レポート

世界のクリエイティブを体感する「FITC Tokyo 2011」レポート(後編)

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「デザイナー脳で語る」

「いつもは技術よりの話が多いので今日はもっと感性にちかいものを紹介したい」と述べてスタートした城戸雅行氏のセッションは,彼の1日(24時間)の生活スタイルを今回の発表のベースとして使い,その中で見つけた考察,過去および実験的な自分の作品を紹介していくものだった。ここでは,城戸氏の作品を紹介しながら,彼の考え方を紹介したい。

城戸雅行氏

城戸雅行氏

全日本バーベイタム選手権

USBやSDカードを組み合わせたモンスターで対決するゲーム「全日本バーベイタム選手権」は,人間の認知力を利用して作られたものだそうだ(既にサイトはクローズされているので,イメージソース様のアワードページで作品は確認してほしい⁠⁠。

全日本バーベイタム選手権

全日本バーベイタム選手権

「USBなどの無機質なものを有機質なモンスターとして認知してもらうためにはどうしたら良いか?」ということに対して,手足をつけると人間,生物として認識してくれるとはわかっていたのだが「USB,SDカードになまなましさを表現するのはどうすれば良いか」と考えた際に彼が着目したのが足の運び。

全日本バーベイタム選手権を制作する前に取り組んでいた,会社や団体のホームページの画像やロゴを使ったキャラクターの格闘ゲーム

全日本バーベイタム選手権を制作する前に取り組んでいた,会社や団体のホームページの画像やロゴを使ったキャラクターの格闘ゲーム

しっかりと地面を蹴って歩く,地面をちゃんと蹴っているという表現をつきつめることにより,無機質が有機質のようになまなましくなるというのに気がつき,実装の90%を足の運びに費やしたそうだ。

この彼の発見はJohn LennonのImagineのジャケットのイラストは線画なのに誰でも「ジョンレノン」って認知できる,人間の認知力ってすごいなぁという感動から導き出されたものだという。

NISSAN PLANET ZERO

ひょっとしたら気づいてくれるかもしれないという要素を組み込んだ作品がNISSAN PLANET ZERO⁠。オリジナルキャラクターを動かしながら,ゼロ・エミッション社会について体験するこのサイトは,本来はもっと親切に矢印などのナビゲーションをつける予定だったが,親切加減が過ぎると良くない,と考えシンプルにしたことにより面白さが深まったという。

彼が好きなゲームでカラテカというファミコンゲームがあるそうだが,このゲームはとてもシンプル(=不親切な設計)で,主人公がすぐに海に落ちて死んでしまう,という内容。でも面白いので,過剰ナビゲーションよりはシンプルな方がユーザーに楽しんでもらえるかも?という発見から作ったとのこと。彼の日常の中でもゲームをして,そこからアイデアを得て作品に活かすことが多いようだ。

カラテカなどのゲームが好きな城戸氏は,ゲームの設定「Easy,Normal,Hard」ではいつも「Easy」を選択するという。ただ,制作する上では常にHard設定を心がけて,ハードルをあげているという。例えば,作品を作るときにわざと解像度を落とす。そうするとグラデーションが飛んだり,色がでなかったりするのに対応する訓練ができる。また,あえて低いフレームレートで制作をする。そうすると最終的なアウトプットはより軽快で多くの人に快適に使ってもらえるものとなる。作品を作る過程を「修行」と呼ぶ彼の制作スタイルが伺えるコメントである。

Pictaps

1996年にアワードを受賞しFlash界を震撼させたPictapsはActionScript 2.0時代の作品。

Pictaps

(サーバーメンテンス中なのでYouTubeビデオで紹介)

Z軸の回転をさせず,常に視点を水平線に保つように設計したことによりパフォーマンスが2/3に抑えられ,結果として多くのユーザーに快適に遊んでもらえるサイトとなったという。彼の制作スタイルでハードルを上げ続けているから生まれた作品といえるだろう。

Pictapsではz軸を回転させないため,プログラムが簡略化できた

HTML5 モナリザ

HTML5 モナリザ

JavaScriptの開発環境をよく知らないため,FlashDevelopで書いたというHTML5作品がHTML5 モナリザ⁠。

HTML5 モナリザ

HTML5 モナリザ

城戸氏曰く,HTML5が流行っているのでつくってみたけど,感覚的にFlash Player 7.5という感じかな?とのこと。そしてFlash制作者は多分そのままHTML5にいけるんじゃないか,とも述べていた。

かなり快適なパフォーマンスで動くこの作品も,きっと解像度を下げた修行環境でも確認したに違いないと筆者は思ったが,そのことには触れずに,城戸氏は「FlashでもHTML5でも良い,今は転換期だけど流行にとらわれる必要はない,自分がやりたいことをやっていくのが素敵です」という言葉で締めくくった。

著者プロフィール

西村真里子(にしむらまりこ)

株式会社 バスキュール号 プロデューサー

日本IBM,アドビ システムズのWeb製品マーケティング担当を経て現職に至る。外資企業での経験を活かし日本発の良質のクリエイティブ,サービスを海外に展開する施策を前職,現職ともに行う。TEDxスピーカー経験&特許保持者。国内,国外問わずに人と出会うのが大好き。

URLhttp://twitter.com/mariroom