Adobe開発者向けカンファレンスの詳細をお届け! Adobe MAX 2007 レポート

Adobe Systems社主催の開発者向けカンファレンスAdobe MAX 2007⁠旧Macromedia MAX)が、米国シカゴにあるMcCormick Place Westにて開催されました。開催期間はプレイベントを含め9月30日~10月3日。事前登録者は3500人を超えチケットはSOLD OUTとのことでした。本レポートでは、イベントの雰囲気を交えながら、Flash、Flexをはじめとした要注目の技術情報を厳選紹介します。

実装&デモ満載の今年のMAX

同社のチーフソフトウェアアーキテクトKevin Lynch氏のオープニングトークで本格的に始動したMAX 2007。基調講演では「Web」⁠デスクトップ」⁠モバイル」といった既存のアプリケーションの枠組みを越えた数々のデモンストレーションが展開され、Adobe Systems社とMacromedia社の合併後の方向性がアプリケーションという具体的な姿で鮮明に発信されました。

やっぱり花形Flash Player

Flash Playerに関しては2点の発表。動画再生機能を強化したマイナーバージョンアップ「Moviestar」⁠Flash Player 9.1相当)とメジャーバージョンアップ「Astro⁠⁠。Astroは開発者の間で関心が高まっていた3D効果がシンプルながらも実装されました。テキストレイアウト処理に関しても新たにPlayerレベルで吸収する形で機能向上し、デモンストレーションでは各国語のハイフンネーションや日本語の禁則処理が披露されました図A⁠。

図A Astroのテキストレイアウト処理
図A Astroのテキストレイアウト処理

Thermo登場&ワークフローの変化の兆し

開発中の「Thermo」が登場すると会場からどよめきが! ThermoはRIA(Rich Internet Applications)デザインツールで、GUIによるUIの描画に合わせたMXMLコードが生成されます図B⁠。Flex Builderとのデータキャプチャが可能で、Thermoが生成したMXMLコードにFlexでロジックを埋め込む、そしてThermoでUIの追加修正作業も可能。

開発者・デザイナ間でプロジェクトを共有可能になる点で、既存のワークフローに対する画期的な製品とされています。Photoshop、Illustrator、Fireworksからの取り込みも紐づけられていて、デザイナはCS3スイート、開発者はFlexフレームワークという既存の作業形態を尊重しつつ開発への機動的な参加を促すというストーリーも重視しているとのこと。

図B ThermoによるUIデザインのデモ
図B ThermoによるUIデザインのデモ

完成度の高まったFlex 3

RIA開発のコアであるFlexの新バージョン「Flex 3」⁠コードネームMoxie)は業界要注目の話題でしょう。現在、Flash Playerの99%近い普及率を誇る「Web」は、Flash Liteの採用が進む「モバイル⁠⁠、さらに「組み込み機器⁠⁠、クロスOSのデスクトップアプリケーション実行環境「AIR」⁠Adobe Integrated Runtime)に至るまで、⁠一つのプラットフォームとしてのFlash」という姿が見えてきました。FlashベースのFlexはこれらに共通するアプリケーション開発基盤、この点はなんともシンプル。

さてFlexはエンタープライズ分野では着々と実績を積んでおり、基調講演では、

  • Flex Profilerの登場図C
  • AdvancedDataGridなどデータの視覚化を強化する新たなコンポーネント
  • アプリケーションのサイズを縮小するFlex Framework Caching
  • リファクタリング機能の向上

など、開発者からの技術的な期待に応えた点が強調され、同社製品スイートの次段階に見据えて、開発コアのFlexはすでに準備が整いつつあることが印象付けられました。

FlexはAIRとともにベータ2がAdobe Labsで公開され、すでに安定化やセキュリティといった点を固める段階に突入のようです。正式版のリリースは2008年前半予定とのこと。

図C Flex Profiler
図C Flex Profiler

Flex/Flashの今後!?

