースなどWeb専用コンテンツのROI指標問題の改善なども含め、クライアントと制作会社が協業することで後々のメリットに繋がるのでは、という発言などもありました。

4.まとめ

ディスカッションの最後は「今後について」、パネリストのみなさんから一言ずついただきました。

阿部:「ネガティブワードの多い世の中ですが、だからこそ積極的にいろいろなことに取り組んでいく方がいいと思います。新たなデバイスやコミュニケーションを作りつつ、それを元にパートナー探しができれば来年は明るくなるのでは⁠⁠。

本間:「一人ではできないことが多い状況なので、うまくチームを作って活動してほしいですね、もしくはぜひ声をかけてください。業界全体のベースアップを図るためにも、提案や接触を積極的にしあうことで双方向的な活動ができればと思います⁠⁠。

河田:「不景気だとみなさん確実な買い物をしたいと思いますから、オーバーチュアの検索ビジネス的には向上すると思います。だからこそ、広告主にとって意味のある、役立つ情報を勉強して提供していきたいですね⁠⁠。

森田:「SEOでは結果が良くなることを前提にしていたりするのですが、KPI設定と運用と改善とっていうサイクルは、成果の上下を検証して改善していくということです。すぐにいい結果が出なかったからといって尻込みする必要はなく、どうしてうまくいかなかったのか、どうすれば改善するのかということをクライアントと協力して取り組んでいき、長期的な視点と予算の取り方で今年を生き抜こうって感じです⁠⁠。

最後は馮氏が「自分たちに何ができるか、実際に動いてパートナーと何ができるかを考えることが大切ですね。そうすることでお金にも繋がり、最終的には業界以外にも影響が起こりWeb業界のベースアップになっていくと言えるでしょう」とまとめ、最後の質疑応答も含めたっぷり70分のディスカッションは幕を閉じました。

質疑応答の際にも、さまざまな議論が交わされました。
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