レポート

「システムテスト自動化カンファレンス」参加レポート

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組み込み開発での実機テストの自動化の一つの考え方
井芹 洋輝(STAR)

井芹さんは組み込み開発のテストコンサルで,現在は車載システムのテスト支援に従事されています。

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組み込み開発ではタイミング依存のバグや実行環境の変更の激しさなどから,テストの自動化は重要な意味を持っています。自動化によってテスト条件のスケーラビリティが向上したり,回帰テストが効率化したり,制御や観測の選択肢が増えるそうです。ただ自動化には組み込み固有の事情が発生します。全体的な傾向として環境構築が難しいということです。

次にテストの責務・負荷を分散しましょうというお話です。

責務の分散とは,システムテストに閉じないで本来の品質やテストの目的に立ち返って,組み込み固有の制約に対応するということです。

また,負荷分散ですが,構築が難しい組み込みのビルド環境やテスト環境は,開発の段階から徐々に育てていき,多方面で活用することでリスク分散ができるというお話でした。

組み込み系に閉じず,自動化が難しいエンプラ系の案件にも通じる話だと思いました。

テスト自動化のこれまでとこれから
辰巳 敬三(STARアドバイザ)

辰巳さんはSTAR発足のきっかけを作って作ってくださった方です。主に富士通のメインフレームOSの開発・品質保証から,テスト・品質に関わる活動に移行され,著作多数。日本におけるテストの生き字引といっても過言ではないでしょう。

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最初の自動化に関する論文は1962年の⁠Automatic Program Testing⁠だそうです。今から50年前ということなります。テストという作業が始まってすぐテスト自動化への取り組みも始まったようです。ただ,その内容はテスト手順の標準化や計算時間の節約の話だったようです。

70年代から自動化の取り組みが始まり,主に内製のツール類が充実してきました。

80年代からUNIXオープン化の流れが始まり,1985年にPCの最初の商用テストツールを開発したAutoTester社が設立されています。テストツールベンダとして有名なMercury社が設立されたのも1989年です(2006年にHPが買収⁠⁠。

90年代に移り,商用ツールがかなり充実してきて,テスト自動化の技術の体系化も進み始めました。1995年にはテスト自動化の最初の書籍と言われている『Automated Testing Handbook』が出版されています。

さて,現在の状況ですが,90年代終わりから2000年の初めにかけてオープンソースのテストツールが出てきました。

その中で最も有名なSeleniumですが,名前の由来をご存知でしょうか? Seleniumは非金属元素のセレンで,水銀の毒性を軽減する効果があります。Seleniumの作者Jason Huggins氏(近々来日されます)はMercury社の製品QTPの代替ソフトを考えていた時に,セレンが水銀中毒(Mercury Poisoning)の治療に使われることからこの名前を思いついたそうです。

最後はテスト自動化のこれからについてです。海外の学会でもさまざまな技術トピックがありますが,その中でもキーワードとして上がって来たのがTesting as a Service(TaaS)です。TaaSはクラウドにおけるテストと同時にクラウドを使ったテストを意味します。すでに提供会社がいくつか存在するようです。

結びにテスト自動化エンジニア(Test Automator)への期待を述べました。AutomatorはISTQB(テストの国際資格)でもExpertと称される非常に高度な技術の必要な職業であり,テスト全体の実行計画や管理などから自動化の範囲を定めていくような技能が求められます。今なら世界の先駆者になれるそうです。

これまでの歴史を振り返りながら,まだまだ自動化にはやり残したことがある。未来につながる重要な仕事であることを実感させられた講演でした。

まとめ

本カンファレンスは日本で最初のテスト自動化に特化したカンファレンスとして重要な意味を持つと思います。どちらかというと自動化についてあまり関心のない現場が多い中で,特に立石一真氏(オムロン創業者)「自動化は人間が創造的な仕事をするためにある」という言葉が印象に残りました。テスト自動化の意味を今一度考える機会になればいいなとスタッフの一員として思いました。

それと会場の暖かい雰囲気(熱気?)もよかったと思います。特定のベンダに特化しないコミュニティ主導の,そしてスタッフみなさんの暖かい「お・も・て・な・し」があったこそ,この暖かい雰囲気が生まれたのだと思いました。懇親会のライトニングトークも盛り上がりました。

最後に私が本会議場に貼り付いていたために受講できなかったチュートリアルの資料を紹介して,このまとめを終わりたいと思います。

チュートリアルを担当された伊藤さん

チュートリアルを担当された伊藤さん

実践で学ぶ,効率的な自動テストスクリプトのメンテナンス

著者プロフィール

森龍二(もりりゅうじ)

株式会社エクサでR&D部門に所属。CAD開発,Webシステム開発を経てテストや品質の世界に突入。現在プロジェクトの成果物を第三者視点でレビューする活動(QI)に従事。2012年よりSTARのコミッターとして研究会に参画。Software Test Automation(Fewster & Graham)の翻訳プロジェクトに関わる。参加コミュニティはSTE(エンプラ系テスト研究会),WACATEなど。

Twitter:@mori_ryuji