レポート

FITC Tokyo 2013にみる未来のデバイス,オープン/シェアリングそしてインタラクティブ(前編)

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2000年よりスタートし,全世界で展開されているデザインとテクノロジーのカンファレンスFITC(Future. Innovation. Technology. Creativity.)⁠日本開催は今年で4回目。2013年1月26日,27日の2日間,目黒のおしゃれデザインホテルCLASKAを会場に計11セッションが行われました。

日本にFITC Tokyoをはじめて輸入し,また,トロント,ロサンゼルス,アムステルダム開催のFITCを見てきた私が,今回のFITC Tokyo 2013を通してより強く受け取ったメッセージは次の事柄です。

  1. 未来のデバイスは「触感」が大事。インタラクティブ≒タンジブル
  2. デザイナーもエンジニアもクリエイティブな人間は「オープン」たれ!
  3. インタラクティブの発展

CLASKAの3階スタジオが世界のデジタルクリエイティブを味わう2日間を提供する会場となった

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そこで本稿では,上記のテーマにそってレポートしていきます。今回は,1番目の未来のデバイスについて着目します。

未来のデバイスは「触感」が大事。インタラクティブ≒タンジブル

1969年にドイツ,ブラックフォレスで生まれたfrog。創業者のHartmut Esslinger氏はバウハウスの「形態は機能に従う」というメッセージの一歩先には「機能よりもエモーションが大切になる」と考えました。そして,⁠エモーションを大切にするデザイン」をコアに一環したデザインエクスペリエンスを提供し続けるデザインスタジオfrogをスタートしました。

SonyのWEGAやAppleコンピューターのデザインもfrogのデザインを元に生まれているなど、デザイン界に世界的インパクトを与え続けています。

そのfrogより今回スピーカーとして登壇したのは,上海frogのエグゼクティブクリエイティブディレクターのBrandon Edwards氏。

彼はデザインが生まれるポイントは「Injection = 領域の交差点」であると言います。様々なデバイスやソフトウェアが既存の価値観とは別の観点で出会った際にデザインが生まれるのだ,と指摘しました。

Brandon Edwards氏

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15年後の未来を考えよう(Think about 15 years later)

例えば,15年前。携帯電話を町中で使うのはとても恥ずかしいこと,奇異な目で見られるものでした。私も父親が1990年代にiPad miniを30枚ほど重ねたような大きなデバイスを肩から担いで「移動式電話だ!」と家族に自慢していたのですが,⁠お父さん,恥ずかしいから家の中でも,外でもそのような不思議なモノを使うのはヤメテ!!」と恥じた感覚が蘇りました。

そのような携帯電話も現在では町中,レストラン,オフィス,電車内,場所を問わずに利用するのは当たり前,しかも薄さも当時の数10分の1。いまでは飛行機内でも利用可能になってきており,場所を問わず携帯電話を使う世界になっています。

15年前の不思議は現在のデフォルトに。つまり,15年後には未来ができているんですよね。⁠クリエイティブに関わる人間はいま自分が作ったものが15年後にはどうなっているかを考えながらモノ作りを行っていこう」とBrandon Edwards氏は続けます。

そして今後は,インタラクションはよりパーソナルに,デバイスはより個人レベルのニーズを満たしてくれるものとなっていくと指摘しました。

「pixel」ではなく「Tixel」を考えてデザインしよう

今回のカンファレンスに参加してよかったと私が思うのは「Tixel」という考え方に出会えたこと。TixelとはTouchable Pixel,つまり触ることのできるピクセルです。

Brandon氏は,Tixelデザインの例として次の2つを紹介しました。

Proteus

Proteusは,有機的なトランスミッターを含有するピルをデバイスに,体内の情報をAndroid経由でクラウドに保存できるというもの。

健康に不安のある患者はこの薬を飲むことにより日々Androidで体内の健康管理できると同時に,深刻な病気を抱える患者を持つ医者はクラウド経由で患者の病状をモニターできるようになります。ピルをデバイスにするという考えと,クラウドに情報を保存するという世界を融合させることにより,未来のヘルスケアが生まれます。

有機トランスミッターのピルを経由してAndroid,クラウドで体内情報管理をする新たなヘルスケアビジネス

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Bionic lens

Bionic lensは,コンタクトレンズをデバイスに様々な情報のインプット/アウトプットが可能になるもの。

このようなデバイスが普及するとどのような世界がひろがるか想像してみよう,というエクササイズ的な意味合いを込めてBrandon氏が紹介しました。YouTubeでも紹介されているので,ぜひ読者の方もこのようなコンタクトレンズデバイスが普及する世界を想像してみてください。

Bionic Contact Lensを装着した人々が交差する未来が15年後に来るかもしれない

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未来を知るにはマテリアルを理解しよう

クリエイティブに関わる人間は,今回のFITC スポンサーであるAdobe Systemsが提供するPhotoshopやIllustratorのようなクリエイティブソフトウェアツールを理解するのも大事ですが,同時に自分が提供するクリエイティブが搭載される「マテリアルを理解する」ことも大事です。昔はプラスティック,いまはピクセル,未来はプロテインを知る必要が出てくるとあげていました。