研究開発中の情報がお披露目となるセッションSneak Peak。今年はシカゴにちなんで映画『Bruce Brothers』風の演出でした。そこでも「Flex Builder for Linux」⁠Flash on C/C++」といった気になる発表がありました。前者はFlexのEclipseプラグインのLinux対応を段階的に進める旨の内容。後者はC/C++の既存のコード資産をActionScript 3.0でラップできるようにするというアプローチ。

さらにFlex関連セッションによると、Flex 4以降の開発ミッションについて「より機動的な開発を促進する」⁠デザイナからの要求の高い)ピクセル単位で実現するデザイン表現およびインタラクションを提供する」がポイントになっているようです。それらを具現化するための試みとして、デザイナ向けThermo/開発者向けFlex Builder間のコード生成機能やグラフィックス機能の密な連携、⁠カスタマイズを前提とする)グラフィックスのコンポーネント化など、すでに他製品を巻き込みつつ開発が進んでいるようです。

オープンソース戦略

そして、今年4月にアナウンスがあったFlexのオープンソース化。今回「Flex Open Source」と題したセッションではFlex 3 SDKを中心にオープンソース化の具体的な指針、開発体制についての詳細が示されました図D図E⁠。対外的なインフラとしては公開バグデータベース、Adobe Forumが中心となる形式。ライセンスはMozilla Public License。

オープンソース化という試みは個別の開発者にとっても、これから成熟していくであろうRIAコミュニティにとっても一層の進化の助けになる、そんな期待が高まりつつある印象です。

図D オープンソース化の指針
図D オープンソース化の指針 図D オープンソース化の指針
図E 開発体制の紹介
図E 開発体制の紹介

SaaS、Web標準、そしてAIR

SaaS(Software as a Service)分野からは、コンテンツ共有サービスのSHAREやリアルタイムコミュニケーションサービスを提供するCoCoMoなどが開発状況と合わせて一挙にお披露目されました。これらにはときにLightweight Serviceという表現も用いられているそうで、アプローチにはいくつか特徴が見受けられます。

  • Web標準を重視・採用している
  • Webの従来の非同期処理と異なる同期するコミュニケーションを呈示している
  • (閉じたパッケージではなく)Web APIやコンポーネントという形でマッシュアップ可能なパーツとして提供される
  • Adobe Systems社がサービスをサーバサイドでホストする

サービス自体の紹介と合わせて、全体として「Web標準」⁠Webサービス」を指向しているという点が強調されていました。これはWeb技術をそのまま活用し、さらにブラウザを超えAIRと結び付くことで、Web標準さらには広くWebサービスと、AIRが融合して先進的なAIRアプリケーションが生み出されるための道を切り拓く可能性を期待した試みでもある模様。

エンタープライズソリューション

さて現在、同社が支えている二大フォーマットというと、FlashとPDFです。いまやRIAの代名詞でもあるFlashの持つ「コンテンツの表現力」というのは現状なかなか代替しにくいというのが開発者に共通する見解。一方PDFのドキュメント再現性やマネージメント力はビジネス分野ですでに定評があります。

そんな同社のサーバサイドソリューションとして、定番アプリケーションサーバスイート「ColdFusion」に加え、新たにPDF、Flash、HTML/Ajaxをはじめとしたクライアントをサポートする統合バックエンドへと進化を遂げた「LiveCycle」も、重要度の高い製品として複数のセッションが組まれていました。

詳細はココにアクセス!

4000人にものぼる開発者が一同に会したAdobe MAX 2007。本レポートではそのほんの一部しかご紹介できませんでしたが、実装や最新情報が集結した実験的なサイトがオープンしています。また、11月1日~2日には「Adobe MAX Japan 2007」がついに日本、東京で開催されることが決定。ご興味を持たれた方は、チェックしてみてください。

※)
XDとはUIに留まらずシステム全体で実現する業務や体験というレベルでユーザの視点・立場に立って開発する概念。上記のサイトではさまざまなケースをはじめXD最前線の情報が集められている

おすすめ記事

記事・ニュース一覧