レポート

クラウドコンピューティングEXPO 2010

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骨太国産技術による「リアルクラウドソリューション」――ITホールディングス

口うるさい技術者に言わせると,クラウド技術そのものに革新性はなく,すべて20年以上前のテクノロジであり,サーバも中央集中管理となり時代に逆行しているとさえみなされてしまうことがある。サービス指向の時代にあって,それはやむを得ないといえばやむを得ないのだが,⁠クラウドコンピューティングEXPO 2010」にちょっと骨太なクラウド技術の展示を発見した。

ITホールディングスのブースで「リアルクラウドソリューション」として展示されていた並列分散型のクラウドコンピューティングを実現するテクノロジだ。ITホールディングスという会社は,国内外65に及ぶ独立系IT企業グループを統括する持ち株企業だ。傘下にはTIS,インテックなど有力なIT企業が名を連ねている。ブースは各グループ企業から選りすぐったクラウド技術やサービスが展示されていた。

インテックシステム研究所のリアルクラウドソリューション

インテックシステム研究所のリアルクラウドソリューション

「リアルクラウドソリューション」は,グループ企業のひとつインテックシステム研究所が開発しサービス展開しているものだ。この技術は,ありがちな仮想化サーバ群をデータセンターに構築してネットワーク経由でサービス提供する(このようなクラウドを同社では疑似クラウドと呼んでいる)のではなく,ネットワーク上に分散したサーバ,またはサーバ群(データセンターでもよい)を独自技術のプロトコルによって連携させることでクラウド環境を構築する。

各サーバは,自律型のノードとして連携や接続はスケーラブルに展開できる。自律型なので管理サーバや管理ノードを必要とせず,ノードの台数にリニアなスループットでシステムをスケールアウトできるという。

リアルクラウドは,クライアント側からNFSやiSCSIに接続されたファイルシステムやストレージとして見えるようになっている。クライアント端末はアクセスノードを通じてコアノードであるストレージ本体にアクセスするが,アクセスノードはロードバランシングやフォールトトレラント(FT)機能を持っており,また,コアノードのミラーリングや冗長構成も可能で,パフォーマンスと信頼性を確保している。

応用としては,コンテンツアーカイブのような大容量ストレージが考えられる。アプライアンス製品ではストレージサーバになっているが,ノードは汎用IAサーバでOKなので,将来的にはサーバリソースのクラウド化も検討している

応用としては,コンテンツアーカイブのような大容量ストレージが考えられる。アプライアンス製品ではストレージサーバになっているが,ノードは汎用IAサーバでOKなので,将来的にはサーバリソースのクラウド化も検討している

リアルクラウドのシステム構成概要

リアルクラウドのシステム構成概要

サーバは,現在ストレージソリューションとしてのサービス提供がメインであり,アプライアンス製品として提供しているが,原理的には汎用IAサーバを任意にクラウド化できる。P2P的に分散したノード(プロトコルはP2P技術ではないそうだ)でも,データセンターとして構成されていても問題ない。将来的には,ストレージだけでなく汎用的なサーバリソースをリアルクラウド化して,サービスを提供することも考えているそうだ。

ITホールディングス⁠株⁠
URL:http://www.itholdings.co.jp/

自社の業務システムのクラウド化も促進――NEC

クラウドコンピューティングEXPO 2010では,大手ベンダもブースを出展している。その中でNECは,独自の「クラウド指向サービスプラットフォーム」をキーワードに企業システム向けのクラウドソリューションを展開している。

NECのブースでは,クラウドへの取り組みやパートナー企業との連携サービス,導入事例などが多数展示されていた。

NECのブースでは,クラウドへの取り組みやパートナー企業との連携サービス,導入事例などが多数展示されていた。

NECではクラウドサービスを「ネットワーク経由提供される標準化されたITリソース」という位置づけで考えており,ITベンダ,ソリューションベンダとしてクラウドサービスを提供する場合,既存の企業システムや業務にクラウドのメリットを導入することを目的としたサービスを考えているという。

とはいうものの,既存の分散されたサイロ型ITシステムを単に,データセンターなどに集約するだけでなく,業務や目的に応じて最適なクラウド環境を構築する必要がある。NECでは,クラウド指向のサービスプラットフォームを「SaaS型」⁠共同センター型」⁠個別対応型」の3つに分類している。SaaS型は,あらゆる業種のユーザに対して共通業務やビジネスツールをSaaS,もしくはパブリッククラウドに近い形でサービスとして提供するものだ。共同センター型は,業界で共通な業務やサービス,あるいは共同プロジェクト,コンソーシアムなど業界コミュニティに共通なサービスを集めて,クラウド上でプラットフォームやアプリケーションを共有するような形である。最後の個別対応は,一般にプライベートクラウドと呼ばれているタイプといえる,ユーザごとに業務システムをクラウド上に構築するものだ。

NECが考える「クラウド指向サービス」の概念

NECが考える「クラウド指向サービス」の概念

NECでは,このようなコンセプトでクラウドサービスビジネスを展開しているが,これを自社内システムに活用しているそうだ。⁠NECの経営システム改革」というパネルでは,のNECグループ内で展開中のクラウド指向経営システムを紹介していた。

NECの経営システム改革の概要

NECの経営システム改革の概要

現在,海外を含むグループ企業において,販売・購買・経理の3部門のERPシステムや業務を標準化し,クラウド指向プラットフォーム上に集約している。これによって,業務プロセスの効率化やコストダウン,国際会計基準(IFRS)対応などを進めているという。このシステム改革は主要グループ企業すべてに展開していきたい考えだが,同時に得られたノウハウや技術はNECのクラウドソリューションやコンサルティングにもフィードバックしていくとのことだ。

NEC
URL:http://www.nec.co.jp/

著者プロフィール

中尾真二(なかおしんじ)

1961年生まれ。ハードウェア・コンピュータ技術者からアスキーに転職し,およそ10年ほど技術書籍・雑誌の編集に携わる。その後,オライリー・ジャパンで5年ほど企画・編集に従事。編集長時代に当時の日本法人社長とケンカしてクビに(笑)。現在はRBB TODAY,レスポンス他でニュース,コラムなどを編集・執筆。

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