レポート

JQTouchやPhoneGap,jQuery Mobileを利用したモバイルアプリ開発と,オバマサイトのキャンペーンの裏側が語られた「Web Directions East 2010」レポート(後編)

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クロージングキーノート:Scott Thomas氏「オバマをデザインする」

「2006年に,まったく無名の政治家が大統領に立候補しようとしていた。そうバラク・オバマである。当時,彼は全く知られていなかった」こうした紹介で始まった Scott Thomas(スコット・トーマス)氏の公演。氏は,オバマ大統領当選まで,あらゆるキャンペーンに関わっていたデザインディレクターである。

写真9 Scott Thomas氏

写真9 Scott Thomas氏

氏は,⁠ゴールまでの素早い動きに対応するにははっきりとした目標と,簡潔なメッセージが不可欠」だという。⁠彼は大きな⁠変化"と⁠希望"を全面に打ち出していた。実際に⁠HOPE⁠を表に出した。そうすることで,大きなコミュニケーションが実現した」と語る。当選までの様々なキャンペーンの中で,メッセージの一貫性と安定性のバランスを保っていくのだろうか。

このシンプルな答えの一つとして,それは⁠色⁠だった。あらゆるものに色とタイポグラフのの一貫性をもたせることで,調和とロイヤリティを演出したという。オバマ大統領のサイトは,キャンペーン中の何度かのリニューアル中で,終始一貫して青を基調としている。

写真9 初期のオバマ大統領のサイト

写真9 初期のオバマ大統領のサイト

また,アメリカという国での独特の多様性にも配慮しなければならない。あらゆる多様性を網羅して国民に訴え,オバマ大統領がどんな人物なのか啓蒙する必要があったのだ。

それらのコンセプトを実現するため,すべてを見直し,再びモジュールとして組み込み,また継続的にリフレッシュし改善していったという。そのために作業が増えたとしても,ひとつひとつ取り組んでいったのだそうだ。⁠プロジェクト・チーム全体がオバマを勝たせるぞという気持ちになっていた」氏は,そう語っている。

しかし,まだ問題は山積していた。その一つ,それが有権者登録システムだった。アメリカが抱えていた既存の有権者登録システムは,非常に役所的な難解なもので,複雑な手続きを進める必要があったのだ。あるキャンペーンでは,⁠そもそも有権者登録がなされなければ,オバマも当選し得ない」との考えで,システムの一新を進めた。それはシンプルで,短文の一問一答形式の登録システムを構築した。一見すると,それでは膨大な量の質問数になってしまうのでは?という懸念もあるだろう。これに対して,チームではなんとすべての質問に対してすべての答えと,項目をまとめてできるだけ簡略化して合理的に構造化したという。

たとえば一般的に年齢を質問した後に従来なら次に学生かどうかの項目が入るが,ここではユーザーが55歳と答えたとすれば現実的に学生ではないとし,実質項目をスキップさせたという。そういったチャートをすべて揃えたというから膨大な作業量だ。しかし,それもすべてキャンペーンの戦略の一環なのだ。

写真10 システムの合理化とフォームの回答チャートをつくったことが語られた

写真10 システムの合理化とフォームの回答チャートをつくったことが語られた

また,オバマ大統領はTwitterやYoutubeへのなどソーシャルネットに積極的に参加し,様々情報を公開した。これも歴史的な出来事だったと,氏は振り返る。今まで,アメリカの政治における情報公開は,ほぼブラックボックス状態だった。規制によって情報を表に出すことが禁じられていたのだ。⁠ワシントンで何が起こっているのか,それを知るのは国民の権利であり義務であり,声だった。それをオバマ大統領はクリーンにした」と語った。

さらにトーマス氏は振り返る。⁠キャンペーンが終わった時,次に何がしたいのか考えました。Webで新しい何かを検討するのもよかった。なにか,このキャンペーンで私が得たすべてのものを形にのこし,共有したい。しかし,もう机にかじりついていたくなかったのだ。Webにも劣る部分がある。Webでは物足りないのだ。ほとんどの歴史は常に本棚に集約されてきた…⁠⁠。

そうして氏は,designing-obamaの書籍制作に着手する。本当に自分が伝えたいことを,利益を無視にしてやりたいとして,出版社を通さず,あらゆる執筆から製本,装丁,出版,すべてのプロセスに携わり,世界中を飛び回って創り上げた一冊であることが語られた。

長い年月を経てようやく出版されたdesigning-obamaは,書籍のサイトからも購入可能だ。また,内容はすべて公開されているので,誰でも閲覧ができる。

クロージング,クロージングパーティ

簡潔なクロージングの挨拶後,会場ホールにてクロージングパーティが催された。皆さん,歓談を楽しまれていた。

パーティ中には,Ext Japanの小山氏と小堤氏から,Sencha Touchの現在と最近開催されたアプリコンテストについて紹介があったり,⁠CSSの歌」のライブも行われた。

写真11 Sencha Touchを紹介する小山氏と小堤氏

写真11 Sencha Touchを紹介する小山氏と小堤氏

写真12 ⁠CSSの歌」のライブでは,歌詞に日本語訳をつけたバージョンも演奏された

写真12 「CSSの歌」のライブでは,歌詞に日本語訳をつけたバージョンも演奏された

著者プロフィール

加茂雄亮(かもゆうすけ)

株式会社ロクナナにて,ActionScriptを伴うFlashコンテンツや,AjaxコンテンツなどRIA開発に従事するフロントエンドエンジニア。テクニカルライターとしての一面を持ち,WEB・雑誌・書籍、媒体問わず執筆。また,イベントやセミナーでの講演など,精力的に活動している。

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