最後に,Brandon氏は「未来のデザインを作るのはクリエイターだけではなく,ビジネスストラテジストも必要だしエンジニアも必要。良いチームを作る事が未来を作る」と述べました。そのような新たなデザインを作る上では理解者を得る近道としてプロトタイプを作ることは価値が高い,と未来のデザインを実現するためのショートカット,ヒントも教えてくれました。

触感タッチソリューションを知る事は未来を作る,未来のビジネスも作る

いままで最新テクノロジーには詳しい方ではないかと自負していた自分でしたが,まだまだ知らなければならないことが多いと実感した今回のFITCだったのですが,その中でも「Haptics」という触感タッチソリューションを出しているImmersionという会社を知ったことはとても良い勉強になりました。

Hapticsは携帯やゲームコントローラー,カジノシステム,自動車などのポータブルデバイスに搭載されているテクノロジーです。クライアントとしてはサムスン,ノキア,LG,東芝,富士通,SONY,マイクロソフト,ロジテック,BMWなどがいます。

同社のテクノロジー・エバンジェリストBob Heubel氏は,なぜImmersionは触感テクノロジーを1990年代から追究し,提供しているかのかをポイント3つに絞って紹介しました。

Bob Heubel氏

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ポイントの1つ目と2つ目は次のとおりです。

  • ポイント1:人間の感覚は,認知の具現化によって機能するものであり,ユーザーエクスペリエンスに影響を及ぼす
  • ポイント2:タッチフィードバックは,メディアにおいて唯一欠如している「触感」に関するニーズを満たす

つまり,いまのメディアには足りてないタッチ「触感」フィードバックを可能にすることにより,未来のメディアは生まれます。

特に次の3つ目のポイントはわかりやすいでしょう。

  • ポイント3:触感は,人間のコミュニケーションをより親密で感情的なものにする

言葉よりもあの時彼女/彼氏の手を握っておけば,2人は離れずにすんだかもしれない。言葉をかけるよりも手を握る,頭をなでる,などの行為により相手をいたわる気持ちが伝わったかもしれない。このようなキュンとする記憶とともに触感の大切さを再認識したのですが,その「触感」を現在の技術として普及させているImmersionを使うと,よりデバイスを意識せずにコミュニケーションが広がります。

デモでは友達がノックすると自分のデバイスが反応し,そこからコミュニケーションが始まる。あたかも友達が私の部屋のドアをノックしてくれたかのようなエモーションが働きます。

デバイスの向こうから友達が私のドアをノックする!

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エモーションが高まる場所にはビジネスも広がる

Bob氏は最後に,Immersionが「触感に注目する上位5つの理由」を紹介しました。

  1. 第1位:アプリの利益向上
  2. 第2位:ゲームやUIへのアクセス向上
  3. 第3位:ユーザーの満足度の向上
  4. 第4位:オーディオ/ビジュアル/タッチエフェクトの組み合わせによる臨場感の向上
  5. 第5位:リアル感の向上「まるで現実世界のよう」

つまり,よりエモーションが高まる設計にすることにより,コミュニケーション密度が高まり,アクセス頻度が高まり,最終的にはそのようなアプリケーションの売上向上にも繋がるとのことです。1位の「アプリ利益向上」は強引だと思いつつも富士通,NEC,サムスン,東芝などのハードウェアOEMは,Appleへの抵抗勢力として感触を楽しめるアプリやゲームを積極的に求めているそうなので,結構近未来として「触感/感触」を楽しむアプリは多発していくのかもしれません。

デモで紹介してくれたように大切な人がデバイスを越えてドアをノックしてくれたり,キスしてくれると,それはそれは嬉しいかも♥


ということで,FITCレポート第一弾は未来のデバイスについてインタラクティブやタンジブルという観点から見てきました。リンゴを食べる時も「リンゴ=デバイス」と思いつつ,15年後を見据えていきたいと思います。

次回中編では,クリエイティブな人間のオープンな思考について紹介したいと思います。

著者プロフィール

西村真里子(にしむらまりこ)

株式会社バスキュール プロデューサー

最高峰デジタルクリエイティブがビジネスドメインや国境を超える上で今後さらに重要になると考えIBM,アドビ,グルーポンでのエンジニア/マーケティング経験を経て2011年より現職着任。スマートフォン上でのソーシャルネットワーキングを活用した自社サービスにて培ったノウハウや,国内外の先進事例,調査データを元に現在ではテレビ×ソーシャル,ダブルスクリーンリアルタイム視聴プロジェクトに注力。新たなデジタル体験を生み出すテレビ視聴カルチャー作りを社内外の関係者と構築している。IBMエンジニア時代にグローバル検索システムプロジェクトにて特許取得,国際的なデジタルデザイン&テクノロジーイベントFITCカンファレンス審査員経験,TEDxTOKYO yzスピーカー経験保有。

Twitter:@mariroom

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